守田です(20150328 18:00)

高浜原発再稼働に向けて、原子力規制庁は新規制基準への合格内容を説明するために、3月3日から高浜町のケーブルテレビでビデオを流し出しました。
以下から内容を見ることができます。なお原子力規制庁のHPにもこの動画がアップされています。

高浜発電所に関する原子力規制委員会の審査概要について
https://www.youtube.com/watch?v=azZk3mPHUrg

非常に重要な内容なので文字起こししました。長いので何回かに分けます。
今回は、冒頭の福島第一原発事故の教訓と、新しい規制基準のポイントを説明したところだけをご紹介しますが、重大な内容がさらりと語られています。
端的に新しい規制基準では重大事故が防げないことを前提にしているということです。

すでに多くの方がこの点に対する批判を行っていますが、僕はもっとこの点をハイライトすべきだと思います。
福島第一原発の教訓を踏まえて、重大事故を絶対に起こさないようにする・・・とは言ってないのです。
起こさないように努力するが、それでも重大事故は発生しうる前提に転換したのです。大事故がありうることが前提に再稼働を認めると言っているのです。

事実、規制委員会は繰り返し、「新規制基準に通ったからと言ってその原発が安全だとは言わない」と述べています。
重大事故は起こり得るので対策した。安全ではないが、精一杯の対応は考えたと言っているのです。この点をもっともっと多くの人々に伝えるべきです。

このビデオはその点が短く説明されているので分かりやすいです。
ぜひこのビデオをご覧になり、原子力規制庁が新基準規制に通った原発でも「重大事故は発生しうる」と述べていることをつかんでください。
これは事実上、重大事故の発生を完全に防ぐことはできないことを公言していることに他なりません。そんなプラントの運転など社会的に認めてよいわけがありません。

以下、ポイントを文字起こししました。ご覧下さい。

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高浜原発3号炉、4号炉設置変更に関する審査結果についての説明
原子力規制庁 山形浩史 原子力規制部安全規制管理官(PWR担当)

高浜原発の審査内容の前に、福島第一原発事故の教訓と、新規制基準のポイントを説明したい。

【福島第一原発事故の教訓について】

福島第一原発事故では地震と津波により発電所の全ての電源が奪われ、原子炉を冷却できなくなった。
地震、津波などによって安全機能の複数、非常用発電機、蓄電池、電源盤などがダメになった。このような複数の喪失を起こさないようにすることが第一の教訓だ。

また福島第一原発事故では事故の進展を途中で止められなかった。
最終的に建屋の水素爆発を起こした。放射性物質を閉じ込める格納容疑が壊れ、放射性物質が発電所の敷地外まで大量に放出された。
これに対して当時の規制基準では、格燃料が溶けてしまったり、放射性物質が大量に外に漏れるような重大事故を発生させないことを重視し、重大事故の起きた後の対応が十分にできていなかった。
このため重大事故が発生しうると考え、あらかじめ可能な限り対策をとっておくべきというのが第二の教訓だ。

【規制基準の変更について】
1、旧規制基準のポイント
想定しなければならない自然現象の種類が限定的だった。
例えば地震についてはさまざまな想定していたが、津波についての基準はほとんどなかった。
規制の考え方として、そうした自然現象は想定の範囲を超えることはほとんどないという考え方に立っていた。

安全確保のために設備を多重化すること、例えば注水ポンプを2台にと求めていた。ところが2台が同時に壊れることは考えていなかった。
基準を満たせば核燃料が溶けたり、放射性物質が外部に大量に放出する可能性のあるような重大事故につながることがないよう対策を問題なく行うことができると判断していた。
つまり基準を満たせば大きな事故はおきない。しかも対策の中身は設備面での対策を重視していたということになる。

2、新規制基準のポイント
平成25年7月に新しく作られた規制基準は、こうした反省、教訓をしっかりと踏まえ、考え方を大きく転換している。
一つ目の見直しは自然現象など重大事故の原因になりうる事象の想定を厳格にしたことだ。
例えば施設の設計にあたって想定する地震や津波を厳しくするとともに、竜巻などの自然現象への対策、や森林火災、内部溢水などの対策を新設したり強化した。
発電所内の電源が使えなくなった時のために、発電所内の非常用電源を手厚くするなど電源確保の要求も厳しくした。

その上で対策はしっかりしているから事故は起こらないという従来の考え方を大きく転換。
それでもなお事故が発生しうるという発想にたち、万が一、重大事故が発生したときに備えた対策をあらたに求めることにした。
原子炉を止めたり、冷やしたりすることがうまくいかなかった場合でも、原子炉が壊れないように事故を食い止めるための設備や手順、体制の整備。
さらに原子炉が壊れないための対策も失敗し、原子炉が溶けて核燃料が溶けてしまっても、外側の格納容器が壊れないようにするための対策を新たに求めている。

続く