守田です(20190824 23:30)

● WIPPも問題だけれども・・・

ニューメキシコの旅の報告のとりあえずの最後に、前回と前々回でWIPP(Waste Isoration Pilot Plant) のことを書きました。
同州のカルズバード近郊にある核爆弾製造過程で出てきたプルトニウムなどに汚染されたゴミを地下650メートルの岩塩帯に捨てている施設です。
ここは2014年2月に連続2件の火事を起こしました。二回目はプルトニウムのゴミを詰めたドラム缶が爆発して燃える深刻な事故で地下施設のかなりの部分が汚染されてしまっています。

またドイツにある元岩塩鉱山を利用した低レベル廃棄物を捨ててきたアッセ2という施設では、最近になって地下水の流入が確認され、ドイツ政府がすべてを掘りだして他の場所に移すと決断せざるをえませんでした。
この点でWIPPもこの先、水の浸入がないとは言い切れず、安全性が担保されてるとはとても言えません。


WIPPの構造図 写真はLos Alamos National Laboratoryより

しかしこの施設のことを調べていて、そもそもここの運用開始が1999年と比較的最近でしかないことの重大な意味に気が付きました。端的に言って、それ以前はどうしていたのか? それで調べてみたら驚くべきことが分かりました。
広島・長崎に原爆を投下して以降、かなり長い間、アメリカは核のゴミをあちこちに安易に捨ててきたのです!
当然にもそれはアメリカに住まう人々にさまざまな汚染をもたらしてきたと思われます。ウランを採掘し、核実験を行って放射能をまき散らし、その上、核のゴミを安易に捨ててきた・・・これが核大国アメリカの実態なのです。

● 浅い溝のようなところに核のゴミが放り込まれていた

このことはニューメキシコから持ち帰ったさまざまな文献の中の”FACING REALITY”という論文集の中に書いてありました。1992年5月の出版です。
僕が見つけた論文の執筆者はドン・ハンコックさん。前回もご紹介したサウスウェスト・リサーチ・アンド・インフォメーション・センター(SRIC)の中心的研究者で、今回もいろいろと教えてくださった方です。
そのロンさんが「放射性廃棄物の貯蔵と処分」という一文を書いているのですが、この中でこんな記述が出てきます。


FACING REALITY 1992 May

「第二次世界大戦のマンハッタン計画以降、核兵器複合体は何百万立法フィート、あるいは一億キューリーを上回る放射性廃棄物を生み出してきた。
しかし当初の数十年の間、核兵器製造においては、核産業が安易に核のゴミを捨てていることに思慮に欠けた態度をとり続けたことが際立っている。
廃棄された核のゴミの種類も量も記録されず、捨てた場所が地図に示されることもまれだった」


ドンさんの論文の冒頭部分

論文の中にはプルトニウムが生産されてきたワシントン州のハンフォードで、放射能のゴミが箱に詰められて、浅い溝のようなところに放り込まれていた写真が添えられていました。
しかも1980年代半ばまでです。 この他に、核のゴミが川の中に放り込まれたり、石油などの採掘のために掘った「インジェクションウェル」という井戸にも放り込まれたことなどが記されています。
何せその中身が具体的に記録されていないのですから想像を絶します。


ハンフォードで浅い溝に捨てられていた核のゴミ 1980年代中ごろまで

● 世界のヒバクシャの連帯を強めたい!

核兵器製造を始めた国、アメリカは同時に核被害大国です。
アメリカ政府は広島・長崎での投下や南太平洋での核実験でたくさんのヒバクシャを生み出しただけでなく、いまなお現在進行形でアメリカ住民を被曝させ続けています。
この実態をより深くつかみ、世界に紹介する中で、アメリカに住まう人々の内側から核兵器や核エネルギーの廃絶に向かうムーブメントが強まることを望みたい。

いやすでにその道を逞しく歩んでいるアメリカ先住民族やダウンウィンダーズ、そしてドンさんのように核廃棄物と格闘している人々の奮闘に学び、連帯を強め、それを日本および世界の民衆運動ともっとつながていきたい。


アラゴモードで出会った女性。トリニティサイトで被曝してガンで亡くなった家族の写真一覧を貼りだしていた

そのために僕は10月末から11月にも再度、アメリカを訪れます。
今回はワシントン州ハンフォードにも行きます。長崎に落とされた原爆のプルトニウムを製造したところであり、たくさんの核のゴミを生み出し、深刻な汚染ももたらしてきたところです。


ハンフォード地図 「よくわかる原子力 キッズページより」
http://www.nuketext.org/kids/NWtests/NWtest4.html

その後にまたニューメキシコにも訪れます。 このために今後も今回持ち帰った文献を読み込んでいきますが、7月の訪問記についてはとりあえず今回の投稿で締めとしようと思います。 世界のヒバクシャの連帯で核と戦争のない未来を実現するためにさらに歩みます!

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明日、25日(日)に綾部・舞鶴・宮津でニューメキシコ訪問報告を行います! 詳しくは明日に向けて(1726)をご覧ください。

また今回の取材の旅に際し、かつまた10月末から11月の新たなるアメリカ・核の取材の旅に向けて、皆さんにカンパのご協力を訴えています。
よろしければぜひお願いします。核の時代を終わらせるための活動へのご支援としてお願いできると嬉しいです!

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