守田です。(20160907 23:30)

またしてもとんでもない決定が原子力規制委員会によって下されました。

原発の廃炉ででる放射性廃棄物のうち、原子炉の炉心に差し込まれる制御棒など、放射能レベルが「極めて高い」廃棄物の処分方針が決められたと言うのですが、なんとなんと国が10万年管理するというのです。
そもそも日本国がこの先10万年の続くのでしょうか?そんなことどうして保障できるのでしょうか。2000年という年月にすら持ちこたえた政府など世界のどこにもないのに。
いやそもそも人類の歴史そのものが数千年のおぼろげな記憶しか残されていません。それらから、10万年、国が管理するなどというのはまったくの暴論です。

もう少し詳しく見ていくと、今回の決定で廃棄物はL1、L2、L3と分けられています。
使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物がL1、原子炉圧力容器の一部などレベルが比較的低い廃棄物がL2、周辺の配管などレベルがもっと低い廃棄物がL3です。
このうちのL1を70メートルより深い地中に埋めた上で、電力会社に300~400年管理させるのだそうです。しかし電力会社が「数万年とするのは現実的ではない」ので、国が管理すると言うのです。

誰もが分かるようにこの決定は突込みどころ満載すぎます。
そもそも電力会社が300~400年持つと言う保障などどこにあるのでしょうか?ほとんど現実性などありません。この会社は電力というテクノロジーのあり方いかんに規定されもする会社なのでもあって、この先、どうなるかなど誰にも見通せません。
その上、もはや滑稽すぎるのは、先にも述べた如く、国家が10万年持つ保障など、電力会社が300~400年持つことよりももっともっと可能性が少ないことです。
どうして原子力規制委員会は、こんなできもしないことを「決定」だとか言って持ちまわることができるのでしょうか。この一点だけでも科学から完全に逸脱していると言わざるを得ません。

ただし私たちはここでこの「決定」の荒唐無稽さを嘲笑してすましていてはなりません。
ここには原発の、あるいは原子力エネルギー体系のきわめて根深い犯罪性が明らかになっているからです。特に重大なのは、ここに私たちの世代による未来世代への重大犯罪が含まれていることです。
なぜならわずか40年、エネルギーを取り出したために、その後に10万年もの管理を強いてしまうからです。しかも強いられる未来世代には、そこからエネルギーを取り出せないばかりか、膨大な年月の管理の手間と、事故の危険性だけが背負わされます。

あまりに酷い。こんなものは未来世代への暴力です。こんなこと、到底許せるものではありません。
ここには現代民主主義の限界が色濃く表れてもいます。なぜならこれらのことが「民主主義」の名のもとに「多数決制度」で決められてきてしまっているからです。しかしこの多数決に未来世代はまったく参加していません。
それで未来世代にとってこれほどに決定的なことを決めてしまっていいのでしょうか。もちろん良いはずなどまったくありません。

私たちがここから確認しなければならないのは、使用済み燃料などの高レベル廃棄物は、10万年も管理しなければならないものであるがゆえにこそ、もはやほんの少しでも増やしてはならないのだということです。
未来世代への倫理にかけて、使用済み燃料を少しでも増やす一切の稼働は許されてはなりません。

同時に私たちは原子力エネルギーが化石燃料に比べて安価だというデタラメも、この決定で完全に終止符が打たれたことを確認すべきです。
何せ廃棄物を10万年も管理しなければならないのです。維持・管理費を考えただけでも天文学的な数字になります。ここから明らかなのは、原発で作られる電気の値段からこの天文学的な数字が隠されてきたことです。

その点からももはや私たちはいかなる意味でも原発の稼働を許してはなりません。採算をとるどころの話ではないからです。
原発の私たちにとっての危険性に加えて、未来世代への放射能の影響と、廃棄物とその管理の押しつけという、二重三重の暴力を停めるためにも、私たちは、世界中の原発の即時廃炉を目指して歩みを強める必要があります。
この声をこそ大きくしていきましょう。
原子力規制委員会の荒唐無稽で無責任極まりないこの「決定」は、私たちにそのことをこそ問いかけている、と僕は思うのです。

なお重要な「決定」なので、朝日新聞の記事を末尾に貼り付けておきます。

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制御棒処分、70m以深 国の管理10万年 規制委方針
朝日新聞 杉本崇 2016年9月1日03時41分
http://digital.asahi.com/articles/ASJ807DWVJ80ULBJ017.html?rm=620

原子力規制委員会は31日、原発の廃炉で出る放射性廃棄物のうち、原子炉の制御棒など放射能レベルが比較的高い廃棄物(L1)の処分の基本方針を決定した。
地震や火山の影響を受けにくい場所で70メートルより深い地中に埋め、電力会社に300~400年間管理させる。その後は国が引きつぎ、10万年間、掘削を制限する。
これで、放射能レベルの高いものから低いものまで放射性廃棄物の処分方針が出そろった。

原発の廃炉で出る放射性廃棄物は、使用済み核燃料から出る放射能レベルが極めて高い高レベル放射性廃棄物と、L1、原子炉圧力容器の一部などレベルが比較的低い廃棄物(L2)、周辺の配管などレベルが極めて低い廃棄物(L3)に大きく分けられる。
埋める深さは放射能レベルによって変わる。高レベル放射性廃棄物は地下300メートルより深くに10万年、L2は地下十数メートル、L3は地下数メートルとの処分方針がすでに決まっていたが、L1は議論が続いていた。
大手電力会社でつくる電気事業連合会は、国内の原発57基が廃炉になれば、L1だけで約8千トンの廃棄物が出ると試算している。

規制委はL1について、コンクリートなどで覆って70メートルより深い岩盤内に少なくとも10万年間は埋める必要があると結論づけた。電力会社が管理する期間については「数万年とするのは現実的でない」として、300~400年間とした。
その後は、国が立ち入りや掘削がされないように対策を取るとした。

処分地はL1~L3とも、電力会社が確保する必要があるが、候補地選びは難航しそうだ。すでに廃炉作業が始まっている日本原子力発電東海原発(茨城県)では、最も放射能レベルの低いL3に限って原発の敷地内に埋めることを今年1月、地元が容認した。
しかし、これが受け入れが決まった全国で唯一の例で、L2やL1の受け入れを容認した自治体はない。
一方、高レベル放射性廃棄物の処分地は、火山や活断層から離れた場所で、運搬しやすいように海岸から20キロ以内が「適性が高い」などとする条件が検討されている。国は年内にも候補となる「科学的有望地」の地図を示す方針だ。(杉本崇)

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