守田です(20180404 16:00)

玄海原発3号機故障事故に関する続報です。

前回お伝えしたように、玄海原発3号機の故障事故に際して、九州電力の瓜生社長はこう述べました。
「(運転を)7年間止めていたため『何が起こるか分からない』と言っていたが、現実になってしまい、非常に残念だ」・・・。
これは大変な発言です。原発の構造的危険性を端的に表すとともに、電力会社がそれを明確に認識しつつ、再稼働を強行していることをあけすけに語ったのだからです。

「何が起こるか分からない」のに原発を再稼働させて良いはずはありません。
この重要なポイントをけしてスル―させてはなりません。
原発に反対する各地の運動でこの点を取り上げ、十分な点検ができない原発の危険性を明らかにしていきましょう。

さらにその後、今回の腐食による故障がこれまた大きな判断ミスによって起きしまったことが明らかになりつつあります。
というのはこの配管は1994年の運転開始より一度も交換されていませんでした。
前回の点検が12年前の2006年に行われましたが、その時点で配管の寿命はあと47年と判断されていたといいます。
実際には2018年に腐食してしまったわけですから点検時の判断より35年も寿命が短かったことになります。

これらの事実から今回、この配管が再稼働の前に点検されていなかったことも浮き彫りになっています。
まだ35年の寿命があるとされていたため、点検項目に入っていなかったのでしょう。
そうなると問題は同じ構造の原発でも起こっている可能性があります。
実際、九州電力は玄海原発4号機でも同じ個所の点検を行うほか、川内原発1号機2号機でも点検を行うことを発表しています。この点を報じているニュース動画をご紹介しておきます。

蒸気漏れ 雨水で腐食~4号機も配管点検へ
RKB News 福岡・佐賀発のエリアニュース  4月3日(火) 19時32分
http://rkb.jp/news/news/42391/

九州電力管内の原発全てを見直すというのならば、同じ加圧水型原子炉を使っている伊方、高浜、大飯原発はどうなのでしょうか。
基本設計は同じはずですから同じ不具合を抱えている可能性があります。

またより深刻なことは「47年間の寿命」と判断していたパイプがたった12年しか持たなかったことは、原発の各部品の耐久性に大きな疑義があることを突き出してもいることです。
しか今回もこのパイプの点検が事前になされていなかったように、再稼働を前にしてとてもではないけれどもすべての安全点検などできていないことは明らかなのです。
「何が起こるか分からない」と社長自らが言ってしまうなのですから、もう本当に、動かしてはいけないのです。
日本の原発の多くがもう長く停めていたものばかりですから、より稼働させることは危険なのです。

実はこの点は僕は2015年に「原発ゼロ状態」を破って、川内原発の再稼働が強行される前から「明日に向けて」で論じていました。
正確には繰り返しこうした警鐘を鳴らしてきた元東芝の格納容器設計者・後藤政志さんに学びながらでした。
その後藤さんと川内原発再稼働前に行った対談を再度ご紹介しますのでぜひご覧になって欲しいと思います。

福島原発事故からつかむべきこと
2015年8月14日 後藤政志&守田敏也 対談 東京品川にて
https://www.youtube.com/watch?v=TKJNkgNOgaI&feature=youtu.be

この13分あたりから再稼働問題が語られているのですが、僕はここで「ブルームバーク」に掲載された記事を紹介しています。「4年間停止した原発の再稼働は世界に14例しかなくそのすべてでトラブルが起こっている」という内容です。
これに応えて後藤さんは以下のように述べてくださいました。(文字起こしをした記事も紹介しておきます)

後藤
当然ですけれども、そもそも停まっているプラントを立ち上げるということ自身が、ある種のトライなのです。ものが壊れている可能性もあるし、ミスってバルブを開け忘れている可能性もある。
スリーマイル島事故などはそうですからね。点検の時に給水ポンプのバルブを開け忘れたのです。それで立ち上げてしまって事故が起こってしまった。そういうリスクもあります。だから立ち上げるときはそれなりの緊張感があるのです。
さらに今、おっしゃったように4年も停まっていると、結構、長いので、プラントの水が溜まっているところ、つまり水が普段、流れているところと溜まっているところがあって、場所によっては腐食環境になりやすい。
そこで4年も淀んだまま腐食が進んでいることがないとは言えません。そうするとそれをきちんと検査をしたのかということになります。
建前は検査をやることになっているのだけれど、実際にはすべてが検査にかかるとは限らない。実際には欠陥とかあったときに運転してみて、「ボン」となって慌てて欠陥が分かるということもあるのです。
美浜の3号機で昔、タービンのところの配管が切れたのがそうです。厚さ10ミリのものが1.4ミリまで減っていた。そこに流れが当たってぐっと力が生じたときに破裂したわけです。
普通は「10ミリあるものが2ミリ以下に減ってくるまで気が付かないことがあるのか」と思いますよね。でも現実にはそういうことがある。管理が間違っているということなのです。
物事を「建前としてこうあるはずだ」と考えていると事故というのは分からない。事故と言うのはそういう形で起こるのです。そういう潜在的な欠陥が生じやすいのが4年です、ということになります。

明日に向けて(1124)川内原発再稼働の危険性と「過酷事故」の曖昧化の問題(後藤&守田対談よりー2)
2015年08月19日
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/6e90c7394a36315234d435aeb267da78

この後に、後藤さんが語られていたように、再稼働した川内原発の冷却水系統の中の「復水器」でパイプに穴があく故障事故がおこったのでした。
繰り返し述べているように玄海原発3号機で起こったのも雨水による腐食でパイプに穴が空いてしまった故障事故でした。
これらを考えると、2011年以降にどれもがひとたびは長く停まっていた日本の原発の再稼働にこれまで以上のリスクが生じていることが分かります。
なにせ電力会社の社長が「何が起こるか分からない」と本音を語ってしまうほどなのですから。

以上より、一刻も早く動いている原発を停めなくてはならないこと、かつもう動かしてはならないことは明らかです。
この点を各地でより声を大にして訴えていきましょう!

京都での反原発を明確に掲げた福山和人候補を推し立てた府知事選にもぜひ全国からの応援をお願いします!