守田です。(20151212 12:00)

今日は『原発からの命の守り方』の出版を祝う会を催していただける日ですが、その前の昨日は篠山市で原子力災害対策検討委員会の緊急会議が招集されて行ってきました。
実は昨日まで篠山市議会が開催中。来年1月から始めようとしている安定ヨウ素剤の事前配布の予算執行に対して、少し前に議員の一部から「待った」がかかり紛糾していたのです。

理由は「市民へのヨウ素剤配布の意義の周知が徹底していない」「もっと時間をかけてやるべき。例えば学校で生徒・児童に対してもっと徹底した説明を行うべきだ」などというもの。
同時に事前配布にはたくさんの医師、薬剤師の関わりが必要であり、それなりの予算が必要なのですが「そんなにかかるとは知らなかった」とも。

これに対して市長・副市長と市役所職員が説明不足を己に問いつつ、説明に次ぐ説明で大奮闘、ようやくのところで賛成多数を得て予算案が委員会を通過(ただし付帯決議付き)、本会議にまわりました。
昨日の私たち検討委員会は、議会で配布方針がひっくり返ってしまう可能性も含めて、市から議会の様子をお聞きすることをメインとしていましたが、事務局を務める市民安全課防災係のみなさんが、やつれながらも安堵していたことが印象的でした。

実はその前にも篠山市医師会からもいったん待ったがかかりました。この時も説明が不十分だった面もあると捉えて、委員会に属する兵庫医大の上紺屋先生や事務局のみなさんがさらなる丁寧な説明を行ってくださいました。
職員の方たちは医師からの高度な医学的質問にたじたじしたりしながらも、説明を繰り返されたそうです。すると医師会のみなさんがようやく理解を示してくださり、ヨウ素剤配布に医学的見地から前向きに協力して下さることになりました。

それもあってこの間。職員の方たちからいろいろと僕にも質問が。
「燃料プールの事故の場合でも放射性ヨウ素は発生しますか?」「甲状腺等価線量50ミリシーベルトというのは、もし放射性ヨウ素だけが飛んできたと仮定して実効線量ではどれぐらいになりますか?」
・・・さてみなさん、これらにすぐに答えをだすことができますでしょうか?

篠山市はこの間、こんなことをあちこちで論議しています。これまで安定ヨウ素剤の説明を行った自治会は206。説明会参加者数は4300人。ちなみに篠山市の人口は約4万人です。
市議会では「それでも足りない」という意見が出てきたわけです。「よーし、それならもっと徹底して説明しますよ!」とか僕は思っちゃいましたね。

医師会や議会から待ったがかかる度にハラハラどきどきで、必死で汗を書いている事務局のみなさんには著しく申し訳ない言い方にはなりますが、僕はこれはこれでとても意義深いことだとも思っています。
なにせ篠山市のあちこちで放射能からの命の守り方について論議しているのだからです。こういうときはどうするんだ、こういうことが考えられてないじゃないかとかやっている。その中で説明が繰り返されている。この過程こそが防災力をあげるのです。

篠山市は小さな行政体でお金があまりない。だから初めからモニタリングポストを建てるだとか、事故通報システムを整備するだとか、そんな高額のハード整備については考えてきませんでした。考えたって買えなくては仕方がないのですから。
その分「人の頭」を啓発することに焦点を絞ってきた。ヨウ素剤配布でも事前の啓発活動に力を入れてきました。それでも足りないという突込みが議会でありましたが、その際の細かい質問にまで事務局の方たちが対応できる。だって勉強してきましたから。

とはいっても最低限の必要なものは買っていただいています。そのひとつに消防団の原発災害時出動用にゴアテックスのカッパを新調したことがあります。1着約1万円を1200着。
もちろん安定ヨウ素剤はいち早く全市民分を購入して備蓄済みだし、ガイガーカウンターなども買いそろえました。消防団では今後、眼を守る曇り止め付きゴークルを揃える予定です。精度のよいマスクも。

昨日の帰りがけに職員の方が言いました。「ヨウ素剤配布。はじめたらすごいことですわ。物理学もやらんならんし、薬事法も調べんならんし、その上、原子力規制庁の指針も読まなあかん。私のようにズブズブの文系にはえらいですわ」
僕が言いました。「僕ももともと文系なんですよ。でもまあそれでもよくここまで来ましたよねえ。気がついたら驚くような高い山に登っていたことになりますよ。ご苦労様です」・・・。本当に心の底から篠山市のみなさんの奮闘に敬意を表したいです。

ヨウ素剤配布の現場にはたくさんの医師、薬剤師が立ち会ってくださることになったのですが、この方たちももともと放射能のことに詳しいわけではありません。今、懸命になって勉強していただいているところです。
こうして篠山市は、放射能問題を学び、理解し、安定ヨウ素剤についてのしっかりした知識を持つ医療関係者や自治体職員の数が増えつつあります。もちろんしっかりした知識を持った市民の数自身も上昇中。大変良いことだと思います。

さらに放射能の問題に限らず、災害全般への市民の対応力を伸ばそうとしているのが私たちの委員会が出している災害対策の「ミソ」です。
僕はこのことは民主主義そのものの促進につながるという確信も最近深めてきています。今日もそのことを結論として発言したいなと思っています。

原発から、放射能から命を守るために、同時に私たちの町、社会を下から作っていく市民的能動性を高めていくために、さらに多くのみなさんと一緒に前に進みたいです。
お近くの方、本日はぜひご参加下さい。

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守田敏也さん「原発からの命の守り方」(海象社)出版を祝う会
https://www.facebook.com/events/178060139201488/