守田です(20190301 23:30)

前回、樋口英明さんが2月23日に大津市で行った講演の要旨をお伝えしました。続いてその後に行われた囲む会でお聞きしたことを報告します。
なおこの回は僕がコーディネーターを務めさせていただきましたが、素晴らしい時間を過ごすことができて役得でした・・・。主催者のみなさまに感謝します。

樋口英明さんを囲む会の一幕。コーディネーターとして横に座りました。宮嵜やゆみさん撮影

● 原発の耐震性は検討はずれの「強振動予測」の上に立っていてあまりに低すぎる!

樋口さんが強調されたのは原発の耐震性があまりに低いことです。具体的に示すために『世界』に掲載の樋口論文に添えられた表を添付します。

これを観ると福島第一の1~6号機は建設当初は270ガルが基準地震動となっていたことが分かります。
この基準地震動は二つの要素で成り立ちます。一つにその場には270ガルを超える地震は来ない!と考えられていること。もう一つは当該の原発はその270ガルまでなら耐えられるということです。
ここには建設当時の「強振動予測」、つまりそのころの地震学の知見が反映されていました。

ところがこのころは地震の揺れを正確に測る技術が高くなかった。1995年以降にようやくあちこちの揺れが正確に測られるようになり地震ごとのガル数が測られだしました。
それで分かったことは「強振動予測」という学問がまったく検討はずれだったということだったのでした!
原発建設当時は270ガルの地震など滅多にこないと思われていて、だからそれを基準地震動にしたわけです。ところが実測してみたら270ガルとか400ガルでは話にならなかった。「強振動予測」はまったく検討はずれの学問だったのです。

このために耐震性を強める策がそれぞれの原発に施され、福島原発1~6号基は東日本大震災時には270ガルから大幅に引き上げられて600ガルとなっていましたが、数値は2倍以上になっているのに抜本的に設計を改めた、建て直したわけではない。
主要なパイプを太くすることもできず、パイプの支えなどを増やしたぐらいなのです。樋口さんは「そんなもの、初めからやっておけというんです」と喝破されました。
つまり後からかさ上げされた耐震性にも信用性がない。いやかさ上げしてもその数値そのものが低すぎるのですが、なおかつそこまでは耐えられるという信用すらないのです。

同じく囲む会の一幕。福山和人さん撮影。良い笑顔を撮っていただけました

● 原発は普通の地震でも壊れる!巨大地震ばかり考えていてはダメ!

これを踏まえて樋口さんが強調したのは、恐ろしいことに700ガルという地震が、マグニチュード5のものでも記録されていることでした。
ちなみにガルはその場の揺れの大きさでマグニチュードは震源地における地震のエネルギーの大きさです。マグニチュードが大きくても日本列島から十分に離れていれば各地での揺れは小さくなります。
反対に言えば、マグニチュードが小さくても震源地が浅ければ大きな揺れが震源地の近くでは生じるわけです。

それで樋口さんはマグニチュード5以上の地震が、2000年以降、幾つあったのか数えてみようと思ったそうですが、多すぎて数えきれなかったそうです。
ある1年間だけを数えてみたら75回もあった。ここから単純計算すると20年では1500回になる。つまり大雑把にみてもそんなにたくさんの地震が列島を襲い続けているわけです。
この地震の震源地が浅いところにあったら700ガルぐらいの揺れは簡単に起きて、多くの原発の設計基準動を越えてしまいます。

樋口さんはこう言いました。
「脱原発の人は良く言うのです。『巨大地震が来たらどうするの。中央構造線が動いたらどうなるの。東南海地震が来たらどうなるの』。でも巨大地震が来たらダメなのは当たり前。私は巨大地震よりも小さい普通の地震のことを心配しているのです。
マグニチュード5とか6とか日本では普通の地震ですよ。これでいかれちゃう。そこから考えれば「巨大地震と原発の危険性」という問題設定は正しいと言えるのでしょうか。むしろ間違っているのではないか」。

多くの人々は311前までははこんな事実を知らずに原発は極めて高度な安全性を持っていると思っていました。311以降は「あんな事故があったのだからそれなりの安全策がとられているのではないか」と思っている。
他の日本の技術では、ひどい事故が起きたらそれに対応してそういう事故が起こらないようにしているからですが、しかし原発はまったくそうではないのです。
しかも原発は被害規模が甚大です。その上、これまで述べてきたように事故発生率も極めて高いのです。だから樋口さんは原発を止めたのだと語られました。

樋口さんの主張が鮮やかに図示された広島企画(4月20日)のチラシ

続く