守田です(20181002  22:00)

● 二度の故障事故を起こした高浜原発4号機が9月28日にひっそりと本格再稼働へ

北海道胆振東部地震や相次ぐ台風の襲来など、自然災害が猛威を振るい、これと連動しつつ北海道のブラックアウトや関西空港の閉鎖、各地での広域停電など、災害対策の不備も繰り返し表面化しています。
そんな中なのに関西電力は高浜原発4号機を9月28日より本格稼働させました。まるで他のニュースに人々が釘付けになっているときにひっそりと動かしたような感があります。マスコミもほとんど報道していません。
これで現在、営業運転中の原発は川内1、2号機、玄海3、4号機、大飯3、4号機、高浜4号機の合計7基となりました。
しかしこれらの原発の過半が再稼働を前にさまざまなトラブルを起こし続けています。

高浜4号機は8月に再稼働を目前にして故障事故を起こし、同月末稼働の予定が一月も伸びました。8月20日に再稼働に向けて「最終ヒートアップ(昇温、昇圧)を行っている時に、原子炉容器上蓋の温度計引出管接続部から蒸気漏れを起こしたのです。
実は4号機はその前日の19日にも「タービン動補助給水ポンプ」の制御油が漏れ出すという故障事故を起こしていました。
どうして故障が起こったのか。関電は前者については当該箇所にパッキンを組み込む際に微細な異物を混入させてしまい、そこから蒸気が漏れたと説明しています。
後者については制御油の流れる配管とホースの接続部の袋ナットを絞め過ぎてパッキンを痛めてしまい、そこから油を漏らしてしまったと説明しています。

● 関電が漏れた油の量を10分の1に発表。なんとそれが今日まで正されていない!

さて今回の記事で問題にしたいのは、この故障事故、とくに後者の油漏れの発表において関電が大きな間違いをおかし、しかもいまなおそれが訂正されていないことです。具体的には以下の点です。

「高浜発電所4号機は、第21回定期検査中のところ、本日8時11分に「タービン動補助給水ポンプ*1制御油圧低」警報が発信しました。
直ちに現場の状況を確認したところ、床面に約1m×約1m×約2cmの油(約2リットル)が漏れていることを確認したことから、制御油ポンプを停止しました。」
http://www.kepco.co.jp/corporate/notice/20180819_1.html

何が間違いなのかというと約1m×約1m×約2cmの油なら約20リットルのはずなのに、約2リットルと書かれていることです。漏れた量を10分の1にしてしまっているのです。
当然、故障したのだから原因を突き止め、直さなければならないわけですが、この説明図でも関電はやはり漏れたのは2リットルという記述を続けており、今日もホーム―ページに記載したままです。
(図の真ん中の漏えい個所を示した部分に黄色で漏れた油が示してあり2リットルと記載されている)

図-4 タービン動補助給水ポンプの運転上の制限の逸脱
2018年8月30日 関西電力株式会社
http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2018/pdf/0830_1j_05.pdf

これで本当にきちんと故障に対処できたのでしょうか?20リットルのものを2リットルとかなり少なく記述し、しかもそれにずっと気が付かないのはあまりの杜撰さではないでしょうか。
ここには各地の原発で再稼働の度にトラブルが起きることが常態化している中で、現場が弛緩してしまっていることが現れています。このこと自身が大変危険です。

● マスコミもこの誤りに気が付かなかった

もう一つ、深刻な問題があります。電力会社が再稼働の度にこうしたトラブルを繰り返しているのに、それをウォッチするべき側のマスコミも誰もこの誤りに気が付かなかったことです。
そもそもこの間、電力会社はこうした故障事故が起きうることを前提に再稼働を強行しています。
その証拠の一つに挙げられるのが本年3月に玄海原発3号機再稼働時の故障を前に瓜生九電社長(当時)が「7年間止めていたため『何が起こるか分からない』と言っていたが、現実になってしまい、非常に残念だ」とあけすけに述べてしまったことです。

電力会社はまるで博打をうつかのように、何かが起きうることを承知で再稼働を強行しているのです。事実、この間、再稼働させた原子炉9基のうち5基で9回も故障事故を起こしています。
いやそれだけではなくて高浜原発サイトでは強風時にクレーンをたたまなかったため、クレーンが風で折れてしまい、2号機の原子炉補助建屋と核燃料取扱建屋の上に倒壊するという危険きわまりない事故すら起こしています。
だからこそマスメディアが、いやジャーナリスト総体が、この危険で無謀な試みを厳しくウォッチし続けることが大事なのです。それが人々の命を守ることにつながるのです。
しかしどの社も気が付かず、関電の発表を鵜呑みに転載したたままなのですが、何もそれはマスメディアだけではありません。恥ずかしながら僕もその一人だったのでした。このとき僕は以下の記事を書きました。

明日に向けて(1568)高浜原発4号機から一次冷却水が蒸気となって漏えい!またも再稼働目前で故障が起こった
2018年8月22日
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/3bf2d07793078077648a4a29086fb3c3

このとき僕は検算を怠りました。関電の数値発表に持つべき疑いを持たなかったのです。だから誤記をそのまま転載してしまいました。みなさんに申し訳ないです。お詫びして訂正します。
こんなことではいけない!もっと関電に厳しい目を向け続けなければいけない。そのためにもなんでも一度は疑ってみる観点、鵜呑みにしない観点こそが最も大事な点であることを、再度、僕は僕自身にも突きつけようと思います。

なおこの点を僕に指摘してくださったのは、「時間泥棒」仕置人さんです。
ブログ「分かりやすさが第一」に掲載の記事、「1m×1m×2cmは、何リットル?」に書かれています。
http://laweditor.blog.fc2.com/blog-entry-327.html

「時間泥棒」仕置人さんは、この間、僕のブログに図表や小見出しを入れて読みやすくする提案をしてくださっているのですが、今回はジャーナリズムの原点に関わる大切なご指摘していただけました。
この場を借りて心の底から感謝を申し上げます。

● 杜撰な再稼働にジャーナリストはもっと真剣に目を光らせるべきだ!

そうなのです。原発は一度間違えば瞬時に膨大な人々を悲惨な状態に追い込む恐ろしい装置なのです。実際に福島原発事故はたくさんの人に塗炭の苦しみを強制し続けています。しかも今後、それを上回る事態だってありえます。
だから私たちは電力会社に厳しい目を向け続けなければなりません。常に自らを鍛えながら!

最後に関西電力に、ただちに誤りを訂正することとともに、こんなデタラメな発表を放置し続けてきたことへの謝罪を求めます。
故障事故を前提にした原発の稼働をただちにやめてください!