守田です(20240820 19:30)
● 三田茂医師講演を動画をご覧下さい
少し間が空いてしまいましたが、岡山の三田茂医師講演の全文文字起こしの6回目をお届けします。
今回も動画をご紹介しておきます。以下の画像をクリックして下さい。
ここでは1時間36分22秒から
◯『ウクライナ政府報告書』『慢性原子爆弾症の後障碍』『間脳症候群』『能力減退症』について
急に話題が変わるようなのだけれども、ウクライナ政府が、1986年にチェルノブイリが爆発しているので、25年後に“SAFETY FOR THE FUTURE”、「未来のための安全」と言う報告書を出したのですね。
ここには、ガンとか白血病の事も書いてはあるのだけれども、一番問題なのはこれ、二世の時代ですよ、25年後ですから。「こどもの」、二世のね「78%に慢性疾患があって健康なこども」がいないという事を一番の問題だとウクライナは言っている。
だから、「事件とか事故」が多発するし、「犯罪とか汚職」がはびこるし、「社会が混乱して国力がどんどん低下」して行くという事をチェルノブイリ、ウクライナは困っていたわけです。まあ戦争にもなってしまいましたけど。
それで肥田先生は、当然がんの事も言っている。被爆者が急性原爆症で亡くなった事も言っているけれども、「一番辛かったのは『ぶらぶら病』だ」と。差別されて、みんな野垂れ死んで行ったのですよね、「ぶらぶら病」で。
広島・長崎の研究と言うのは、数年間はやられていたのです、原爆の後。アメリカに対抗するような研究も行われていました。国会でもいろいろ答弁されています。
東大の都築教授(注:都築正男)は『慢性原子爆弾症の後障碍』というふうに言いました。身体の「身体的状況の異常」。それから「精神的能力の衰え」。こういうのを僕は『能力減退症』と言いたいのですよ。だから『能力減退症』って、結構さっと付けたようだけれど、僕は半年ぐらい悩んでつけた名前なのだけれど。だから体力、それから精神的能力、こういうのをひっくるめての減退した状態という事で『能力減退症』と付けました。
この時代、戦後すぐは原因がよく分からなかったし、それから治療法もない。ですから「無理な生活を避けしめるように指導する」しかないと都築先生はおっしゃっている。「ひびの入った容器を大切に扱わなくちゃいけない」と言っている。
小沼先生(注:小沼十寸穂 こぬまますほ)。広島大学の精神科の教授ですけれども、『間脳症候群』だと言っている。間脳と言うのは脳の一番中心のところ、あとで出てきます。間脳と言うところに原因があるのだという。これは解剖してみてやっぱり間脳がおかしいからです。
それからそれより前の時代に、頭を強くぶつけて廃人同様になった人など、間脳がやられるという事を知られていたので、『間脳症候群』という言い方をしたのですね。
精神科の先生に、最近、『間脳症候群』なんて事を言うかなと思って、聞いてみたけど、知らないって言う。だから、だいたいこういう話ってそのあと続いて行かない。根が絶えてしまう。肥田先生もこう言っていましたよね。こういうのが大変だったのだと思うのですよ、やっぱり。だから被爆二世のみなさんの病悩の8~9割は、『能力減退症』だと僕は思います。
『能力減退症』。「三田」と書いてあるけど、みんなが使ってくれないからまだ三田なのだけれど、僕はこういう概念を提案しています。
それで、なんで『能力減退症』という概念をひとつ作らないといけないと思ったかという事ですけれど、これも医学会のスライドそのものですけれど、診療体験です、これは。
311の『新ヒバクシャ』たちを僕は見ていて、こういうエピソードがある。「風邪をひきやすい」と患者さんが言っている。風邪というのはちょっとよくわからない病名だから、具合が悪くなるという事だと思うけれど、「なかなか治らない」。だから、被爆二世のみなさんと同じでしょう?「検査をしてもどこも悪くないと言われる」。「薬を変えても効かない。だるくって非常に長く休む」。
お父さんが2週間会社に行かれない。子どもが1週間学校に行けない。
それで診察所見、これは患者さんの話を聞いても、診察をして問診して、聴診して、触診して、打診して、検査をしてみても異常所見があんまりない。だから、僕たちには異常はよく分からない。だけど患者さんたちはとっても自覚症状が強くて困っている。「乖離」と言うのはそういう事です。論理的に一致しないという意味です。
「今までこのような事を経験した事がない。内にこもった状態から抜け出せない」とこの赤字で書いているのは患者さんの表現、さっきから言っているように、患者さんの表現と言うのは同じような表現をするのです。同じように具合の悪い人は。違う具合の悪い人は違う表現をする事が多いから、「これはひとつの症候群だな」となんとなく思ったのですね。これを「異常なしだね、気にし過ぎだね、大丈夫だ、検査でなにも無かったから~」で、これで終えてしまうのかという事だけれども、まあこのへんはちょっといろいろ大変な事がありましたけれども、検査してみると感染のストレスがかかると、そのストレスを乗り越えないといけないので、コルチゾールというのは副腎皮質ホルモンです。ステロイドホルモンです。身体の中で出ているステロイドホルモンの分泌が急に3倍4倍に上がって、それでさっき言った炎症を起こして、乗り越えていく、治っていく。それが出ていない事に気が付いたのです。
それで「ステロイド単回」というのは、例えば「このお薬を2錠、今飲んでみて」、それから短期間というのは「今日の朝と夜、明日の朝と夜飲んでみて」、こういう事ですけど、そういうふうに渡す。
もし「今飲んでちょっと待合室で1時間休んでいって」と言うと、「15~30分ぐらいでスイッチが入ったように治り始める」。表情が無くって、どろーんとして、力なくうなだれていた人が30分後に呼んだ時にはぴんぴんして入ってくる。こういうエピソードが沢山あった。
だから、多分、そうじゃない人もあるのかもしれないけれども、『新ヒバクシャ』に起きてる事は、こういう事だろうなと、このへんからちょっと疑い始めたというか、気が付き始めたというところです。
◯3つの症例から
ここから、3例、症例を提示します。56歳の男性で船乗り。
今、岡山に居る人ですけれど、3月12日に福島原発沖で航行していたのです。津波が来て動けなくなってそこで停泊していた。周りはガレキだらけだって、だからもうどこにも動けなくて、そこでしばらく停泊してた。それで、多分大量被曝してたと思いますよ。誰も証明できないけれども。
そしたら、そのあと目が悪くなった。遠くが見えなくなった。船乗りさんが、遠くが見えないのは大変なのですよね。持ち場が変わって数年したら、「重度の倦怠感。憂鬱。体が動かない。仕事が辛い。同僚それから先輩たちについていけない。だから仕事を辞める」。ホルモンが低くて補充して、さっきいったステロイドの補充をするわけだけれども良くなった。
52歳の女医さんです。東京から名古屋に移住してよくならなくて岡山に移住した人です。
2015年ぐらい、だから被爆後4年ぐらいから「記憶力低下。ストレスに耐えられない。回復しない。余裕がなくイライラしている。不機嫌。落ち込む。眠気が強くって診察中に寝た」。患者さんが出て行って、看護師さんが次の患者さんを呼び込むまでの間にすっかり寝てしまったと言ってました。「とても仕事は続けられない。目はかすむ、皮膚炎はひどい」。それで、この人も低くって補充したら、仕事が続けられる。
69歳の女性。身体を動かすのがすごく好きで、夕方まで元気に働いていた人。
2017年の春から、このへんですよね。16年、17年ぐらいがすごく多いのだけれども、だから311で被曝した数年後、5年後、6年後ぐらいから、こういう訴えがすごく強くなってきた。「物忘れ、眠気、夜はよく寝られなくて冷や汗が連日出る。急に十歳年を取った感じが自分でした」と。「去年と顔つきが違うと仲間に言われた。朝から働いていてお昼までももたない」。前は夕方まで働いた。治療してよくなった。
ここでキーワードとして、僕はこれを使いたいという事ですけれど、これ、医学会で提案したわけだけど、今日みなさんに渡っている資料の中に、「『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている」という5ページぐらいのものを入れてもらっていますから、あとで読んでおいてください。今日話したような事しか書いてないですけど。だいたいもう考えている事を言っていますが、ちょっと思い出すのにいい文章かなと思っています。注:ここから入手可能 https://toshikyoto.com/press/8747.html
それで『新ヒバクシャ』の『能力減退症』。「眠気。疲れやすさ。意欲が低下して記憶力、理解力、判断力、集中力が無くなる。とってもミスが多くなる。抵抗力、治癒力が下がる」。
だから被爆二世のみなさんの報告を、読み解きしたのと全く同じでしょう、これは。被爆二世のみなさんの事を知らずに僕は言ってますから、だから一致性にびっくりするわけです。「似ている」のではなくて共通なのですね。「ありふれた病気の重症化、治癒の遷延」、遷延というのは治癒が、なかなか治らないのですね。それから、「患者の訴え、診察所見・検査所見が合わない」。だから「ストレスでしょう」と言われてしまうのでしょうね、こういうのは。「あなたの気のせいかストレスか。行くんだったら精神科に行け」ってね、そういうふうになりやすいのです。
◯『ホメオスタシス』について
次のキーワード。『ホメオスタシス』。さっきも言いました。『恒常性』とも言います。ホメオスタシス、恒常性。
これは理解するのに不可欠だと思って出しました。ホメオスタシス・恒常性というのは、まあ高校生の生物ぐらいで習うのかもしれないけれども、「外部からの影響」と言うのがあるでしょう?「お天気とか、ストレスとか、化学物質、当然放射能も」。こういう外部からの影響に対して「体内の環境を一定に保とうという働き」です。
例えば、気圧が変わった時にそれに対抗する、寒い時には体温を上げる、熱い時には汗をかく。ご飯を食べた時には消化吸収をしたり。「体温とか、温度調整、免疫力」。で、こういうのがうまくいくと、健康が当たり前のように維持できるけど、当たり前ではないですよね。すごく大変な事を身体はやっています。それでこのホメオスタシスを維持しているのが、「自律神経」と「ホルモン」です。自律神経、ホルモンがうまくいくと健康が保てて免疫的にも充実する。
これはね、変な絵ですけど、丸が脳みそ。手が生えて足が生えているわけではないのですけれど、脳みその真ん中に「間脳視床下部」と書いてあります。
さっき「間脳症候群」と言ってたでしょう。間脳視床下部というところでこの外から入ってきたストレス、感情的なものとかストレスをうまく調整しようという事で、「自律神経の調節」を行います。自律神経調節の中枢が間脳なのです。間脳はさらに「脳下垂体」という脳の一番下にあるところに指令を出して、「ホルモン調整」をします。この2つでホメオスタシス・恒常性がうまく維持される。そうすると健康に行くけれど、こういうのが、バランスが崩れたり、能力が低下すると、ホメオスタシスの調整がうまくいかなくなるという事ですね。
ホルモンって沢山ありますけれども「成長ホルモン」、それから「甲状腺ホルモンの軸」というふうに言いますね、医学的には。それから「副腎、ステロイドホルモンの軸」、それから赤ちゃんが生まれたらおっぱいが出るとか、「男性ホルモン」、「女性ホルモン」とか、おしっこの出るように調整するとか、いろんなホルモンがこの間脳脳下垂体系の系列で調整されています。それでホメオスタシスが維持されている。
その、「間脳脳下垂体機能低下」というのが、『能力減退症』の原因であろうという事を、医師会医学会で言ったわけです。
ここで、正常の人たちの分布からはちょっとずれちゃうよという事なのだけど、これを話すとこれだけで2時間かかるので、YouTubeに動画を上げてあります。(注:三田医院HPより視聴可能 http://mitaiin.com/)もし興味があったら見てみてください。医科向け、医者向けは細かく話してあって、一般向けはもうちょっと易しく話してあります。
『能力減退症』は、しつこいけどね、「間脳・脳下垂体機能障害プラスアルファ」。これは、今日はちょっと省かせて下さい。下手に言うと誤解を生み易いので、これはちょっと省きます。
間脳は自律神経障害、脳下垂体はホルモン障害という事です。僕は放射能被曝から入りました、この考えにね。
◯アレルギー、農薬、添加物の影響、化学物質過敏症、香害などもかなり『能力減退症』的
でも、色々調べてみたり、いろいろ考えてみると、「アレルギーとか農薬。添加物。化学物質過敏症。香害ね、香りの害」、こういうのも『能力減退症』的です、かなり。
「HANS」、これは女の子たちの子宮頸がんワクチンの後の神経障害。まるっきりこう記憶力が無くなってしまったり、それからけいれんして動かなくなってしまったりと、神経障害がとても深刻だって言っている人がいる。国は関係ないと言ってる。でも、また注射をうち始めたらこういう人が増えてるから、関係あると僕は思いますけど。
それから、コロナのワクチンの後障害。これもね、このへんが関係していると思います。HANSの人たちは間脳に原因があると言っている。コロナのワクチン後障害と言っている人たちも、ホルモンが下がってるって言ってる。だから治療すればいいのにと思うけど治療はしない。それはきっとまだ、仕上がった診断学・治療学になってないから手を出さないのだと思う。責任を問われるのが嫌なのかもしれない。でもすごく似ている。
さっきも言った「熱中症」というのはもうやたらと使われているので、冬以外はみんな熱中症と言う感じだろうと思うけれども、これは『能力減退症』的な側面がすごく多い。だからこの十数年か、熱中症という診断がやたらと多いんですよ。これは被曝以前にもう化学物質とか電磁波とか、こういう影響をみんな受けているので、昔より体力が落ちているという言い方もあるし、ホメオスタシスの維持がうまくいかなくなっているのだと思います。
それで、「被爆二世・三世の健康被害」と言うのも、ここに引き続くもの、同じ『能力減退症』としての治療が、かなり効くのだろうなと思います。
もう一回ちょっと念押しなのだけれども、69歳の女性の症例。
「物忘れ、眠気、十歳年を取った感じがして、顔つきが変わったんじゃないのって同僚に言われて、夕方まで働いていたのがお昼までもたなくなった」。ホルモン的に調べるとやっぱり下がっている。脳に異常があったら困るのですよね。脳腫瘍だったり、脳卒中だったり。MRIで調べてもなんともない。さっき言った間脳も異常がない、脳下垂体も異常ない。だけども下がっちゃう。ここに異常があればもうちょっと僕の主張と言うのは通りやすいかな。MRIでこういう異常がある人が多発しています。先生方どうでしょうか、という話はあり得ると思う。ここに異常がないのはいいのだけれども、なかなかこう、相手にしてもらえないというところですね。
それで、足りてないコルチゾールをちょっと補充すると、「昼までもたなかったのが前のように午後まで働けるように戻る」。これはみなさんもこうですよ、という事を言ってるのですよ。顔つきが変わったと言われたのが元気で明るくなったって。それで、「元に戻ったねと同僚に言われた」のですね、治療をしたら。「暗いトンネルから出られた」とご本人は言いました。
それで、良くなったのだけど、月曜日から働き始めると、やっぱり週末には疲れがたまる。ただ「仕事は続けられる」。この補充の容量が、これで良いのかどうかだけど、僕は、オーバーはしたくないのですよ。オーバーするとやっぱり副作用なんかの心配をしなければいけないので、ちょっと控えめにやってる。だから、週末まではもちにくいのかもしれない。でも「ここでちょっと勘弁して」と言うところです。
面白いのはこの人、岡山市民なのですけれど、東広島の山の中に引っ越したのです。ご家族の理由で。しばらくしたら、これ要らなくなった。もしかしたら、岡山市は地方都市だけど、町ですから、町から山に移動して良くなったのかもしれない。これはいろんな電磁波環境とか、化学物質の環境なんかが違うのかもしれない。ちょっと分からないけれど。或いは補充した事によって、もうすっかり機能を取り戻せる、可逆性って言いますよね、元に戻るような状態だったのかもしれない。(1時間53分56秒まで) 続く
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今回の講演で、三田さんは『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』(京都「被爆二世・三世の会」作成)を手に読み解きを行って下さっています。これが手元にあった方が理解しやすいので、入手先を示しておきます。
『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』
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