守田です。(20120503 23:00)

昨日の東日本の1都16県の焼却炉における放射能測定データを分析しました。ここからは東日本の汚染実態が垣間見えるとともに、そこで起こっている恐ろしい放射能の濃縮過程の姿が見えるからです。今回はその続きを行います。
なお昨日も紹介しましたが、このデータは、以下からすべてが見れます。
http://www.env.go.jp/jishin/attach/waste-radioCs-16pref-result20110829.pdf#search=’焼却場放射能測定一覧’
再び各県ごとに分析していきます。今回扱うのは、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県です。かっこの中は測定日。すべて2011年のデータです。セシウム合計の値です。

なお焼却時にガスに混じって舞い上がり、バグフィルターで捕まえられたものを飛灰、焼却炉の中に残ったものを主灰と呼びます。放射性セシウムの多くは飛灰の中に濃縮されているので、主に飛灰の動向をチェックしています。
データが多いので、特徴的なものだけ取り上げます。全体状況をつかむためには、元データを参照してください。

栃木県
全体的に高い値が出ていますが、とくに那須塩原が突出しています。観光地の日光での値も高いです。各市ごとに示します。

宇都宮市
北清掃センター・飛灰7530Bq/Kg(0708)
南清掃センター・飛灰5200Bq/Kg(0708)
クリーンパーク茂原・飛灰6060Bq/Kg(0708)
日光市
クリーンセンター・飛灰16050Bq/Kg(0713)
那須塩原市
クリーンセンター・飛灰48600Bq/Kg(0705)
大田原市(那須地区広域行政事務組合)
広域クリーンセンター大田原・飛灰13580Bq/Kg(0706)

以下、省略しますが、最も値の低いのが以下の焼却場です。
小山市(小山広域保健衛生組合)
中央清掃センター・飛灰1196Bq/Kg(0714)

群馬県
全体的に高い数値が出ています。最も高いのは沼田市、渋川市、最も低いのは伊勢崎市です。各市ごとに示します。

前橋市
大胡クリーンセンター・飛灰4030Bq/Kg(0704)
渋川市(渋川地区広域市町村圏振興整備組合)
清掃センター・飛灰8240Bq/Kg(0714)
安中市
碓氷川クリーンセンター・飛灰5256Bq/Kg(0711)
沼田市(沼田市外二箇村清掃施設組合)
清掃工場・飛灰8940Bq/Kg(0701)
片品村(利根東部衛生施設組合)
尾瀬クリーンセンター・6368Bq/Kg(0707)
大泉町(大泉町外二町環境衛生施設組合)
清掃センター・飛灰5260Bq/Kg(0706)

以下、省略しますが、最も低いのは以下の焼却場です。
伊勢崎市
清掃リサイクルセンター21・飛灰1810Bq/Kg(0701)

埼玉県

栃木県、群馬県よりはやや低めですが、高い値が出ています。最も高いのは飯能市、所沢市、吉見町、最も低いのは戸田市です。
さいたま市
クリーンセンター大崎第一工場・飛灰2560Bq/Kg(0706)
川越市
東清掃センター・飛灰3300Bq/Kg(0725)
川口市
戸塚環境センター・飛灰4100Bq/Kg(0706)
所沢市
東部クリーンセンター・飛灰5600Bq/Kg(0719)
飯能市
クリーンセンター・飛灰5740Bq/Kg(0614)
小川町(小川地区衛生組合)
ごみ焼却場・飛灰5400Bq/Kg(0705)
吉見町(埼玉中部環境保全組合)
環境センター・飛灰5600Bq/Kg(0705)

以下、省略しますが、最も低いのは以下の焼却場です。
戸田市
蕨戸田衛生センターごみ処理施設・飛灰870Bq/Kg(0721)

千葉県
大変、高い値が出ていますが、これは千葉県が他県に比して溶融炉を多く使っているため、より濃縮が進んでいるためもあると思われます。そのため他の県のデータとの単純比較はしずらいことをおさえておかねばなりませんが、その上で、県内比較を見ていくと、突出して高いのは柏市で、これに続くのが松戸市です。ただし松戸の場合は、溶融炉ではないので、他県と比較しても高い値であることが分かります。ともあれこれらから、千葉県がかなり汚染度合いが高いこと、同時に、各地で濃縮が進んでいることが見えてきます。以下、市別に分析していきます。

千葉市
千葉市新港清掃工場・溶融飛灰12950Bq/Kg(0715)
松戸市
クリーンセンター・飛灰(固化)47400Bq/Kg(0704)
柏市
清掃工場・飛灰固化物9780Bq/Kg(0703)
第二清掃工場・溶融飛灰固化物70800Bq/Kg(0627)
流山市
クリーンセンター・飛灰28100Bq/Kg(0705)
我孫子市
クリーンセンター・飛灰26500Bq/Kg(0707)
印西市(印西市、白井市、栄町)
クリーンセンター・飛灰13970Bq/Kg(0630)

以下、省略しますが、最も低いのは以下の焼却場です。他と比較して非常に低いと言えます。
野田市
関宿クリーンセンター・飛灰80Bq/Kg(0715)

今回、見てきた中で特徴的なことは、千葉県の汚染度が極めて高いということです。また千葉県では溶融炉を使っているところが多く、そこでの灰はさらに高度に濃縮されています。このため柏市の第二工場で70800Bq/Kgという値が出ています。溶融炉がより濃縮を進めてしまう実態があらわれています。

ともあれ昨日分析した茨城県のデータも含めて、北関東から千葉にかけて汚染が深刻であるとともに、各地で放射能の人為的濃縮がどんどん行われている実態が浮かび上がってきます。

同時に、これは1都16県全部のデータに共通することですが、このような測定が行われたは、福島原発事故からほぼ4ヶ月前後たってからでした。そのためにヨウ素はどこでも検出されておらず、データはセシウムに限ったものになっていますが、もっと早くに測っていたら、もっと恐ろしい値が出ていたのは間違いないでしょう。つまりその処理過程で、凄い放射線が出ていたわけで、それがたくさんの人々を被曝させたと思われます。

しかも政府が、8000ベクレル以上の焼却灰の埋め立て禁止の指示を出したのもこれまた事故後、3ヶ月以上経った6月です。この指示自身、これまでの法を踏みにじったものですが、これが意味するのは、それまでは測定がなされておらず、そのため放射性ヨウ素をも含み、セシウム濃度ももっと高いゴミの焼却が続けられ、濃縮された灰も平然と運びだされてしまっていたはずだということです。その間、作業者の被曝対策もまったくなされていなかったでしょう。・・・胸が痛くなるばかりです。

なお、この柏での大変高い値に関して、毎日新聞が当時、報道を行っていたことをあるブログからつかみました。元記事がみつけられなかったのですが、貼り付けておきます。

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放射性物質:焼却灰から7万ベクレル超を検出 千葉・柏
毎日新聞2011年7月10日21時41分配信

千葉県柏市は10日、市内の清掃工場で発生した焼却灰から、1キログラム当たり7万ベクレルを超える放射性セシウムを検出したことを明らかにした。東京電力福島第1原発事故の影響とみられ、焼却灰の埋め立てを6月末から中止している。現状では、約2カ月で灰の保管スペースがなくなり、一般家庭などからの可燃ごみの受け入れが不可能になると予想される。

国は6月、同8000ベクレル以上の焼却灰は埋め立てず、一時保管するよう指針を定めたが、一時保管後の処分方法は決めていない。同市は週明けにも国に対し(1)埋め立て可能な最終処分の新基準策定(2)一時保管場所の確保(3)処分費用の全額国庫負担--を緊急要望する方針という。

同市によると、公園や一般家庭の庭などで放射線量を下げる目的で、草刈りや樹木の枝・葉の剪定(せんてい)を実施し、可燃ごみとして清掃工場へ持ち込まれたため、数値が上がった可能性があるという。

2カ所の清掃工場のうち、6月下旬から7月上旬まで3回の検査の最大値は南部クリーンセンターで同7万800ベクレル、北部クリーンセンターで同9780ベクレル。両センターの焼却灰の最終処分場で同4万8900ベクレルだった。

同市は1日平均280トンの可燃ごみを2清掃工場で受け入れ、同21.3トンの焼却灰を最終処分場に埋め立てている。【早川健人】