守田です。(20120529 17:30)

先週土曜日に、富士吉田から仙台・福島を駆け抜けた旅を終えて、京都に戻りました。非常にたくさんの人と出合い、たくさんの刺激を受けました。取材内容も高密度で、どれから原稿化すればいいやら迷うところです。しかし今は、少しお休みをいただいています。

この「明日に向けて」はたくさんの方の本当に暖かい手によって支えられています。それだけに一日でも執筆を休むのは気が引けるのですが、それでは持続可能な活動が維持できない。また「腹をくくり、覚悟を固め、開き直り、免疫力を最大にあげて、放射線の悪さとたたかう」という肥田さんから教わったこの時代に必須の生き方を自分自身が実践できない。

なので、高密度な講演と取材の連続のあとは、意識的に体を休めることにしました。記事の発信が遅れますが、どうかご容赦ください。

さて今日は、京都新聞が、矢ヶ崎さんとの共著、『内部被曝』を二度にわたって紹介してくださったので、みなさんとシェアしたいと思います。一つは昨日28日の朝刊1面の「凡語」欄での掲載です。

「放射能の被ばくにどう立ち向かうか。そうしたテーマの市民学習会などの場で、さざ波のように広がっている冊子がある▼岩波書店が今年3月に刊行したブックレット「内部被曝(ひばく)」(矢ケ﨑克馬、守田敏也著)だ。「怒りを胸に、楽天性を保って最大防護を」として専門家任せにせず市民が学び、判断を下すことが大切だというメッセージを伝えている」

・・・との紹介ですが、嬉しくなる美文ですねえ。この文章に続いて、京都で新たに立ち上がった市民放射能測定所のことにも触れられています。『内部被曝』と市民測定室のセットでの紹介も嬉しいものです。凡語を書いてくださった記者さんに感謝します。

また少し前になりますが、5月10日にも、朝刊で『内部被曝』について、とりあげてきただけました。こちらは、京都新聞の若きホープ、後藤記者が書いてくださいました。非常に丁寧に取材をしていただき、矢ヶ崎さんと僕が伝えんとした趣旨を実に鮮やかに書いてくださっています。

残念ながらネットには掲載されなかったようですので、全文を書き写してここに転載させていただきます。後藤さん、素晴らしい記事を書いていただき、ありがとうございました。

おかげさまで『内部被曝』は2刷りが販売になっています。さらに各地で読んでいただけるといいなと思っています。みなさま、どうか宣伝など、ご協力ください。岩波書店の担当の方のお話では、学習会の使用などでのまとめ買いの注文も多いそうです。学習会に向いているとの評判ですので、どうかそのようにお使いいただけると嬉しいです。

以下、京都新聞「凡語」5月28日と、記事「内部被ばく脅威知って」5月10日を
ご紹介します。

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凡語
京都新聞 2012年05月28日朝刊

放射能の被ばくにどう立ち向かうか。そうしたテーマの市民学習会などの場で、さざ波のように広がっている冊子がある▼岩波書店が今年3月に刊行したブックレット「内部被曝(ひばく)」(矢ケ﨑克馬、守田敏也著)だ。「怒りを胸に、楽天性を保って最大防護を」として専門家任せにせず市民が学び、判断を下すことが大切だというメッセージを伝えている

▼具体的に何ができるのか。食品の安全性に関して道筋を示す例が今月20日、京都市伏見区のビル一室に生まれた。関西で初となる市民による放射能測定所だ。府職員の奥森祥陽さん(53)=宇治市=ら20人がカンパなどで資金を募り、安定した精度が期待できる機種を海外から購入した▼奥森さんは、震災発生後に職員として福島県での支援活動に志願したことをきっかけに、ボランティアとして京都へ避難した家族の支援を始めた▼「自分たちだけが逃れて本当によかったの」。故郷を離れた母親たちの葛藤や汚染がさらに拡散する懸念を知る。測定所はその延長線上に実現した。避難家族もいっしょにお好み焼きなどを笑顔で囲み、開設を祝った▼「京都に学ぼう」と大阪や奈良から同じことをめざす人も参加した。奥森さんたちは市民測定所が各地に広がることを願う。データが集積されると、「安全」と宣言する側の言葉が本当か市民が見極めることにつながる。めざすのは「自分で判断し安全な道を選択できる社会」だ。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/bongo/20120528_2.html

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明日に向かって 東日本大震災

内部被ばく脅威知って
京のライター 物理学者と本出版
京都新聞 2012年5月10日朝刊

京都市左京区のフリーライター守田敏也さん(52)が、放射性物質を体内に取り込むことの危険性をまとめた著書『内部被曝』を出版した。外部被ばくに比べ、危険性が過小評価されてきた歴史背景に踏み込んでいる。

物理学者で被ばく問題に詳しい矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授(67)へのインタビューを基にした共著。守田さんは福島第1原発事故直後から、政府が繰り返す発表を「放射能は怖くないキャンペーン」と批判した。外部被ばくに比べ危険性が高いとされる内部被ばくの脅威が伝えられていないことに危機感を抱き、戦後の原爆症認定集団訴訟で内部被ばくの実態を証言してきた矢ヶ崎さんを訪ねた。

著書では内部被ばくの特徴として、放射性物質が体内のあらゆる所に運ばれ、局所的に高密度で分子切断を起こすと説明。DNAが傷つき、がんや心臓病などさまざまな病気を引き起こす恐れがあるとした。

米国が戦後に行った原爆の被爆者調査で、自ら進める核戦略のために内部被ばくの事実を否定した、と指摘。放射線の非人道的な被害を隠し、日本政府も黙認してきたと指弾した。

守田さんは「放射性物質を体内に入れないことが最も大切だが、個人の努力では不可能。大量生産、大量消費の在り方を見直し、社会全体で安全に生活できるシステムを考える必要がある」と話す。岩波書店発行の岩波ブックレット。588円(税込み)。(後藤創平)