守田です。(20120401 08:30)

本年3月6日に発売した岩波ブックレット『内部被曝』は、おかげさまで好調な売れ行きを示してくれています。各地の集会などで取り寄せて売ってくださった方もいます。ご購入をいただいたみなさまに感謝します。

今、全国が政府によるがれき受け入れ強制で揺れていますが、その背景にあるものこそ、内部被曝の驚異が今なお隠されていることです。内部被曝が外部被曝と同じように極めて影響が小さく評価されており、そのもとで、「微量」な放射能など撒いても大丈夫だというまったく誤った見解が流布され、これに利権が絡むなかで、自治体の首長の中に、丸め込められてしまう人々が出ています。

これらを覆すために、すでに多くの方々が行動されていますが、岩波ブックレット『内部被曝』はそうした方々の活動をサポートする格好のアイテムになると確信しています。類書にはまったく書かれてない内容を盛り込んでありますので、どうかお手に取って欲しいと思います。

なお本書に関するブックレビューがアマゾンのサイトに投稿されました。そのどれもが私と矢ヶ﨑さんの思いを、きちんと汲み取って書いてくださっている素晴らしい書評だと思いましたので、ここに紹介したいと思います。

なお3つ目のものは、オルトヴィン・ヘンスラーの『アジールーその歴史と諸形態』を翻訳された若手の研究者、舟木徹男さんが、FACEBOOKに投稿されたオリジナルです。

レビューの載ったアマゾンの当該ページを記しておきます。
http://www.amazon.co.jp/%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88-%E7%9F%A2%E3%83%B6%EF%A8%91-%E5%85%8B%E9%A6%AC/dp/4002708322/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1333235497&sr=1-3
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被曝を具体的な状況において考える必要の提起, 2012/3/13
by モチヅキ

本書は1943年生まれの物理学研究者に、1959年生まれのフリーライターが尋ねる形で、2012年に刊行した本である。本書によれば、第一に原子力の安全神話ゆえ、福島では放射線の防護用品や測定機器の準備がなく、災害弱者の犠牲や農地汚染の深刻化が生じた。

第二に、避難が最善の防護であるが、郷土愛の強い人は逃げないため、著者は「開き直って楽天的になり、危機を見据えて最大防護をしつつ、皆で支え合う大きな利己主義」を指針とした。

第三に、放射線は電離作用による分子切断と、その修復過程での異常再結合(遺伝子変成など)を引き起すが、三種類の放射線は透過性に違いがある。ただし、半減期と放射平衡によりどれが危険か一概には言えない。

第四に、外部被曝はほぼガンマ線によるが、内部被曝は全ての放射線に関わり、局所集中的に遺伝子変性を起こしやすい(50頁のグラフも参照)。また、間接効果、バイスタンダー効果、ペトカウ効果なども考慮されるべきである。

第五に、放射線リスク評価の国際的権威とされるICRPは、放射線被曝についての単純化(エネルギー量の大小のみ)と平均化、内部被曝の危険性の隠蔽を行い(医師の診断に悪影響を及ぼしている)、ECRRに批判された。また、ICRPの被曝限度値も実際には安全ではない。

第六に、ICRPの評価のもとになっているデータは広島・長崎の原爆のデータであるが、それは米国の核戦略の下で歪められており、多くの被爆者と認定されない被爆者を生みだした。

第七に、原発は潜在的な核開発施設として造られた。

第八に、東北住民の苦しみに寄り添う必要がある。また、自主避難支援、汚染ゼロ食品の保証、非汚染地域での食糧大増産、原発敷地内への汚染された瓦礫の収納(焼却禁止)、公費での健康診断と治療等の政策が必要である。

第九に、安価な放射線測定器は精度が高くないので注意すべきである。

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「内部被曝」について最もコンパクトで分かり易い本, 2012/3/26
by つくしん坊

東京電力福島第一原発事故後、便乗本も含めて、多くの放射線被曝に関する本が出版されてきた。しかし、内部被曝について、分かり易く、納得できるよう解説した本は非常に少なかったように感じる。多くの本は、ICRP(国際放射線防護委員会)の規則をベースにしていた。本書は、ICRPの規則が健康に重大なリスクをもたらす「内部被曝」について十分考慮していない、非常に問題の多いものであることを前提に、内部被曝に関して最もコンパクトで分かり易い解説書である。

政府が金科玉条の如く引用するICRの規則がどのように作られてきたかを理解することは、その本質を知るために、重要である。本書ではICRPの経緯もコンパクトにまとめられている。要するに、ICRPは、核兵器や原子力開発で排出される放射線・放射能の危険性を隠ぺいするため、内部被曝は最初から無視、あるいは軽微なものとして、科学的な根拠に反して、防護規則を作ってきた。このため、内部被曝を考えれば、年間1ミリシーベルトといえども、決して安全とは言えない。

福島県や近隣の県でいまだ放射能におびえている皆さんだけでなく、今後食品や、全国的なガレキ処理で二次汚染が心配される現在、長く続く放射能汚染時代を生き延びるために、多くの日本人が読む価値のある本といえる。

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『内部被曝』(矢ケ崎克馬・守田敏也 著/岩波ブックレット)の?感想
by 舟木徹男

我が家にはまだ小さい二人の子どもがいるので内部被曝について?正確な情報を知りたいと思っていたところ、ひょんなことでお近づきにならせていただいた守田敏也氏が近所の公民館で講演をされると知り、夫婦で聴きに行った。内部被曝の危険性についてとても分かりやすい話し方で啓蒙してくださり、会場で迷わず本書を購入した。

本書では、物理学者の矢ケ崎氏に守田氏がインタヴューする形で内部被曝についての基礎知識が提供されている。放射線とは何かという基本的なことに始まり、それが人体に悪影響を与えるメカニズム、内部被曝が一般に考えられているよりもはるかに危険であるということ(外部被曝の600倍!)、それにもかかわらず原爆の残?虐性の隠蔽を意図するアメリカやそれに追従する日本政府によって?内部被曝の科学的研究が歪曲・抑圧されてきた事実、日本政府による安全キャンペーンを信じることの危険性、これから我々がとるべき対策、などについてコンパクトにまとめられている。
隠されてきた事実がイデオロギー抜きに説得的に説明されているだけに、フクシマ以後の我々がいかに恐ろしい状況におかれているかをよく分からせてくれると同時に、もはや賽は投げられてしまった以上、腹をくくって対処してゆかなければならないということを否応なく納得させてくれる良書である。

わずか70頁のブックレットでこれほど有益な情報をわかりやすく、かつ包括的に提供することに成功しているのは、インタヴュアーである守田氏の周到に準備された質問と、それに応える矢ケ崎氏の学問的誠実さの賜物であろう。
3.11フクシマ以後に子育てをするすべての日本人と今後の日本の医療を担うすべての若者に本書を強く推薦する。
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