守田です。(20120502 23:30)

このところ、連日、「がれき」問題の分析を深めてきましたが、その中でみえてきたのは、「がれき」にとどまらず、ゴミの収集、運搬、焼却という現代社会が作り出したシステムが、まるまる人為的な、放射能の濃縮過程になってしまっているというとんでもない事実です。すでにこのことに気づいていた方には、何をいまさらと指摘されてしまうかもしれませんが、これは本当に、もの凄く、大変なことです。

とくに日本のように生産力が高く、それだけに日々、大量の廃棄物を発生させ、そのために、ゴミの収集、運搬、焼却、(灰の)埋め立てという巨大な処理システムを作りだしてきた「先進国」にとっては、広域汚染事故の恐ろしさの第一に数え上げられるものの一つともいえるのではないか。なぜならこの濃縮は、自然の中での生態濃縮などとは較べものにならないスピードで進むからです。何せ近代化の中で高められてきた生産力そのものによって濃縮しているからです。

このことを雄弁に物語っているデータがあります。東日本の1都16県の焼却炉における放射能測定データです。何はともあれこれをご覧ください。ここからは、東日本の汚染実態が垣間見えるとともに、そこで起こっている恐ろしい放射能の濃縮過程の姿が見えます。
http://www.env.go.jp/jishin/attach/waste-radioCs-16pref-result20110829.pdf#search=’焼却場放射能測定一覧’
幾つか高めのデータを拾ってみましょう。データが多いので、何回かに分けます。
今回は、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県を扱います。
かっこの中は測定日。すべて2011年のデータです。

岩手県
前にも紹介しましたが、一関市、奥州市で非常に高い値が出ています。
一関市一関清掃センター・飛灰から30000Bq/Kg(0722)
奥州市胆江地区衛生センター・飛灰から10100Bq/Kg(0709)

宮城県
他県に較べれば少なめですが、それでも大きな値が出ています。
仙台市の松森工場・飛灰から2581Bq/Kg(0707)
気仙沼市の気仙沼市クリーンヒルセンター・2078Bq/Kg(0727)

秋田県
今回あげた県の中では最も少なめです。最大値でも200Bq/Kgを下回っています。
秋田市総合環境センター・196Bq/Kg(0705)

山形県
山形市が数値が高いです。
山形市立谷川清掃工場・飛灰6900Bq/Kg(0722)
山形市半郷清掃工場・飛灰7800Bq/Kg(0722)
他の市町は数値が下がります。

福島県
全般的にもの凄い高い値が出ています。市ごとに表します。
福島市
あぶくまクリーンセンター・飛灰95300Bq/Kg(0722)
あらかわクリーンセンター・飛灰73000Bq/Kg(0722)
郡山市
河内クリーンセンター・飛灰88300Bq/Kg(0722)
富久山クリーンセンター・飛灰86900Bq/Kg(0722)
いわき市
北部清掃センター・飛灰23000Bq/Kg(0722)
南部清掃センター・飛灰21300Bq/Kg(0722)
南相馬市
クリーン原町センター・飛灰49700Bq/Kg(0726)
伊達市(国見町、桑折町、川俣町含む)
清掃センター・飛灰66200Bq/Kg(0722)
二本松市(本宮市、大玉村含む)
もとみやクリーンセンター・33900Bq/Kg(0722)
会津若松市(磐梯町、猪苗代町など会津若松地方広域市町村)
環境センター・18410Bq/Kg(0722)
データが多いので、幾つかの市町を省略

茨城県
全般的に高い値が出ています。市ごとに表します。
日立市
清掃センター・飛灰17300Bq/Kg(0817)
土浦市
清掃センター・飛灰12100Bq/Kg(0711)
北茨城市
清掃センター・飛灰10400Bq/Kg(0711)
つくば市
クリーンセンター・飛灰6000Bq/Kg(0711)
ひたちなか市
勝田清掃センター・飛灰15900Bq/Kg(0711)
那珂湊清掃センター・飛灰13800(0711)
阿見町
霞クリーンセンター・飛灰16200Bq/Kg(0711)
龍ヶ崎市
くりーんプラザ龍・飛灰19300Bq/Kg(0711)
守谷市
常総環境センター・飛灰31000Bq/Kg(0711)
小美玉市
クリーンセンター・飛灰12000Bq/Kg(0714)
データが多いので幾つかの市町を省略

幾つか特徴的なことをあげてみると、ひとつに宮城県全般の焼却灰の汚染度よりも、岩手県一関市、奥州市の方が高いことがあげられます。これらはともに内陸の市で津波被害とは無関係です。沿岸部のものがいくらか運びこまれたことはあったとしても、基本は内陸ででた一般ゴミからこれだけの放射能が出ているわけです。

秋田県は全般的数値が低めですが、山形県では山形市が高くそのほか、東根市で3500Bq/Kg、寒河江市で2050Bq/Kgといった値が出ています。
福島県はやはりかなり高いです。比較的汚染が少ないとされている会津若松市でも非常に高い値が出ています。
茨城県は全般的に非常に高いです。最も高いのは守谷市で31000Bq/Kgです。

ともあれどこもかしこも、一般廃棄物の焼却で、このようなもの凄く高い値の放射性セシウムが飛灰の中から計測されているのですから、もはや「がれき」云々の問題ではなく、廃棄物一般の焼却が危険になりながら、平然と繰り返されてきたことが分かりますが、大変、気になるのは、それぞれの焼却場の職員に対する放射線防護の措置がどれだけとられているかです。

同時に、灰を排出し、運搬し、埋め立てる・・・いや今上げた多くが埋め立てができずに保管などの処置がなされたはずですが、その処理過程はどうなったのか。また日々、こうした焼却が行われているわけで、これらの焼却灰は一体どうなったのか、端的に言えば、そのどの過程でもずさんな管理がなされ、作業員が被曝し、環境に放射性物質が漏れ出してしまっているのではないか。この点も気になるところです。

あるいはこれらの焼却場の炉にそれぞれバグフィルターがついていたのか。また環境省の見解から、実証実験などなしに焼却が行われてきたことは明らかで、何らかのモニタリングをしたのか否か。したとした場合、どのような方法でなされたのか。これらの点も非常に気になります。
これらについてデータのありどころを知っている方は、ぜひご一報ください。

ともあれこれらの数値をみるだけでも、もの凄く膨大な量の放射性物質が、すでに焼却され、一部は大気に漏れてしまい、一部は炉内を汚染して残り、一部は灰に超濃縮されて存在していることが分かります。放射性物質はそれぞれが崩壊して放射線を出す能力を減らしていくのを待つしかないので、当たり前ですが、焼却で減るわけはありません。当然、高濃度に圧縮した灰が次から次へと生まれているわけです。この管理もまたこれまでまったく想定されていなかった大変な仕事です。厳重な保管が必要であり、これまでの最終処分場に投げ入れるなどもっての他です。

ともあれはっきりとしているのは、ゴミ処理過程が巨大な放射能濃縮過程になっているということです。今、何らかの対策を採らなければ、このゴミ処理過程にそって放射線による健康被害が出てしまいます。いやすでに出ている可能性が高くあります。

データの分析を続けます。