守田です。(20150926 21:00)

前回の続きです。

実はISは2月から「日本を標的にする」という声明を出しています。

「日本が標的に」『イスラム国』機関誌に掲載
テレ朝ニュース 2015/02/13 05:57
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000044392.html

これはISの機関紙〝Dabiq”を扱った記事ですが、ISはここでかなり踏み込んだことを書いています。
以下、日本語訳の一部を引用します。

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「イスラム国は、ただちに、邪神のヨルダンによって約10年もの間、囚われの身になっていたサジダ・リシャウィの解放と後藤健二との人質交換によって、カリフの領土内に移送することを要求した。
ヨルダン政府は、無謀にも、人質の交換取引においてヨルダンの戦闘機パイロット(の奪還)を入れ込もうとして日本人の人質交換のプロセスを複雑にしてしまった。」

「後藤健二と、背教のパイロットの親族には何ら責任はないが、アメリカの十字軍を満足させ、奉仕しようとしている彼らの国の政治指導者たちは、そうではない。
安倍晋三が十字軍を支持するという宣誓を行うまでは、日本は、イスラム国がテロの標的とする優先順位リストにはなかったのだ。
しかし、安倍晋三の愚かさのせいで、日本のすべての市民と利害関係にある者たち(それは、どこにでも存在する)は、ヒラーファの兵士たちと、この後援者たちにとって、今、標的となったのだ。

日本は、現在複雑な苦境に置かれている。
日本は、どうやったら、この苦境から逃れることができるのか。

安倍晋三は、無謀にもヒラーファの怒りに晒してしまった日本の人々を救うために対策を講じることができるのだろうか。
彼は、イスラム国に対して、不名誉で思慮に欠ける声明を出してしまった後で、ヒラーファに対する戦争への支持を止めるという勇気ある声明を出すことができるのか。
それは疑わしい。
だから、日本の異教徒たちに向けて、アラーの権力と力によってヒラーファの剣が(サヤから)抜かれたことを知らせておこう。」

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これはかなり状況を深く分析して出されているメッセージです。
最初に読んだときにとても驚いたのは「後藤健二と背教のパイロットの親族には何ら責任はない」と書いてあったことです。ではなんで殺したのだと深い憤りを感じましたが、ISは以下の点を強調したいのです。
「安倍晋三の愚かさのせいで、日本のすべての市民と利害関係にある者たち(それは、どこにでも存在する)は、ヒラーファの兵士たちと、この後援者たちにとって、今、標的となったのだ。」

この全文を載せているのはブロガーの「カレイドスコープ」さんです。
ISの側の広報に利用されたくないと悩んだけれども、日本政府の姿勢を見ていて出すべきだと判断したと書かれており、その姿勢に深く共感しました。
ただそれでも僕もこれまでこの主張の転載に躊躇してきました。
ともあれカレイドスコープさんに敬意を表しつつ、全文が読める彼のサイトを紹介しておきます。

イスラム国の機関紙「DABIQ」の日本へ向けてのメッセージ
カレイドスコープ Tue.2015.02.24
http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-3431.html

安倍政権は安保法案を通すために意図的にこの声明を無視してきたのだと思われますが、これらを読んだときに、私たちは自衛隊員が危ないと言うよりも日本人全体が危ないことをこそつかむべきです。
中東やトルコへの旅行などとても危ないし、それだけでなく「大使館を狙え」と名指しされている国々をはじめ、多くの地域で民間人が危機に晒されつつあることをしっかりとみすえていく必要があります。
とくにトルコはシリアと国境を接していることもあり、ISとの直接対決を避けてきましたが、この8月にとうとうトルコ空軍をISへの空襲に参加させてしまいました。
そうなるとトルコ国内で報復が行われる可能性があります。第一に危ないのはトルコの方たちであり、それだけでも胸が痛みますが、さらにそのときに日本人観光客が狙われる可能性が大きくあります。

ISは「在外公館を狙え」と公言しているわけですが、軍事的にはそれで在外公館の守りに相手の側を集中させておいて、まったく違うところを攻撃することなどよくあることです。
軍事は騙し合いであり、「敵を欺くにはまず味方から」などと言われるぐらいですから、「ここを襲うぞ」といってまったく別のところを襲うことなど常に行われるからです。

このように書いてくると「それではISのような暴力とはたたかわないのか」という意見も出されると思います。
それに対してはこう思います。まさにISの暴力をなくすためにこそ、非暴力的な平和貢献が必要で、実際に日本の人々はそれをしてきたのだということです。
典型例が中村哲医師を先頭にしたペシャワール会の活動です。そしてその成果を壊してしまうのが戦争法だということです。

実際にもともとISが出てきたのはアメリカ軍の理不尽なイラク攻撃があったからです。このためISを軍事的に叩いても、次から次へとISへの参加者が増えるだけです。たとえISが無くなっても、同じようなものが後から後から出てくるでしょう。
背景にあるのはアメリカの戦争の理不尽さだからです。また新自由主義のもとで世界の中で貧富の差が過酷に開いていることも大きな要因です。
だから、ISの暴力とたたかうためには、暴力の地盤をなくさなくてはいけない。そのために大事なのが人道援助であり、平和貢献なのです。それでこそISへの参加者を減らせるのです。

そもそもオサマ・ビンラディンらのネットワークは、旧ソ連によるアフガニスタン介入に対するイスラムの怒りと、そこに目を付けたアメリカの介入によってこそ形成され、拡大していったのでした。
軍事大国となったフセインのイラクも、イラン・イスラム革命の拡大をおさえたいアメリカが、フセイン政権に膨大な軍事援助を行うなかで地域の覇権国家となったのでした。そしてそのフセイン政権を叩き潰す戦争がISを生んだのでした。
今もアメリカは、ISと敵対関係にあるさまざまな武装勢力に軍事的・資金的援助を行っています。そのことで新たなるモンスターが育っている可能性が十分にあります。

ここからつかみとるべき最も大事な点は、現代の紛争を軍事で解決することなどできないということです。もっと言えば、怒りを恐怖で封じ込めようとしても無理なのです。より強い怒りを生むことにしかならない。
怒りはただただ愛によって包み込むことの中でのみ、真の解体を迎えます。なぜならば怒りの根っこにあるのは恐怖だからです。その恐怖を癒さなくてはならない。そのために必要なのは攻撃ではありません。博愛的な人道援助です。
これまで自国の軍隊を国際紛争の解決につかってこなかった日本には、そのための世界の中でもまれな特権的な位置があったのです。とくに中東では(誤解も含めて)絶賛されてきたのです。

それが有名無形の形で私たちの安全をとても強く守ってきたのです。
安倍政権はそれを踏みにじり、壊してしまおうとしてしまっている。国内では「平和力」からの反撃を受けることになりますが、海外、とくに中東ではそうではありません。
これまでのイメージが良すぎたがゆえに、大きな裏切られ感が形成され、軍事的反撃につながる可能性が高くあります。実際にそのために後藤健二さんはISすら「罪はない」と認めていながら殺害されてしまったのです。

こうした流れに対してどうしたら良いのでしょうか。答えは一つです。戦争法をひっくり返し、さらに中東に邪悪なイメージを振りまいている安倍政権を倒すことです!
そのことでこそ私たち全体の安全が確保されます。We are not Abe!と叫ぶだけでなく、こんなひどい戦争政権は許さないのだという日本民衆の力強いメッセージを、実際に政権を倒すことで示すことです。
もはや安倍政権を倒すことには私たちの生存権がかかっています。私たちの命を守り、さらに世界の中の争いを縮小させていくために、アベ戦争政権を倒しましょう!

連載終わり