守田です(20190818 23:00)

● 地下施設を見学して

WIPPは事故原因の解明と除染作業の実行を重ねて復旧を急ぎ、2017年1月より地下への汚染物質の搬入を再開、4月に再び全米各地からの受け入れを開始しましたが、地下施設の多くの部分が除染しきれず封鎖処理で対処しています。
ここに見学に行くことになっていたのでガイガーカウンターなどを用意しましたが、現場につくと「一切の電子機器は携行を認めていない」と言われました。もちろん写真もダメ。録音すらもダメ。
また2人の武装警官が同行しました。大きな銃を下げていましたが、私たちを守っていてくれたのかなあ、施設を私たちから守っていたのかなあ・・・。二人とも目が合うとニコッとしてくれましたが。


WIPP構内。ウェブより。カメラは持ち込めず自分では撮影できない。

そんな状態で地下650mまで潜り、カートに乗って中を周りました。実は僕は岩塩でできた核廃棄物施設に入るのは2度目でした。2017年にドイツでアッセ2という塩の鉱山を見学したのでした。
もっともアッセ2はもともと本当に塩を採掘していたところで、その後に核廃棄物処分場にされたところでした。塩をくりぬいた部屋にドラム缶に入れた低レベル廃棄物がぼんぼんと捨てていたのですが、地元の強い反対運動があって止まりました。
その後、長らく放置されていたのですが、最近になってドイツ政府が調査したところ、地下水が構内に入り込み、廃棄物を侵食し始めていることが分かって大問題になったのです。ドイツ政府は廃棄物を掘り出し、どこか別の処分場に移す計画を立てています。


ドイツのASSEⅡを見学 写真撮影や録音も自由(2017年7月25日)

この経験があってので率直に思ったのは「ここも水が入ることがありうるのではないか」ということでした。アメリカ政府はこの岩塩層は2億5千万年もかかって形成されたところだから大丈夫だというのですが、しかしそのことが未来を保障するわけではない。
この見学の前後に、ニューメキシコで長く核問題と格闘してきたサウスウェストリサーチアンドインフォメーションセンター(SRIC)=南西研究情報センターのドン・ハンコックさんにお話を聞きましたが、ドンさんも「そうだよね~」と言う。
「アメリカとドイツだけなんだよ。岩塩は大丈夫なんて言うのは」とドンさん。しかしドイツはもう岩塩層がダメな現実に行きついているのです。


Southwest resarch and infomation centerのドン・ハンコックさん。
左は著名なロック・ギタリストのボニー・レイットさん。SRICや反核運動を支持している
SRICのHPより

● そもそも人殺しの核から始まった施設が信用できるだろうか

わずか15年の運営のうちに火災が起きて、しかもそれへの対策が怠っていたり、コンテナにプルトニウム汚染物と一緒に入れられたものが化合して爆発してしまったこともある施設が、「プルトニウムを安定的に保管できる」と言ってもとても信用できません。
いやそもそもこの施設は核兵器製造の一環を担っているわけです。しかしその核兵器を作り、広島・長崎で落とした人々は、被曝被害を非常に少なくカウントし、その後も核実験を繰り返し、ものすごくたくさんの人々を被ばくさせたのです。
アメリカでもトリニティサイトで極秘で実験を行い、さらに1953年以降、ネバタ砂漠で100回も核実験を行い、広範な住民を被曝させました。ウランの発掘時だって、その後だってすごい被害をもたらしている。

1951年から62年までのネバタ核実験による放射能拡散図    
アメリカエネルギー省の記録から研究者のリチャード・ミラー氏が作成 
「風下の民」の活動で配られている

その体系の中から出された放射性廃棄物だけが、人々の命や環境に配慮してしっかり処理がなされるとはとても思えません。
いやむしろ核兵器を持つとはまさにこういうことなのだと思わざるを得ませんでした。
ちゃんとした処理などできない廃棄物をたくさん作りだしてしまった上で、「絶対に安全だ」とうそぶいて安易な処理を始める。それで事故を起こす。それそのものが核兵器を所持してきたことなのだと僕には思えました。

ネバダの1958年の核実験で妊娠中に被ばくしたダイアナ・リー・ウーズリ―さんと娘のラベリー・シダ―さん。
シダ―さんはガンを患って生まれきて生後6か月で手術を受けた。ロスアラモスの核博物館に展示された市民サイドのパネルより

そう考えているうちにもう少し大きな問題に突き当たりました。 WIPPの運用が始まったのは1999年。だとしたらそれまでの50年以上の間、どうしていたのだろうかということです。 この点を調べてより深刻で驚くべき事態が見えてきました・・・。


WIPPのロゴ。1999年以前は核廃棄物はどこに?

続く

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