守田です(20180616 23:00 0618 21:00修正)

この14日に京都市内で「3.11後の放射能汚染水問題を考えよう」というタイトルでお話してきました。
この講演は、僕が2016年夏にコープ自然派さん主催の講演会で語った「毎日400トンの汚染水が出ている」という内容を自然派さんがカタログに掲載したことに対し、水産庁から削除要請がなされたことを受けたものでした。
水産庁は「事実と違うので危険だと風評被害をあおる」とも指摘してきました。
以降、詳しく調べて判明したのは一つには膨大な放射能汚染水の海への流出事態は2015年10月に海側遮水壁を作ったことで止まったとされていることでした。その点では僕にミスがありました。

しかしそれで「風評被害を煽る」ことになったかと言えば、そんなことはまったくありません。
そもそも「風評被害」とは「まったく安全なものが危ない」と間違って言われることを指します。しかし福島原発の沖合には事故後少なくとも2015年10月まで膨大な放射能汚染水が流れ込んでしまったのです。
水産庁はこの点についてもっときちんと人々に注意喚起すべきなのに何もしていない。海も水産業も、まったく守ろうとしていない。

このあまりのおかしさを事故当時に立ち戻って考察してみて新たにいろいろなことに気づきました。とくにあらためて汚染を野放しにしてきた東電のひどさが見えてきました。
今回からこの点を―怒りを込めて―連載したいと思います。

まず初めに、現状で海への放射能汚染水の流入が本当に止まっているのかについて明らかにしたいと思います。
答えはNoです。今も幾つかのルートで汚染水が流れ込み続けている。この点をみていきましょう。

まず2015年10月に完全に閉合したとされている海側遮水壁はこのようなものです。
http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/seasidewall/index-j.html

これで汚染水の海への流入をブロックしているというのですが、実は建屋の周りと遮水壁のすぐ前に井戸を掘り、地下水をくみ上げてセシウムやストロンチウムなどの除去を行ったものを自ら海に放出しているのです。

サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ
http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/sub-drain/index-j.html

同じようなことを山側でも行っています。

地下水バイパス
http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/groundwater/index-j.html

その際、サブドレイン・地下水ドレンにおいては、セシウム134と137については1Bq/L、全β核種については3Bq/L、トリチウムについては1500Bq/L以下であれば流してよいとしています。
同じく地下水バイパスについてはセシウム134と137については1Bq/L、全β核種については5Bq/L、トリチウムについては1500Bq/L以下は流してよいとしています。

さらに原発敷地内を雨などの影響で流れる「表層水」については何らの対処もされていません。構内はかなり汚染されているのにそこを流れる水は止められていない。
それらから、いまも毎日放射能汚染水が海に流れ込んでいることは確実です。

しかも東電は放出にあたって「濃度規制」を用いています。この放出に限った話ではないのですが、本来は総量規制を行わなくてはいけないのにです。
なぜかと言えば「1500Bq/L」が1リットル海に入るのと1トン入るのでは1000倍違う。100トンだったら10万倍、1万トンだったら1000万倍違うからです。

ではどれぐらいの量がこれまで捨てられたのかというと、サブドレイン・地下水ドレンから汲み上げた汚染水については本年6月15日までに累計で724回、544,907トンの放出を行ったとしています。
http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/sub-drain/calendar/index-j.html

地下水の側では同じく6月15日までに累計225回、384,553トンの放出がなされたとしています。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/info/baypassold-j.html

そうなるとこのシステムができて以来のトリチウムの海への排出量は(544,907+384,553)×1,000×1,500ですから1,394,190,000,000ベクレル(上限値、以下同じ)になります。1兆3,941億9,000万ベクレルです。すでに約1.4兆ベクレルが流されてしまっている。
同じように計算するとセシウムは134と137あわせて約18,6億ベクレル。全β核種は約35,6億ベクレルが流されてしまっています。
これに表層水が加わっているのですから、海側遮水壁が効果をあげていてもなお海への汚染水の流入が続いていることは明らかなのです。

続く