守田です。(20150428 21:00)

川内原発、高浜原発再稼働問題が大きく揺れていますが、そんな中で5月9日に若狭湾にある京都府宮津市で講演することになりました。
「原発ゼロをめざす宮津・与謝ネットワーク結成」集会に呼んでいただき、記念講演をさせていただきます。あらなた運動体の立ち上がりにお話させていただくのはとても光栄です。とくに今回のネットワークの立ち上がりには重要な意義があるのでなおさらです。
チラシにはこう書かれています。「~わたしたちは原発再稼働に反対です。京都・宮津に使用済み核燃料の中間貯蔵施設をつくるのはごめんです~」。
・・・同会の結成は原発再稼働に反対するとともに、使用済み核燃料の「中間貯蔵施設」作りの動きと対決するものでもあるのです。

宮津に「中間貯蔵施設」が作られるのではないかという推測は、関西電力の八木誠社長が、昨年9月の記者会見で、「使用済み核燃料の中間貯蔵施設の候補地は『福井県外』『港がある』『発電所内』」と発言したことを大きな根拠としています。

核燃料中間貯蔵施設、条件で自治体困惑 関電社長が発言
京都新聞 2014年10月21日 22時40分
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20141021000169

もう少し詳しく見て行くと、関西電力の保持している発電所は4府県に13か所あります。

京都府  宮津エネルギー研究所(宮津市) 舞鶴発電所(舞鶴市)
大阪府  南港発電所(大阪市)堺港発電所(堺市) 関西国際空港エネルギーセンター(泉南郡田尻町)多奈川第二発電所(泉南郡岬町)
兵庫県  姫路第一発電所(姫路市)姫路第二発電所(姫路市) 姫路LNG基地(姫路市)相生発電所(相生市) 赤穂発電所(赤穂市)
和歌山県    海南発電所(海南市)御坊発電所(御坊市)

このうち京都府の2か所のみが若狭湾に面しており、福井の原発群から近距離にあります。
他の11か所に運ぶにはいったん大きく西に航路をとり、山口県をまわって瀬戸内海を運行しなければならず、もし施設ができたときの運用の弁やコストを考えると京都府の二つと比べて大きな開きがあります。
さらに宮津エネルギー研究所は大阪府の多奈川第二発電所と共に「長期計画停止中」となっています。
「中長期的な需給状況や経済性などを踏まえ、当面稼動する見通しがない発電機を計画的に停止する運用」とのことで、何のことはない、使われていない施設なのです。これらをみただけでも宮津エネルギー研究所がターゲットとなっている可能性が極めて高い。

さらに地元では市役所の人事の動きや、議員に対する関西電力からのアプローチ、またエネルギー研究所での新たな施設建設計画の動きなど、中間貯蔵施設建設に向けたと思われるさまざまな兆候が市民によってつかまれています。
これらと八木誠社長の発言を重ね合わせたときに、施設建設にむけた動きがあることはほぼ間違いのない事実だと思います。
またもともと「福井県外」「港がある」「発電所内」という条件だけでも、宮津エネルギー研究所は候補の中に入りうるのですから、僕はそれだけでも積極的に施設建設反対の声を上げて行く意義があると思います。
ただし距離の近さから言えば、舞鶴発電所も候補の中に入りますから、ぜひ舞鶴でも声をあげて欲しいです。

いや私たちは「施設がやってくる地域だから声をあげよう」というだけでなく、どこからも声を上げて行く必要があります。
この点で注目すべきは、電気事業連合会会長でもある同じ関電の八木社長が、3月20日の記者会見で、この間、決定された原発5基の廃炉に関連し、中間貯蔵施設の設置で、電力各社が連携する可能性を検討していく考えを示したことです。
この際、廃炉作業によって発生する放射能濃度が高い廃棄物についても、「今後の規制基準の整備を踏まえたうえで各社共同での処分地確保を検討する」と述べています。

電事連会長「中間貯蔵施設で連携を検討」-使用済み核燃料処分で個社対応の限界露呈
東京経済ONLINE 2015年03月25日
http://toyokeizai.net/articles/-/64005

記事には八木社長が次のように述べたことも紹介されています。
「中間貯蔵施設を造るのは個社対応が基本だが、なかなか難しい。だが、この問題を解決しないと、円滑な廃炉ができないので、(共同設置など)あらゆる可能性を含めて検討したい」。
「互いに困っているなら、連携がスタート地点だと思う」。

さきほどあげた関電の京都府以外の11施設に港があるかどうかは確認できませんでしたが、こうなってくるとこれらの施設とて港など物理的条件が揃うなら候補にあげられない可能性はなくなります。伊方原発からは姫路などの方が近いからです。
反対に各電力会社の火力発電所も対象になる可能性があるし、電力会社が連携しあいながら中間貯蔵施設の建設を模索し始めたことに対し、私たちも全国で共同でこの施設の建設を許さない運動を組み上げていく必要があります。
その意味でも建設候補の可能性がとくに高い宮津から大きな声を上げることはとても重要です。

そもそも使用済み核燃料中間貯蔵施設とは、それぞれの原発サイトにある使用済み核燃料を再処理工場に送るまでに「中間貯蔵する」という名目で作られようとしているものですが、再処理が思うように進まないからこそ生じてきたものです。
再処理とは使用済み核燃料からプルトニウムを取り出すことであり、それを「もんじゅ」など高速増殖炉に入れて燃やし、稼働させながらさらにプルトニウムを作り出すというのが、核燃料サイクルの「夢」でした。
しかし未だ世界で高速増殖炉建設に成功した国はないし、成功の展望もまったくありません。また再処理工場も深刻な事故を繰り返しています。日本は独自に六ケ所村に作りましたが、当初よりトラブル続きで長い間、とまったままです。

このため燃料プールに核燃料がどんどん詰まってしまって容量がなくなりつつあります。いやそもそもいったんは容量が尽きてしまったので、燃料の間隔を設計段階よりも詰めてしまう「リラッキング」をしたのですが、それでも一杯になりつつある状態なのです。
だからこの施設を作ることができなければ、例え再稼働に踏み切っても原発は数年で行き詰ってしまいます。それゆえ原発再稼働と連動するものとして、使用済み核燃料貯蔵施設の建設が目指されようとしているのです。
電事連会長としての関電社長が、貯蔵施設建設での電力会社間の連携を呼びかけている理由もここにあります。今、強引に進められようとしている原発輸出と同じく、瀕死の状態の原発と原子力産業の延命策なのです。

重要なことは、だとすれば私たち民衆の側が、貯蔵施設のそれぞれの候補となりうる場で連携しあい、反対を貫いていけば、原子力政策全体にストップをかけることができるということです。
そのために単に宮津のためだけではなく、日本全体の未来を守るために、この場への核燃料貯蔵施設の建設反対の声を上げることが必要です。僕も宮津の方たち、若狭の人たちと一緒に、ここから日本を守る声を上げるつもりです。
5月9日の講演では、高浜原発再稼働問題とともに、これと深くつながっている核燃料貯蔵施設建設問題を扱いたいと思いますので、ぜひ多くのみなさんにご参加いただき、聞いていただきたいです。集会案内を末尾に貼り付けておきます。

なお「中間貯蔵施設」問題をめぐっては連載を続けます。

*****

5月9日 京都府宮津市

原発ゼロをめざす宮津・与謝ネットワーク結成のつどい
~わたしたちは原発再稼働に反対です。京都・宮津に使用済み核燃料の中間貯蔵施設をつくるのはごめんです~

宮津市 歴史の館にて 午後1時より
1、オープニングの歌
2、原発ゼロをめざす宮津・与謝ネットワーク結成宣言
3、あいさつ(津島英一)
4、福島支援宮津プロジェクトからの報告
5、講演「生き続けられるふるさとを~高浜原発再稼働問題から~」(守田敏也)
6、今後の取組と行動提起(濱中博)
*つどいの終了後、ミップル前宣伝。

主催 原発ゼロをめざす宮津・与謝ネットワーク
連絡先 与謝地方教職員組合内 0772-22-0321