守田です。(20120504 23:00)

東日本1都16県の一般廃棄物焼却データ解析の3回目をお送りします。
今回は、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県を扱います。
データ元は以下です。
http://www.env.go.jp/jishin/attach/waste-radioCs-16pref-result20110829.pdf#search=’焼却場放射能測定一覧’
基本的に各焼却場の飛灰から計測されたセシウムの値を取り上げます。
かっこ内は計測日。すべて2011年のデータです。

東京都
全体としては1000~4000Bq/Kgぐらいの値が出ていますが、突出して高いのが、江戸川区です。最高値の12920Bq/Kgが出ています。ただし東京はこの江戸川区のある東部の汚染が西部に較べて高いことが伝えられてきましたが、西部の三多摩地区の三鷹市などでも3409Bq/Kgという、東部と変わらない値が出ています。

「子どもたちと未来をつなぐ会・町田」が100人以上の健康調査を行い多数の子どもたちが、大量の鼻血を出したことが報告された町田市の値が1199Bq/Kgです。低いところはというと、日野市の275Bq/Kg。さらに離島の利島村、新島村、三宅村、八丈村などはこれを下回りますが、大島は853Bq/Kgと、日野市よりも高い値を示しています。
以下、区市町別に示します。

東京都23区(高い順に)
江戸川区
清掃工場・飛灰12920Bq/Kg(0719)
大田区
清掃工場・飛灰3890Bq/Kg(0720)
練馬区
光が丘清掃工場・飛灰3870Bq/Kg(0723)
葛飾区
清掃工場・飛灰3860Bq/Kg(0722)
江東区
有明清掃工場・飛灰3630Bq/Kg(0726)
墨田区
清掃工場・飛灰3290Bq/Kg(0719)
世田谷区
清掃工場・飛灰3110Bq/Kg(0622)
足立区
清掃工場・飛灰2770Bq/Kg(0722)
以下、省略します。23区で最低値は以下の焼却場です。
豊島区
清掃工場・飛灰974Bq/Kg(0723)

東京都、市・多摩地区(高い順に)
三鷹市
環境センター・飛灰3409Bq/Kg(0711)
八王子市
北野清掃工場・飛灰固化物2540Bq/Kg(0706)
戸吹清掃工場・飛灰2470Bq/Kg(0706)
あきるの市(西秋川衛生組合)
高雄清掃センター・飛灰固化物2260Bq/Kg(0721)
小平市(小平・村山・大和衛生組合)
ごみ焼却施設・飛灰2251Bq/Kg(0709)
国分寺市
清掃センター・飛灰2187Bq/Kg(0719)
以下省略します。最低値は以下の焼却場です。
日野市
クリーンセンター・飛灰275Bq/Kg(0720)

神奈川県
最も高い値は逗子市の3123Bq/Kg。それに次ぐのが南足柄市の2885Bq/Kg
です。全体としては1000から2000Bq/Kgぐらいに集中しています。
以下、市町別に示します。

横浜市
旭工場・飛灰2400Bq/Kg(0629)
金沢工場・飛灰2100Bq/Kg(0629)
都筑工場・飛灰1890Bq/Kg(0629)
鶴見工場・飛灰1220Bq/Kg(0629)
川崎市
王禅寺処理センター・飛灰2530Bq/Kg(0712)
堤根処理センター・飛灰1744Bq/Kg(0712)
浮島処理センター・飛灰1389Bq/Kg(0712)
橘処理センター・飛灰959Bq/Kg(0712)
相模原市
南清掃工場・飛灰2093.9Bq/Kg(0629)
横須賀市
南処理工場・飛灰2550Bq/Kg(0630)
鎌倉市
今泉クリーンセンター・飛灰919Bq/Kg(0707)
小田原市
環境事業センター・飛灰1286Bq/Kg(0701)
逗子市
環境クリーンセンター・飛灰3123Bq/Kg(0701)
南足柄市
清掃工場・飛灰2885(0705)
以下、省略します。最も値が低いのは以下の焼却場です。
大井町(足柄東部清掃組合)
大井美化センター・飛灰298Bq/Kg(0704)

新潟県
全体として値は低く、主灰からは不検出も多いです。しかし南魚沼市
だけは突出して多く、県内最高の3000Bq/Kgが出ています。十日町市も
やや高いです。以下、市町別に示します。

新潟市
白根グリーンタワー・飛灰54Bq/Kg(0705)
長岡市
栃尾クリーンセンター・飛灰205Bq/Kg(0704)
三条市
第2ごみ焼却処理施設・飛灰84Bq/Kg(0701)
柏崎市
クリーンセンターかしわざき・飛灰52Bq/Kg(0704)
十日町市
エコクリーンセンター・飛灰740Bq/Kg(0706)
魚沼市
エコプラント魚沼・飛灰1000Bq/Kg(0630)
南魚沼市
環境衛生センター・飛灰3000Bq/Kg(0701)
以下、省略します。最も値が低いのは以下の焼却場です。
妙高市
新井頚南クリーンセンター・飛灰10Bq/Kg(0707)

山梨県
全体として低めです。最も高い値が富士吉田市の813Bq/Kg、次いで
大月市の482Bq/Kg、あとは200Bq/Kg以下です。以下、市町別に示します。
(高い順から示します)

富士吉田市
環境美化センターごみ処理施設・飛灰813Bq/Kg(0721)
大月市(大月都留広域事務組合)
ごみ処理施設・飛灰482Bq/Kg(0712)
山梨市
環境センターごみ焼却施設・飛灰165.7Bq/Kg(0715)
東山梨環境衛生組合
環境衛生センター・142.7Bq/Kg(0715)
上野原市
クリーンセンター・飛灰112.7Bq/Kg(0715)
以下、省略します。最も値が低いのは以下の焼却場です。
甲府市
環境センター付属焼却工場・飛灰53.2Bq/Kg(0720)

長野県
場所によってばらつきがあります。不検出のところもたくさんありますが。
佐久市で県内最高値の1970Bq/Kgが出ています。以下、市町別に示します。
(高い順に示します)

佐久市
クリーンセンター・飛灰1970Bq/Kg(0708)
中野市(長野市、中野市、山ノ内市、小布施町)
東山クリーンセンター・1320Bq/Kg(0709)
須坂市
清掃センター・飛灰930Bq/Kg(0711)
上田市(上田市、東御市、青木村、長和町)
上田クリーンセンター・飛灰910Bq/Kg(0715)
信濃町(信濃町、飯綱町)
北部衛生センター・飛灰750Bq/Kg(0708)
飯山市(飯山市、木島平村、野沢温泉村、栄村)
エコパーク寒川・飛灰492Bq/Kg(0720)
以下、省略します。

不検出の焼却場のある市町村名を並べておきます。
松本市・木曽町・下諏訪町・白馬村・伊那市・辰野町
塩尻市・岡谷市・安曇野市・大町市

静岡県
全体的に1000Bq/Kg以下ですが、伊豆半島に高めのところが集中しています。
県内最高値は熱海市の2300Bq/Kg、次いで伊東市の2230Bq/Kgです。
以下、市町別に示します。(高い順に示します)

熱海市
エコプラント姫の沢・飛灰2300Bq/Kg(0713)
伊東市
環境美化センター・飛灰2230Bq/Kg(0719)
伊豆の国市
韮山ごみ焼却場・飛灰2060Bq/Kg(0707)
伊豆市
清掃センター・飛灰641Bq/Kg(0704)
函南町
ごみ焼却場・飛灰488Bq/Kg(0711)
静岡市
沼上清掃工場・溶融飛灰442Bq/Kg(0704)
富士宮市
清掃センター・飛灰410Bq/Kg(0727)
磐田市
クリーンセンター・飛灰331Bq/Kg(0707)
以下、省略します。なお唯一不検出なのがなんと島田市の焼却場です。
島田市
田代環境プラザ・飛灰不検出

1都16県の分析は以上です。

最後の最後に珍しい不検出の焼却場として、島田市の田代環境プラザが出てきました。ここが「試験焼却」に使われたのは、静岡県で唯一の不検出焼却場だったからなのですね。他の焼却場はすでにセシウムで汚染されていることを熟知しているからここを選んだのでしょう。
それにしても、静岡県で、ただ一つ不検出だったところを選らんだことに政策的意図を感じます。要するに福島原発から最も近い、放射能汚染がされていない炉を使ったということです。なお、この島田に関する情報も、次回あたりで特集したいと思います。

今回の分析では東京以西(新潟を含む)の汚染実態、濃縮実態が垣間見えました。ただし注意を促したいのは、これはあくまでも濃度であり、放射性物質の総量ではないということです。東京の場合、ごみの総量が圧倒的であり、それを考えると量としての集積は非常に大きいといえます。巨大都市横浜などを有する神奈川県も同じことが言えるでしょう。なお東京について新しい情報を入手したので、続編で、独自の分析を行います。

さて、今回のデータをみるとき、もう一点、注意を促しておきたいことがあります。一番初めに紹介した岩手県のデータに戻りますが、実はここで紹介した環境省まとめによるデータには、もともと岩手県から出されたデータの一部が消えているのです。

どういうことかというと、最も高い値が出た一関清掃センターについて、環境省は、7月5日飛灰26000Bq/Kg、7月22日飛灰30000Bq/Kgと並べるだけで、もう一つの非常に貴重なデータである8月24日飛灰14700Bq/Kgというデータを消してしまっています。

しかしこの14700Bq/Kgというデータをしっかりおさえたときにみえてくるのは焼却場の飛灰のデータは、日によって、なんと倍も違って計測されることがあるということです。これは非常に重要なポイントです。
以下、岩手県の元データを記しておきます。
http://ftp.www.pref.iwate.jp/view.rbz?nd=4406&of=1&ik=1&pnp=50&pnp=2648&pnp=4406&cd=37948

なぜそうなるのか。燃やすものに含まれている放射性物質の総量が日によって違うからに他なりません。ある意味でそれはあたり前なのです。ゴミに均質に放射性物質が付着しているわけではありません。たまたま多い日もあれば少ない日もあります。その差がなんと倍にもなってしまうのですから、とても1日の計測で、実態をつかむことなどできないのです。

となれば、今までみてきた1都16県のデータも、一つの目安にはなりはするものの、焼却の実態をつかむものとしてはあまりにアバウトなものであることも見えてきます。きちんと実態をつかむためには、もっと何日も継続的に計り、平均値を出す必要があったのです。

ところが環境省はそうした指導を行いませんでした。そのためデータがわずか1日のところばかりです。これは計測における重大な過失であると言えます。そのことを岩手県の元データが物語っているため、環境省が整理するときに抜かしてしまったのだと思われます。これは数値改ざんではないものの、データの恣意的な抹殺です。

以上から見えてくることは以下の通りです。
一つに、東日本の1都16県で、放射性物質の非常に大量の濃縮と焼却が行われてきていること。しかしながらそのデータはわずかにしか記録されてきていないこと。初期の実態がなんら把握されていないとともに、その後も、計測回数があまりに少なく、きちんとした把握がなされていないということです。ここでも放射能汚染が野放しにされている実態が見えてきます。

私たちは、もうこれ以上、私たちの国を汚染するなという声を強めていく必要があります。東日本がこんなに汚染されてしまったのなら、まだ傷の浅い西日本を守り、そこに東日本からの疎開や避難の拠点をたくさん作るとともに、汚染の少ない西日本で食料を大増産し、東日本に供給すること、そのことで、疎開も避難もできない人々にも、少しでも、放射線防護上、有利な条件を手渡していくことが大切だということです。

こんなにひどい汚染状況を明らかにせず、人為的な放射能の濃縮を野放しにして、人々に二重三重の被曝を強制している政府を信用することなど、絶対にあってはなりません。過ったがれき政策、それだけでなく放射性物質の焼却政策を何とかくいとめましょう。ここでの分析をそのために使っていただきたいと思います。

以上、3回の連載を終了します。