守田です。(20140818 22:30)
8月16日に、滋賀県大津市石山の「フィンランド学校」で行われている「びわこ1・2・3キャンプ」にお邪魔し、朝の10時から子どもたちに「食べ物と放射能の話」を。午後1時半から大人たちに「ヨーロッパとトルコへの訪問の話」をしました。
その後、福島や関東から来ているお母さんたちと話し合い、全てを終えたのは夕方の6時過ぎでした。およそ8時間話し続けていました!
8時間がまるまる印象深かったのですが、中でも面白かったのは子どもたちへの話の中で子どもたちがぽんぽんと質問の嵐を浴びせかけてくれたことです。
これは前提として子どもたちの感性が、このキャンプの中で非常に伸びやかに開いていることで可能になったものだと思います。自由な環境の中でなおかつ大切にされ、人格を尊重されたとき、子どもの感性は驚くほどの伸びを見せます。
教育とは本質的に、自ら伸び上ろうとする子どもたちの成長を助ける作業としてあることを実感させてくれる瞬間です。子どもたちには自らを育てる力が素晴らしく備わっている!
今回もそんなことを強く感じる場面がありました。僕は放射能とは何かのお話をしたのですが、そのときに必ず触れるのが原爆のことです。人類が初めて大量の放射線を浴びた経験が原爆であり、なおかつその影響を独占的に調べたのが原爆を落としたアメリカ軍だったからです。
アメリカ軍は、自らの行為の非人道性、戦争犯罪性を隠すことを戦略目的としていたため、原爆の被害を非常に過小に報告しました。そのことが今日まで、放射線の人体への影響かなり過小に見積もられることに結果しています。
ここから紐解けば、原子力村サイドと、原発反対派の中で、いや反対派の中ですら、放射線の人体への影響の評価が極端に開いてくることの理由が見えてきます。
放射線学は本質的にアメリカの軍事戦略と結びついた学問ならざる学問であり、政治と軍事に深い介入を受けてきた「学問」なのです。にもかかわらず、このことに無自覚にこの「学問」に従ってしまうと、放射線障害の過小評価の罠にはまり込んでしまうことになります。もちろん原子力村の人々は、意識的にもこの「過小評価」を守り、強化し続けています。
そのため僕は放射線のことを語るときに、原爆のことから話し始めることが多いのですが、今回、話が必然的に戦争のことへと広がるにしたがって、子どもたちからポンポンと質問が出始め、どんどん加速化していきました。
おそらくこの間の集団的自衛権をめぐる社会的紛糾をさまざまな形で耳にし、子どもたちなりに戦争のことを考えていたのでしょう。そのためかどれも鋭く本質をついてくる。というかともすれば大人が問うことを止めてしまいがちな点、そもそも「なんで戦争なんか起こるの?」という、最も大事な問いが次から次へと飛び出してきたのです。
あまりに面白かったし、子どもたちがこんなにピュアに大切なことを語ってくれていることをみなさんとシャアしたくて、文字起こしをすることにしました。
全体を通して、僕がぜひみなさんにつかみとっていただきたいのは、日本の平均的なこどもたちは、戦争をいけないことだと思っているということです。
それは彼ら彼女らを取り巻く大人たちの多くが、戦争は悪いものだと思っていることの反映でもあるでしょう。そうして僕はここに、私たちの国の中にある平和力とでも言うべきものの強い存在を感じるのです。
世界では悪を武力で倒すのは正義であり、正義のためには武装するのは当然・・・という考えがまだまだ強いです。
しかし私たちの国で育っている子どもたちは、戦争はよくないと心から思ってくれている。この子どもたちの中にある平和への確信を絶対に守っていきたいし、守っていくことは十分に可能だと僕は感じました。
一番、伝えたいのはこの点なのですが、まずはみなさんに、自由に、子どもたちの発言に耳を傾けてみて欲しいです。
以下、学習会の途中からになりますが、当日のやりとりをご紹介します。(長いので2回に分けます!)
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なんで戦争なんかするの?
(2014年8月16日 びわこ1・2・3キャンプでの子どもたちとの対話から)
(注、前半は食べ物の話。油と糖類の多い悪い食材が出回り、世界が激太りに向かっていることを説明し、よい食材を選んで、身体を守るべきことを話してから放射能の問題に移りました・・・)
―放射能はもちろんとても危ないものです。
みなさんは、放射能をさけるためにさまざまなことをとしていると思うのだけれど、次にこの話をします。
去年の話なのだけれど、大阪の枚方というところに福島から来た中学生から、学校で「放射能を怖がるのはかっこ悪い」という言葉が流行っていると聞いて、僕はとてもショックを受けました。
「放射能を怖がるのはかっこ悪い」どころではなくて、放射能を怖がらない方がかっこ悪いです。
それでは放射能はとても危ないのに「放射能はそんなに怖がる必要はないんだ。怖がりすぎはよくないんだ」と誰が言いだしたのかというと、答えは原爆を落としたアメリカです。
みなさん、原爆って知っていますか?
子どもたち 「うん」
―いつどこに落とされたか言えますか?
女の子 「広島」
―もうひとつ
女の子 「長崎」
―そうだね。広島と長崎。それじゃあ日にちを言える人は?
男の子「8月5日と9日」
―ちょっとずれたな。先の日がずれた。
男の子「8月4日?」
―もっとずれたなあ。
8月9日長崎は正しい。広島がまだ当たっていません。
男の子「6日?」
―そう。広島が6日、長崎が9日です。世界で初めて原爆が投下された日で、これはもう二度と落ちてはならないですね。
次に見せるスライドは『はだしのゲン』です。去年も見せましたけど。
男の子「家にある!」
―家にあるの。いいねえ。みなさん。これは本当にいい漫画です。ちょっと怖いところもあるけれどね。読むのにちょっと怖いけれど、家にあったら一番いいね。
あと小学校の図書室には必ずあると思うので、必ず読んで下さい。とても良い漫画です。とても大事なことを教えてくれています。
この絵にあるように、爆発で吹き飛んだガラスがこうやって多くの人の身体に刺さってしまったんだよね。だけどもっと怖いのは、原爆の熱線と放射線で身体が焼けてしまったことで、この人がぶら下げているのは身体の皮膚なんだよね。
腕の皮膚が溶けてしまってね、指先の爪でひっかかって、こうやってぶら下がっている。
僕は肥田舜太郎さんという、こういう状況の中でたくさんの被爆者を診たお医者さんを知っているのだけれど、本当にこんな格好で前からふらふらと歩いてきてね。
肥田さんはそれがなぜなのか分からなかったのだけれど、フラフラ歩いてきて、倒れて込んできて、それを抱き止めたのが被爆者と会った最初だったよと言っていました。抱き止められたその方は肥田先生の腕の中ですぐに亡くなったそうです。
この時にアメリカは二つの原爆を落としたのですね。広島と長崎。タイプの違う原爆です。なんで二つ落としたのかと言うと、二つタイプの違う原爆を作ったからとにかく落として見たかったのだね。これは完全に人体実験です。
女の子 「なぜ、実験で落としたのですか?」
男の子 「その時間帯が、一番外にいる人が多いから」
―あ、すごい。大事なことを覚えてくれていたねえ。今とても大事なことを言ってくれました。広島に原爆が落とされたのは8時15分です。(この子は昨年も参加してくれていた)
理由があります。それまでアメリカはたくさんの偵察機を飛ばして広島の写真をたくさん撮っていました。
女の子 「朝ですか、夜ですか?」
―朝です。朝の8時15分。なぜなのかというと人が一番、家から出ている時間を探したのだね。8時15分というと多くの人たちが学校や職場に通っていた時間です。朝礼もやっていた。だから人が建物の外に一番多くいた時間。
その時間を狙って、人類が新しく作った原爆が落とされた。人体、人間の身体にどんな影響を及ぼすかを調べたかったのです。そのために日本に住んでいる人を使って実験をしたの。
これは本当にやってはいけない、人類が犯してはいけない大きな罪です。大きな罪なのに、アメリカはいまだに謝っていません。これは絶対に謝らせなければいけないことです。
男の子 「なんで実験をしたかったのかなあ?」
―なんで実験をしたかったのか。そんな気持ちは僕も分からないね。そんなひどい気持ちは僕もよく分かりません。でもきっと原爆を作った人はその威力を知りたかったんだろうね。
男の子 「一番悪い国はアメリカですか?」
―「一番、悪い国はアメリカですか」という問いが来ました。大人のみなさん、答えて下さい!「一番、悪い国はアメリカですか?」重要な質問です。これへの答えを出せる人はいますか?
大人 シーン
―どうでしょうか。あのね、これはすごく答えにくい質問であると同時に、とても良い質問です。
間違いなく言えることは世界で今まで(第二次世界大戦から今日まで)一番たくさん人を殺し続けてきたのはアメリカです。だからアメリカにはとても悪いところがある。
だけれどもアメリカの中にもいろいろといいものもあるわけね。だから世界の中で、アメリカが良いものを実現していて、それよりも悪い国もあるし、だけれどアメリカほど、たくさん人を殺し続けている国はほかにありません。
だからねえ、どこが一番悪いかというように国を並べることはできないということかな。
だからアメリカがしている悪いこと、それぞれの国がしている悪いことをそれぞれで考える必要がある。日本も昔、悪いことをたくさんしたんだよ。アジアに攻め込んでたくさんの人を殺しました。
男の子 「なんでアメリカって良いことをしないの」
―いや、だからアメリカが良いことをしている面もあるんだよ。そこがすごく大事なところだね。
続く