守田です。(20150120 23:30)

風雲急を告げる事態が発生しました。「イスラム国」が日本首相と日本国民に対して、身代金2億ドルを72時間以内に払わな分ければ、拘束している二人の日本人、後藤健二さんと湯川遥菜さんを殺害すると通告してきました。
なぜ2億ドルなのかも説明されています。「私たちの女性や子どもを殺し、イスラム教徒の家を壊すために1億ドルを拠出した」さらに「イスラム国の拡大を止めるためにムジャヒディン(イスラム聖戦士)と戦う背教者の訓練に1億ドルを拠出した」からだそうです。
詳しくは以下の毎日新聞の記事に書かれています。

イスラム国邦人人質:日本人2人殺害を警告 ネットに映像
毎日新聞 2015年01月20日 16時19分(最終更新 01月21日 00時16分)
http://mainichi.jp/select/news/20150120k0000e030220000c.html

また多くのマスコミが、この時期に「イスラム国」がこういう行動に出たのは、安倍首相が中東歴訪で「過激主義批判」や「テロ批判」を行い、「対イスラム国支援」を明言し、そのためと銘打って資金援助をしたためだと指摘しています。
援助の中身自身は人道的なものとされていますが、それを「対イスラム国支援」としてしまったことで、欧米による軍事攻撃と一体のものとして受け取られてしまったのです。
さらに昨年から続けてきたイスラエルとの関係強化をこの時期に一層鮮明にしたことも、強い反発を買ってきたのだと思われます。パレスチナへの白昼堂々たるテロ戦争には一言も批判せずに、イスラエルの接近を強めてきたからです。

これに対してとくに後藤さんは、中東地域に何度も足を運び、戦争の犠牲になった人々のことを取材し、何度も私たちに真実を伝えてきてくださっている素晴らしいジャーナリストです。
僕の友人の豊田直巳さんなど、多くのジャーナリストが彼を救うために何ができるかと激しく己に問うています。池上彰さんなども、彼が中東を取材する時に何が危険かを後藤さんからアドバイスされた、頼りにしていたと語り、ショックを明らかにしています。
そんなこれまでの後藤さんの活躍を知り、広めること、世界に発信していくことも大事なことの一つだと思います。

とりあえず「NEVERまとめ」にあげられた後藤さんの情報をお知らせしておきます。

「インデペンデント・プレス」ジャーナリスト後藤健二さん イスラム国に拘束されていた #イスラム国
更新日: 2015年01月20日
http://matome.naver.jp/odai/2142173579724441501?page=2

私たちに何ができるのか。できることは限られているかもしれませんし、政府に要望を出してもきちんと動いてはくれないかもしれない。それでも今は考え着く限りのことをすることが大事だと思います。
その一つにネット上に緊急署名が呼びかけられていたので紹介します。

[緊急署名]イスラム国周辺国への2億ドルの人道支援を留保し、日本人人質の人命を救ってください
https://www.change.org/p/%E5%A4%96%E5%8B%99%E7%9C%81-%E9%A6%96%E7%9B%B8%E5%AE%98%E9%82%B8-%E7%B7%8A%E6%80%A5%E7%BD%B2%E5%90%8D-%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E5%9B%BD%E5%91%A8%E8%BE%BA%E5%9B%BD%E3%81%B8%E3%81%AE2%E5%84%84%E3%83%89%E3%83%AB%E3%81%AE%E4%BA%BA%E9%81%93%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%92%E7%95%99%E4%BF%9D%E3%81%97-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E4%BA%BA%E8%B3%AA%E3%81%AE%E4%BA%BA%E5%91%BD%E3%82%92%E6%95%91%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84?recruiter=50897116&utm_source=share_petition&utm_medium=facebook&utm_campaign=autopublish&utm_term=des-lg-share_petition-reason_msg

最初に内容を読んだときに、政府に「人道支援を留保せよ」と言っても聞かないだろうなとかも思ったのですが、そんなことを言っていると限られた時間しかありませんから、何もできないことになりかねません。
それならばたとえ政府をそこまで動かせずとも、「対イスラム国支援を口にし、火種を撒いたことへの市民的怒りがある。これに対応して命を救わないとまずい」・・・という思いを少しでも強めさせることができるかもしれない。その分、二人の解放の可能性は少しでも広がるかもしれない。そう考えてキャンペーンに賛同することにしました。

署名にあたって書き添えたコメントもここに記しておきます。

***

政府は後藤さん、湯川さんを救うために全力を尽くすべきです。そのために「対イスラム国支援」を取り下げるべきです。
また一切の軍事援助を行わないことも明言し、その上で、すべての戦争の被害者としての難民を救済し、ムスリムの方たちをも守ることを明言すべきです。
その上で粘り強い交渉を行って、必ず二人の命を守ってください。
政府は、今、この時にまったく不用意に「対イスラム国」宣言を行い、火種を撒いた責任にかけて、これを行う必要があります。

また、すべてのみなさん。
後藤さんは、中東地域で犠牲になってきた方たちを取材し、戦場から真実を私たちに伝えてきてくれた素晴らしい方です。私たちの良心の眼であり耳です。こんなに素晴らしい行動を貫いてきて方を何が何でも守り抜かなくてはいけない。
できることはとても限られているかもしれません。有効な手はなかなか見いだせないのかもしれない。でも思いついた限りのことを短い時間の中で行いましょう。
この署名も一助になると思います。とにかく二人の命を責任にかけて救え!という声を政府に集中しましょう。署名へのご協力、拡散を訴えます!

***

書いた通りですが、本当に後藤さんは素晴らしい活動をされてきた方です。何としても守りたいです。
湯川さんについては、もともとミリタリーグッズのショップを経営していたそうです。「軍事関連会社」経営と名乗っていますが、実体はなく、「自分探し」の末に中東にたどり着いたようです。
実は昨年春に、シリアの反体制武装勢力の「自由シリア軍」につかまり、そのときに後藤さんが関わって解放させています。しかしそのまま自由シリア軍と親しくなって行動を共にし、イスラム国と交戦となったときに部隊からはぐれて拘束されたと見られています。

後藤さんは自由シリア軍から解放したときに、湯川さんを帰らそうとしたのですが、その後に再び舞い戻って結局イスラム国に拘束されてしまうこととなったことに対して責任も感じ、なんとか救いたいと思っていたようです。実際にはけして責任を問われる立場ではなかったと思われますが。
ただそうであっても湯川さんの命ももちろん大事にし、後藤さんとともに救いたいです。後藤さん自身、湯川さんの命を何度も救おうとしてきたのですから。

今後、分析しなければならないこと、論じなければならないことはたくさんあります。
年頭よりこれまで、繰り返し、現在の中東の火種はソ連によるアフガニスタン戦争以来、アメリカこそが撒いてきたこと。これにイギリスなど西欧諸国が加担してきたことを指摘してきました。
その上で湾岸戦争が行われ、さらにアメリカの911事件後のアフガン二スタン戦争、イラク戦争が行われて、戦争犯罪である大量虐殺が行われてきました。その上に捕虜収容所などでの拷問、虐待なども加えられてきたのでした。それが暴力の連鎖を生んできた元凶なのです。

これに対してまだ論じることができていなかったこと、私たちにとってとても大事なことは、イスラム圏で日本は非常に信頼を持たれており、愛されている国なのだということです。
中東の多くのイスラム国家の人々にとって、欧米は長い間植民地支配をした人々であり、その後も、軍事力を背景に繰り返し横暴なことを繰り返してきました。
さらにアメリカのバックアップのもとに、イスラエルによる軍事的な横暴を繰り返されてきました。

中東から見える日本は、そのアメリカに原爆まで投下されながら、平和産業を軸に復興してきた国なのです。
しかも大国になっても軍事展開せず、暴力を背景に横暴なことをすることがなかった。・・・そこには「美しき誤解」も多々あるのですが、ともあれそうしたあり方がこの国のよい評判を作り出してきたのです。
だからこそ、私たちの国は、本当は、中東での争いのもっとも優れた調停者、平和の媒介者になりうる歴史的脈絡を持っているのです。

それが今、安倍政権によって壊されようとしているのです。イスラム国が「日本は十字軍に加担した」と言っていることがそれを象徴しています。
私たちはここで踏みとどまらなければいけない。アメリカの暴力に巻き込まれ、いわんや手先にされてはいけない。憲法9条のもとに、非武装の理念で歩んできた歴史、だからこそ世界の多くの人々に信頼も得てきた歴史を今こそ大切にし、平和力を発揮していかなければなりません。
それが本当の中東の平和と安定への貢献になるのです。

そのことを頭に入れつつ、二人の命を救うことに今は全力を上げましょう。
その中で、どうやったらアメリカやイギリス、フランスが作りだしている戦争政策から私たちの国を脱っせられるのか。いかにして真の平和に貢献することができるのかを考えぬきましょう。
今、問われているのは私たちの平和力です。その平和力の最良の発信者であった後藤さんの命、そして湯川さんの命を共に守りながら、わたしたちの国が本当に歩むべき道を切り開いていきましょう!