守田です(20210622 21:30)

6月23日に再稼働させられんとしている美浜原発3号機の危険性を明らかにする連載3回目です。今回、取り上げたいのは美浜など加圧水型原発は、「蒸気発生器」という機器に致命的欠陥を抱えていること。
とくに美浜原発では2号機で「蒸気発生器細管」が破断し、一次冷却材が漏れ出して炉心が高熱化、メルトダウン寸前にいたった事故を1991年に起こしました。この型の原発はいまもこの限界を越えていません。

● 加圧水型原発の蒸気発生器の限界

このことを知るためには原発の構造を知る必要があります。
日本の原発は、核分裂反応が起きている原子炉圧力容器の中を流れる冷却材が熱を吸収し、蒸気となってタービンを回して電気を起こしています。
福島原発など「沸騰水型」は、炉心を流れる水が沸騰し、そのままタービンを回すので「沸騰水型」と呼ばれるのですが、加圧水型では冷却材は閉じたループの中をまわりタービンと直には接しません。

ではどうするかというと途中に「蒸気発生器」(複数)をおき、熱を二次冷却材に移し、蒸気を発生させてタービンを回すのです。
しかもより高温の熱を運べるように、一次冷却材は157気圧まで加圧されています。「加圧水型」の名の由来ですが、加圧されると沸点が高くなり、よりたくさんの熱を運べるのです。実際には325度の熱湯が循環しています。
蒸気発生器の中には二次冷却材の中を3000本以上もの細管が通っていて、その管の中を一次冷却材の熱湯が流れ、配管越しに二次冷却材に熱が伝えられ、蒸気が発生させられています。

このためこの細管は矛盾した役割を背負ってしまう。157気圧325度の熱湯が流れるのですから、厚くて丈夫な方がいい。ところが熱を伝えられることを考えたら薄い方がいい。でも薄くなると負担に弱くなります。
蒸気発生器はこの矛盾がかわせず、たびたび細管にピンホールがあくなど損傷を起こし続けているのです。そうすると信じがたいことに、問題の配管に栓をして水が通らなくしてしまいます。
それを繰り返すと、当然流れも冷却効率も悪くなるし、危険性も増します。この点から蒸気発生器は危ないのでは?という声が高まる中、細管破断の大事故を起こしたのが美浜2号機だったのです。

● 美浜2号機配管破断事故(1991年)は破局寸前だった

事故は1991年2月9日に発生しました。蒸気発生器細管の一本が完全に破断し、一次冷却材が二次系に55トンも漏れ出したのです。
炉心の熱を運ぶための冷却材が漏れ出してしまったのはたいへん深刻でした。炉心を冷やせず、燃料が溶けだしてメルトダウンしてしまう可能性があったからです。
これに対し、数秒後に非常用炉心冷却装置(ECCS)が作動し、注水も始まりました。しかしそれですぐに破局を免れたわけではありませんでした。

というのは、他方で蒸気発生器の弁を操作し蒸気を逃がして一次冷却材を冷やすとともに、加圧器の弁も操作し、一次冷却材の圧力を下げようとしたのですが、どちらもスムーズにいかなかったのでした。
注水はされているものの、一次系の冷却がスムーズに進まず、圧力も下がらないために二次系への漏えいが続いたのです。結局、加圧器の圧力を下げるための弁は最後まであきませんでした。
これに対し、加圧器補助スプレーを使い、蒸気を水に戻して圧力を下げ、ようやく一次系の減圧を始めることができて漏えいが収まりました。原子炉内の水位も回復し、メルトダウンにいたらずに済みました。

細管破断が起きた原因は、蒸気発生器細管が、二次冷却材の流れによって振動するのを防止するための「振止め金具」が、所定の位置まで挿入されておらず、細管が揺れて他の金属と接触してこすれ、疲労破壊を起こしたことでした。
この「振止め金具」が所定の位置まで挿入されていないことが、1972年の運転開始からほぼ20年間、点検漏れしていたことも原因でした。
またメルトダウンにいたらなかったといえ、主蒸気の弁がきちんと閉まらなかったり、加圧器の圧力を下げる弁が最後まであかないなど、安全装置が設計時の想定通りに動かないことも起こっていて、その面でも深刻でした。

● 蒸気発生器を交換するようになったけれども・・・

破局寸前の事故を起こし、その後に問題の蒸気発生器細管を点検のためもあって切り刻んだ関西電力は、結局、この蒸気発生器を新しいものと交換しました。
交換は少し前から検討が始まっていたことでした。各原発の蒸気発生器細管が次々とピンホールを作り、その度に栓をしていたわけですが、どんどん使える細管が少なくなっていたからでした。
このため、1991年の事故後、同型の原発で蒸気発生器の交換が続きました。今回、動かされようとしている美浜原発3号機でも、1996年に交換されています。

しかし蒸気発生器の交換はもともと想定されていたものではないので、格納容器に交換のためのハッチがついているわけではない。このため格納容器を切り刻む必要が生じました。
しかし格納容器はもともと、圧力容器内で事故が起こり、高圧になったときに放射性物質を吹きだす場。放射性物質の漏えいを防ぐ最後の砦で、堅牢に作られています。
そこに「メス」を入れるため、「心臓移植手術」などとも言われました。このことで確実に格納容器の堅牢度は落ちています。

さらにそこまでして交換した新しい蒸気発生器が、細管が損傷する問題を解決できたのかというと、まったくそんなことはない。
せめて損傷の度合いが下げられたのかと言うとそんなこともない。要するに蒸気発生器は未完の機器でしかなく、故障の繰り返しを越えられない致命的欠陥部品でしかないのです。
この点ですべての加圧水型原発は、過酷事故を引き起こす可能性を持っています。その上に美浜3号機は、老朽化していて、10年も止められていて、しかも死傷事故も起こしています。動かしてよいわけがないのです。

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