守田です(20210718 01:00)
今宵は黒い雨訴訟に関する連載記事をさらに投稿させていただきます!
黒い雨訴訟高裁判決公判に向けて更新する原告団 矢ヶ崎克馬さんの姿もあります。 守田撮影
● 広島高裁判決で進んだ点
黒い雨訴訟の高裁判決が画期的だったのは、判決内容が一審を超えたことです。というのは一審は、黒い雨が降った範囲を、従来の認定より大幅に広げた点でとても優れていましたが、しかし限界も残していたのでした。
というのは今回も原告に交付が命じられた被爆者健康手帳は、もともと被爆影響を受けたと考えられる人々であれば、病を発症していようとしてなかろうと交付されるものなのに、一審では病の発症が交付の要件とされたからです。
この点の理解を深めるためには、歴史的経緯への一定の理解が必要です。このためまずは国が、被爆者健康手帳の交付対象である「被爆者」をどう定義しているかから見ておきましょう。
被爆者とは(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/genbaku09/01.html
国による「被爆者」の規定
法律の条文も確認しましょう。(法令リード)
大事なのは「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(被爆者援護法)第1条です。
https://hourei.net/law/406AC0000000117
国による「被爆者」の規定
実際には、黒い雨にあたるなど、被曝影響を受けた人々はもっとたくさんいることが明白なので、この定義で「被爆者」全体がカバーされているとは言えません。その上で、厚労省のHPで次のように続けて論じられていることをおさえておきましょう。
「被爆者が病気やけがなどで医者にかかりたいとき、この手帳を健康保険の被保険者証とともに、都道府県知事が指定した医療機関等にもっていけば、無料で診察、治療、投薬、入院等がうけられます。」
つまり「被爆者」には無料で医療を受けられる権利があるわけですが、これに対し「健康管理手当」とは、被爆者健康手帳を持っている方が11疾病のどれかに罹っていたら月額33,670円(2011年4月現在)の手当てを受けられる制度です。
ところが1974年7月22日、「原爆医療法」などの改訂を示した「402号通達」が出される中で、国が黒い雨が降ったと認めていた地域などが、「健康診断特例地域」とされたのでした。
そしてこの地域の人々が、この健康診断で11種類の疾病の一つが見つかれば「被爆者健康手帳」を受け取れるとされたのですが、一審判決がこの「402号通達」を拠り所としたことを、高裁判決は「失当」と退けたのです。
● 病になる可能性があるからこそ救済が必要
つまり病の発症は被爆者健康手帳交付の要件ではないと指摘したのです。ここが極めて画期的ですが、本来、これでそ真っ当であることも強調したいです。
被爆し、黒い雨の影響を受けるなどすれば、何らかの病を発症する可能性があるのだから、健康維持のためにいつでも無料で診察、治療、投薬、入院等が受けられて当たり前なのです。
これは国が「発症した症状と被爆の因果関係を科学的に証明せよ」と主張したことを土台から覆すものでもあります。
現に発症した病との因果関係どころか、被爆をしたことが確認できれば、それでもう救済しなければならないのです。
そもそも疾病が確認されるまで保障されないなんておかしい。多くの被爆者がリスクがあるからこそ、健康を維持しようと努力しているのです。また被爆影響のあらわれは何も11種類の疾病に限らず、もっと多様にあります。
この点はすべての放射線被曝被害を訴える際の大きな灯ともなります。
被害が出ないと訴えられないなんておかしい。さらにそもそも被害の科学的証明など、政府はなかなか認めようとしません。だからそれが争点である限り、被曝被害者の救済はどんどん延ばされる。
そうではないのです。必要なのはただ被曝がありえた事実を示すことだけなのです。この被害者にとってとても大事な観点が高裁判決で強調されました。だからこそみんなで上告を断念させ、この判決を確定させる必要があります。
判決を受けて、国や広島県、市は上告を断念し、ただちに被爆者健康手帳を交付すべきだと訴える高野正明原告団長 守田撮影
続く
#黒い雨訴訟 #広島高裁判決 #控訴審勝利 #健康管理手当 #健康診断特別地域 #11種類の障害を伴う疾病 #被爆者 #広島原爆 #402号通達
*****
原発や放射線被曝の危険性の暴露など、取材・執筆活動のためのカンパを訴えます。
どうか支えてください。よろしくお願いします。
振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
Paypalからもカンパができます。自由に金額設定できます。
https://www.paypal.me/toshikyoto/500