守田です(20180617 23:30)

経済産業省資源エネルギー庁が政府が提出した「第5次エネルギー計画(案)」へのパブリックコメントを募集していました。
もっと早くお知らせできなくてごめんなさいですが、応募は今日17日24時まででした。
僕もついさっき思い出して駆け込みでコメントを作成しぎりぎりで送信しました。以下のものへの意見です。

第5次エネルギー基本計画(案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000173982

このうち特に原子力政策に対して特にコメントしました。
「第2章2030年に向けた基本的な方針と政策対応」中の「第2節2030年に向けた政策対応」の「4、原子力政策の再構築」に対してです。

結論的に「全面的に反対です」とコメントしたのですが、時間の制約もある中でできるだけ簡潔に要点だけをと考える中で、原発に反対する観点を再度整理できたように思います。
「危険であるとともに未来世代への暴力であるから」が僕の反対の理由です。ただコメントでは「危険」のうち事故だけでなく作業被曝の問題が書けませんでした。この記事を書く段階で大小の事故時の点検のところに一言加えておきました。コメントに入

れられなかったのは残念だな・・・。
ともあれぎりぎりで発信したコメントをご紹介しておきます。

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第5次エネルギー基本計画策定に向けた意見

「第2章2030年に向けた基本的な方針と政策対応」中の「第2節2030年に向けた政策対応」の「4、原子力政策の再構築」に全面的に反対です。

まず第一に「(1)原子力政策の出発点―東京電力福島第一原子力発電所事故の真摯な反省」の中に「様々な経験を教訓として、このような事故を二度と起こさないように努力を続けなければならない」とありますが、そのためには福島原発事故をきちんと教訓化する必要があります。
ところが福島第一原発は依然、炉心溶融によって原子炉下部に溶け落ちた核燃料デブリの発する放射線値があまりに高く、人が近づけない状態です。ロボットも繰り返し投入されましたがすべて途中で故障してしまいました。
このため、あのとき事故がどのように進展したのか、どこがどのように壊れ放射能が飛び出したのか、いまだ多くのことがつかめていません。教訓化するにもまだ事態がつかめてないのです。
この点を踏まえて、福島原発事故のことが真に把握できてはおらず、あのような事故を二度と起こさないだけの教訓をつかみとれてはいないのですから、いますぐ原子力政策を停止すべきです。

第二に「(3)原子力利用における不断の安全性向上と安定的な事業環境の確立」とうたわれ、冒頭に「低廉かつ安定的な電力供給」が求められているがゆえに「原子力の利用を進めていく」とされていますが、そもそも原子力は「低廉かつ安定的な電力供給」ではないばかりか、天文学的な費用が背後に隠されたものであり、しかもそのほとんどを未来世代に押し付ける非倫理的なものなのでやめるべきです。
原子力が「低廉」とされるのは、使用済み核燃料の処理費を計上していないからです。そもそも核分裂によってもとの1億倍もの放射能量になった核燃料は1~10万年も管理しなければならないものとされているのにその予算が計上されていません。これを「低廉」というのはあまりに詐欺的です。

この費用は電力の供給をまったく受けない未来世代が支払うことになります。しかも何万年間もなのです。こうなるともはや費用の問題というより未来世代への暴力です。この点から原子力政策をただちにやめるべきです。
また原子力は「安定的」だなどとはとても言えません。常に大小の事故を繰り返し止まってきたからです。これは原子力の危険性ともつらなっている問題です。危険性があまりに大きいからこそトラブルがあった場合にすぐに止めて点検しなければならない

のであって、その点で原発はあまりに不安定な電力供給源でもあります。しかもこうした作業のたびに被曝労働を強いる点でも危険です。これらから原子力は「低廉かつ安定的な電力供給」源ではまったくないのでやめるべきです。

第三に同じように「(4)対策を将来へ先送りせず、着実に進める取り組み」とあるのも事実をあまりに捻じ曲げた記述です。高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けて「廃棄物を発生させた現世代の責任として将来世代に負担を先送りしないよう」とうたっていますが、そもそもすでに膨大な廃棄物が何万年にもわたって管理を必要としています。これだけでも責任が重いのに、これ以上、放射性廃棄物を発生させて良いわけがありません。未来世代のことを考えるのなら、まずはこれ以上、新たな放射性廃棄物

を少しも発生させないことが肝心です。そもそもその処理や管理の仕方も決まってないものをこれ以上増やして良いわけがありません。

同時に「廃棄物を発生させた現世代の責任」という言い方も暴力的です。原子力政策のはじまりから今日まで、一貫して多くの人々が原子力政策を「トイレなきマンション」と批判してきました。原子力政策が未来世代に大きなつけをまわすことを批判し、

だからただちにやめるべきだと提言し続けてきたのです。ところが歴代政府や原子力政策の推進者たちはこれを無視し、国民・住民に原子力政策が未来世代に膨大なつけをもたらすことを明記しないままにこのエネルギーが「低廉」だなどとうそをついて原子力政策を進めてきたのであって、責任はそれらの人々にこそあります。
いや現にこの基本計画の中ですら廃棄物の処理の面では「現世代の将来世代への責任」などといいつつ、一方でこのエネルギーを「低廉」と表現しています。「低廉」ならなんでそれが将来世代につけをまわすものになるのでしょうか。もういい加減にこのように詐欺的な大うそを繰り返すことをやめるべきです。

以上から原子力政策は再構築するのではなく、全面的廃炉へと転換すべきことを訴えます。