守田です(20220323 23:30)

東京を含む関東地方全域で、一時期「電力供給ひっ迫警報」が出され、節電が呼び掛けられました。
幸い天候が回復したことなどですでに解除されましたが、しかしなぜ電力供給は「ひっ迫」したのでしょうか。分析しました。

● 地震で発電所が次々ダウン

3月16日夜、宮城県と福島県で震度6強の大きな地震が発生しました。
電力供給ひっ迫となったのは、地震に伴って東北電力と東電管内の火力発電所が次々ダウンし、まだ全部が回復してないからです。
停まってしまったのは合計14基。経産省HPより停止した火力発電所の一覧を多少見やすくして掲載します。

福島新地火力発電所では船から石炭を取り出す揚炭機が折れ曲がってしまった 河北新報 2022年3月21日

発電所の停止状況は以下のとおり。(3月17日2時20分時点)
〇東北電力株式会社
相馬市原町火力発電所(石炭)1号機100万kw
新仙台火力発電所(ガス)3-1号機52万3000kw
新仙台火力発電所(ガス)3-2号機52万3000kw

◯相馬共同火力
新地火力発電所1号機100万kw

◯福島ガス発電
福島天然ガス発電所(ガス)1号機59万kw
福島天然ガス発電所(ガス)2号機59万kw

◯日立造船株式会社
茨城工場第一発電所3号機11万2300kw

◯ENEOS株式会社
根岸ガス化複合発電所(石油)43万1450kw

◯JERA
福島広野火力発電所(石炭)広野5号機60万kw
福島広野火力発電所(石炭)広野6号機60万kw

〇日本製鉄株式会社
釜石火力発電所(石炭)13万6000kw

続いて19、20日に以下の2基が停止しました
◯Jパワー
磯子火力発電所新1号機 60万kW
磯子火力発電所新2号機 60万kW

以下、小型の2基も停止していますが、これを加えると停止したのは15基となります。
相馬石炭・バイオマス発電所(相馬エネルギーパーク) 11.2万kW
仙台パワーステーション(仙台パワーステーション) 11.2万kW

● 6基が復旧していないー電力需給ひっ迫警報

さて今回の「電力需給ひっ迫」はなぜ起こったのでしょうか。端的に大きな発電所の6基が復旧していないからです。
経産省によると地震で停止した14基(647.9万kw)のうち、現在6基(334.7万kw)が復旧してないのです。まだ半分にもいたってない。
止まっている発電所と復旧の見込みを記します。

◯東北電力
相馬市原町火力発電所1号機 100万kw 5月上旬頃のみ込み(揚炭機損傷、ボイラー損傷など)
新仙台火力発電所3号系列1号 52.3万kW 4月上旬頃(タービン関係付属弁の分解点検が必要なため)

◯JERA
広野火力発電所6号機60万kw 1ヶ月程度(主変圧器の損傷のため)

◯相馬共同火力
新地火力発電所1号機100万kw 石炭を陸揚げする巨大な設備が損壊、復旧の見通しが立っていない。

◯Jパワー
磯子火力発電所新1号機60万kW 3月23日復旧予定
磯子火力発電所新2号機60万kW 復旧時期未定(変圧器故障のため)

すぐに復旧するのは横浜市磯子にあるJパワーの1基のみ。(3月23日23時現在復旧未確認)
つまりこの先も長い間、発電能力が大きく落ちたままの状態が続きます。今回は天候回復の影響で警報を解除できましたが、今後も綱渡りが続きます。
明らかなのは、発電システムが地震にとても弱いこと。いつなんどき大規模停電がおきても不思議ではないことです。

広野火力発電所6号機の復旧は一か月後 河北新報 2022年3月23日

● 新幹線脱線、高速道路ひび割れ、水道管断裂 -対策が急務

被害はこれだけではありません。走行中だった東北新幹線が、大きな事故は免れたものの線路上で蛇行するように脱線。
車両の撤去だけでも10日はかかるといわれています。JR東日本は4月20日の全線での運転再開をめざすとしていましが、地震発生から一月も経ってしまいます。
これまでの地震でもたびたび示されていますが、新幹線という交通網は災害に対しとても脆弱です。もし脱線がトンネルの中でおきたら、復旧工事はもっと困難になるでしょう。

新幹線も大きく脱線 全線復旧は4月20日の予定 NHK 2022年3月17日

高速道路も各地で路面のひび割れや、橋脚の損壊に見舞われました。このため東北道や常磐道など6つの路線で通行止めが発生しました。
また宮城県、福島県など東北を中心に7万戸におよぶ大規模断水も起こりました。これには全国各地で耐震性のある水道管の整備が遅れていることが関係しています。
耐震化された水道管の割合は全国平均で40.7% 南海トラフ地震(西日本大震災)が懸念される高知県が23.8%、宮城県29%、和歌山県31%と対策がまったく遅れています。

この状態を変えなくてはいけない。地震対策を抜本的に強化しなくてはいけない。
火力発電所が次々ダウンすることは、全国どこでも起きうること。また今回は火力発電所のダウンでまだましでしたが、これが原発だったらと思うとぞっとします。
地震対策の重要な一環として、原発を止めてなくすことも進めなければ。

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