守田です。(20150123 08:30)

後藤さん、湯川さんを救うために残された時間はわずかです。今できることを再度、提案します。

一つはネット上で広がっている緊急署名に協力することです。
現時点で署名数が17000人を越えてさらに伸びつつあり、報道でも取り上げられ始めています。以下の署名です。

[緊急署名]イスラム国周辺国への2億ドルの人道支援を留保し、日本人人質の人命を救ってください
https://www.change.org/p/%E5%A4%96%E5%8B%99%E7%9C%81-%E9%A6%96%E7%9B%B8%E5%AE%98%E9%82%B8-%E7%B7%8A%E6%80%A5%E7%BD%B2%E5%90%8D-%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E5%9B%BD%E5%91%A8%E8%BE%BA%E5%9B%BD%E3%81%B8%E3%81%AE2%E5%84%84%E3%83%89%E3%83%AB%E3%81%AE%E4%BA%BA%E9%81%93%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%92%E7%95%99%E4%BF%9D%E3%81%97-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E4%BA%BA%E8%B3%AA%E3%81%AE%E4%BA%BA%E5%91%BD%E3%82%92%E6%95%91%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84?recruiter=50897116&utm_source=share_petition&utm_medium=facebook&utm_campaign=autopublish&utm_term=des-lg-share_petition-reason_msg

署名にあたって僕が書き添えたコメントもここに記しておきます。

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政府は後藤さん、湯川さんを救うために全力を尽くすべきです。そのために「対イスラム国支援」を取り下げるべきです。
また一切の軍事援助を行わないことも明言し、その上で、すべての戦争の被害者としての難民を救済し、ムスリムの方たちをも守ることを明言すべきです。
その上で粘り強い交渉を行って、必ず二人の命を守ってください。
政府は、今、この時にまったく不用意に「対イスラム国」宣言を行い、火種を撒いた責任にかけて、これを行う必要があります。

また、すべてのみなさん。
後藤さんは、中東地域で犠牲になってきた方たちを取材し、戦場から真実を私たちに伝えてきてくれた素晴らしい方です。私たちの良心の眼であり耳です。こんなに素晴らしい行動を貫いてきて方を何が何でも守り抜かなくてはいけない。
できることはとても限られているかもしれません。有効な手はなかなか見いだせないのかもしれない。でも思いついた限りのことを短い時間の中で行いましょう。
この署名も一助になると思います。とにかく二人の命を責任にかけて救え!という声を政府に集中しましょう。署名へのご協力、拡散を訴えます!

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もう一つは日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)が発信した命を救う声明を拡散することです。
この署名は僕が最も信頼するジャーナリストの豊田直巳さんが執筆したもので、日本語・アラビア語・英語バージョンがあります。アラビア語、英語バージョンがあることが極めて重要です。

以下に日本文だけ貼り付けておきます。アラビア語、英語はリンク先をご覧下さい。

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IS(イスラム国)による日本人人質事件に対する声明
http://t.co/jz0OKQ74ou

日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)はフォトジャーナリストやビデオジャーナリストの団体です。
私たちは、イラク戦争とその後の占領下において、米英軍を中心とした有志連合軍による攻撃がイラク市民にどんな災禍をもたらされたかを取材、テレビや新聞などで報道してきました。また、イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への無差別攻撃に晒された市民を取材し、テレビや新聞等で報道してきました。私たちの報道はけっしてアメリカやイスラエルの攻撃を肯定するものではありませんでした。
私たちジャーナリストが、現場での取材を通して理解した戦争下の住民の現実だったからです。同時に、報道を通して私たちはあらゆる暴力を批判してきました。日本政府の戦争政策に対しても批判してきました。イスラエルのガザ攻撃に対しても、私たちは強く批判してきました。私たちは現在の安倍政権の戦争を肯定するかのような政策を、報道を通して批判しています。
現在、IS(イスラム国)が拘束している後藤健二さんには、取材の現場で会ったことがあります。後藤健二さんもまた、イラクやシリアでの戦火に苦しむ市民の現状をテレビやインターネットで報道してきました数少ないジャーナリストです。湯川遥菜さんは、私たちと直接の接点はありませんでしたが、報道によると個人的な興味から「イスラム国」に入ったようです。
私たちは、暴力では問題の解決にならないというジャーナリズムの原則に立ちます。武力では何も解決されない現実を取材をとおして見てきたからです。「交渉」を含むコミュニケーションによって問題解決の道が見つかると信じます。
私たちは、IS(イスラム国)の皆さんに呼びかけます。日本人の後藤さんと湯川さんの2人を殺さないように呼びかけます。人の命は他の何ものにも代え難いものです。イスラムの教えは、何よりも平和を尊ぶことだと理解しています。
私たちは、同時に日本政府にも呼びかけます。あらゆる中東地域への軍事的な介入に日本政府が加担することなく、反対し、外交的手段によって解決する道を選ぶようにと。

2015年1月20日
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)

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このJVJAの声明はNHKのニュースでも取り上げられており、同じ記事が英語放送のNHKworldでも流されています。
実はIS(イスラム国)も、NHKworldを観ています。「殺害警告」のビデオの冒頭で安倍首相の中東訪問に関する同番組の報道動画が使われていたからです。
このため英語でのこの報道によりイスラム国内部にもこの報道と声明が伝わる可能性が高いです。

英語放送と日本語放送のリンクを貼り付けておきます。

Journalists in Japan urge release of 2 hostages
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/news/20150122_29.html

ジャーナリスト団体がアラビア語で解放求める
http://www3.nhk.or.jp/ne…/html/20150122/k10014893411000.html

さらにたった今、豊田さんのFacebookページをチェックしたところ、イラクのテレビ局で二人の解放に尽力している同志社大学の中田考氏の記者会見の様子とJVJAの声明が流されたそうです。
かつてイラクで人質になり解放されたものの、その後、「自己責任論」バッシングの猛攻を受け、大変辛い中から再度、ジャーナリストとして起ちあがって奮闘してきた高遠菜穂子さんの尽力によるものだそうです。
これは非常に大きい!間違いなく「イスラム国」の眼にも触れるでしょう。
https://t.co/2MxxnJ0phB

もちろんこれらの声明はイスラム国だけでなく、よりたくさんの世界の人に伝わる必要があります。
そう考えて、「明日に向けて」で英語バージョンを作り、JVJAが発信した声明と、NHKworldの記事を貼り付けておきました。
英語を使っている友人、知人、英語圏のお仲間にぜひお送りください。

For tomorrow(1020)Please cooperate to protect our Japanese friends!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/effb880bc6c7986e2198605bddfdf3d3

なお、2003年の「人質」事件の際、「自己責任論」によるバッシングが吹き荒れました。
実はこれは、政府批判をかわし、矛先をつかまった3人に向けるために官邸主導で行われた世論操作の結果であったことが今日明らかとなっています。
「自己責任論」はまったくのあやまりです。危険地帯にわざわざ出向いて真実を報道してくれる方たちがいるからこそ、私たちの眼が曇りきらないでいるのです。こうしたジャーナリストの方たちは私たちの眼であり耳です。私たちの心の窓でもあります。私たち自身のかけがえのない宝です。ぜひとも守りましょう。

高遠さんとともに拘束され、解放後に酷いバッシングを受けた今井紀明さんが、この点で的確で温かい声明を発しています。苦労を越えてきた彼の言葉を記した東京新聞の記事をご紹介しておきます。

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救出努力、寛容に見守って 04年イラクで拘束・今井紀明さん
東京新聞 2015年1月22日 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015012202000241.html?ref=rank

湯川遥菜さん(42)=千葉市花見川区=とフリージャーナリスト後藤健二さん(47)=東京都港区=が、過激派「イスラム国」とみられるグループに人質とされた事件を、特別な思いで注視する人がいる。かつてイラクで人質として一時拘束された今井紀明さん(29)=現NPO法人共同代表=だ。「自己責任」を問われた自らの体験を踏まえ、激しいバッシングが起きるのではないかと懸念している。社会全体で「寛容に(日本政府の救出努力を)見守るようなムードになってほしい」と願う。
「拘束された時の強い恐怖がよみがえった」。二人の殺害を警告するビデオ声明が飛び込んできた時、二〇〇四年四月にボランティア高遠(たかとお)菜穂子さんら二人と共に武装グループに拉致された時のことを思い出さずにはいられなかった。

今井さんらは銃で武装した男らに取り囲まれて目隠しをされ、様子をビデオで撮影された。武装グループは当時イラクに駐留していた自衛隊が三日以内に撤退することを要求したが、今井さんらには自分たちの命と引き換えだということは知らされていなかったという。「今回の二人は、殺されると目の前で通告されたとみられ、七十二時間の期限が迫る。絶望はずっと重い」と思いやった。
今はとにかく「相手の誤解を解くことが重要」だと思う。日本の二億ドル(約二百三十五億円)に及ぶ中東向けイスラム国対策費は、人道支援目的だという事実が伝わっていない恐れを心配し「敵対心を持っているわけではないと、あらゆる交渉ルートを使って訴えてほしい」と語る。
今井さんらも当初、武装グループに「米国のスパイ」と間違われた。だが拘束が続くうち、高遠さんが現地で続けていた支援活動のことが相手に伝わったり、有力宗教指導者が仲介役となってくれたりしたことで解放への道筋が開けたという。

帰国後、今井さんには渡航を非難する電話や手紙が押し寄せた。対人恐怖症と診断され、立ち直るまでに四~五年間かかり、兄も仕事をやめざるを得なくなった。今は当時の経験も基に、大阪市を拠点に不登校を経た若者らの支援活動を行う。
今回もネット上で「自業自得」など似たような言葉が出始めているのが気掛かりだ。「もし反省点があったとしても、それは自分が一番分かっていると思う。どんな状況下でも、政府はその国の人を守らなければいけない。救出に全力を尽くしてほしい」

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以上、まだまだ伝えたいことがありますが、情報過多になるのでこれぐらいにしておきます。
緊急署名とJVJA声明拡散にぜひご協力ください!