守田です(20180401 23:30)

一昨日30日に再稼働したばかりの玄海原発3号機で二次系配管からの水蒸気漏れが起こりました。
九電は問題個所に蒸気を送っていては点検できないので、二次系へ蒸気を送るのを止め、発送電を停めて調査していますが、現段階で配管に直径1センチの穴が空いているのが確認されたとしています。
NHKの報道をご紹介します。

玄海原発3号機 蒸気漏れの配管に直径1センチほどの穴
NHK 4月1日 19時14分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180401/k10011387601000.html

これは非常に大きな問題です。なぜなら前回の記事でもご紹介したように、今回故障を起こした脱気器の近くの配管でかつて深刻な破断事故が生じているからです。
問題が起こったのは美浜原発3号機。2004年8月9日のことでした。この原発も玄海原発と同じく三菱重工製の加圧水型原子炉を使っています。
原因は10センチの肉厚をもたせるように設計されていた配管が、1.6センチまで摩耗し、蒸気の圧力に耐えられなくなったことにありましたが、なんと配管は1976年の運転開始時から交換がなされず、点検もおろそかでした。
この時は定期点検のために建屋内にいた作業員11名が140度の蒸気に襲われ、4名が体中の水分を失って即死、後にさらに1名が亡くなり、残りの方も重傷を負うという悲惨な事態になりました。

今回の事故は美浜3号機で破断した配管と同じ場所ではなく、そこに組み込まれた脱気器の中の配管ですが、それでも問題なのは、美浜で大事故が起きた経験がありながら、1センチもの穴が空いていたことがつかまれていなかったことです。
このことが示すのは原発が100%の点検などなしに再稼働されているという事実です。いや正確にはそもそもすべてを点検して再稼働することそのものができないのです。だからこうした故障事故が起こることを前提に動かしているのだということです。
それを雄弁に物語っているのが、2013年9月から2015年8月までの約2年間の原発稼働ゼロ期間を経て再稼働した原子炉の多くが、直後に何らかのトラブルを起こしていることです。これらを少し振り返ってみましょう。

川内原発1号機のトラブル
最初にトラブルを発生させたのはこの2015年8月11日に再稼働を強行した川内原発1号機でした。この時は稼働からわずか10日後に復水器内の配管にピンホールがあき、二次系に海水が混入しました。
今回もこれらを今回の玄海原発3号機の故障事故に際して九電が出した図を参考にしていただきながら説明したいと思います。

玄海原子力発電所3号機概略系統図
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0125/2053/bti4y7z3.pdf

この図では1次冷却水を桃色に、二次冷却水を青色に、三次冷却水(海水)を緑色に塗り分けています。
復水器は青色の二次系冷却水と緑色の海水が接するところにあります。二次系冷却水は蒸気になっていますので、ここで配管と接して温度が下げられて水に戻ります。
だから「復水器」と呼ばれるのですが、この時はこの配管に穴があいてしまったのです。

ただしこれは二度目の不具合でした。というのは再稼働に向けて原子炉以外の機器を立ち上げた直後の7日にも、原子炉冷却水ポンプの軸の振動を測定している計測器の数値が異常に低下するトラブルがあったからでした。
この時は点検によって計測器に不具合があったことが分かり、交換されましたが、これも重大な事態でした。原子炉の内側はとても目視できるようなものではないので、状態はすべて計測器によって把握されているからです。
この二度にわたるトラブルの発生にも関わらず、この時、九電は運転を続行しました。続行しながら復水器の修理を行ったとされています。

高浜原発4号機のトラブル
さてこの後に再稼働が強行されたのが関西電力の高浜原発3号機と4号機でした。2016年1月29日とのことでした。ちなみに兵庫県篠山市における住民への安定ヨウ素剤事前配布はその2日後の31日から始められました。
トラブルを起こしたのは4号機でした。まず再稼働直前の20日に一次冷却水の浄化装置付近から34リットルの放射能汚染水が漏れ出しました。
原因は一次冷却水から「不純物」を取り除く設備につけられていた弁のボルトが緩んでいたためとされましたが、関西電力はスケジュールを延期することなく26日に再稼働を強行しより大きなトラブルを起こしました。

どういうことかと言うと29日の送電開始とともに原子炉が自動停止してしまったのです。非常ブレーキが作動したわけです。この様子は関電が鳴り物入りで宣伝しようと多くのマスコミを制御室内に招いていたため広く報道されました。
原因は発電した電気を送電線に送る部分にある検出器への入力が間違っていたため、異常ではないのに検出器が「危険」を検知し、原子炉を止めてしまったことにありましたが、これまたかなりの重大事態でした。
なぜなら安全装置の数値の入力ミスはそれ自体が致命的だからです。この時は異常でないものを「危険」と検知したわけですが、反対側に入力ミスをしていれば「危険」が検知されないことになるからです。
こうしたことが明らかになる中で、その後、3月9日に大津地方裁判所(山本善彦裁判長)が、高浜3、4号機の運転を認めない仮処分決定を出したため、運転中だった3号機もひとたび停止しました。稼働中の原発の裁判による初めての停止でした。

伊方原発3号機のトラブル
続けてのトラブルを起こしたのは伊方原発3号機でした。同原発は2016年7月26日に再稼働しようとしていましたが、直前の17日に一次冷却水の循環ポンプから水漏れを起こしました。
再び九電の図を見ていただきたいのですが、問題のポンプは桃色で示された一次冷却水の循環の中で蒸気発生器の下部あたりに設置されています。茶色で示されたものです。
原因はこのポンプを稼働させているモーターの軸のシール部分の不具合とされました。モーターの軸は冷却水の流れに対して垂直に差し込まれています。その先にプロペラがあってまわっているためです。
そのモーターの軸部分から150気圧で回っている冷却水の一部があがってきてしまうので、途中に3重のシールドをほどこし、純水をいれているのですが、それが漏れ出してきてしまったのです。

続く