守田です。(20140605 23:00)

再びトルコのニュースをお送りします。

トルコで4月26日、「チェルノブイリの日」にシノップをはじめ各地で大きな原発建設反対を掲げたデモが行われたことをすでにお伝えしましたが、5月31日にはあまりに横暴なエルドガン政権への大規模な抗議行動が行われました。
ちょうど1年前、イスタンブール中心部のタクシン広場、ゲド公園の再開発に反対するデモに、トルコ政府が警官隊の暴力で襲いかかったこと。ガス弾が乱れ飛び、たくさんの方が殺された(8人とも11人とも言われいる)ことへの抗議行動でした。
ところがトルコ政府は再び各地で治安部隊を配備。デモ隊に激しく襲いかかり80人が拘束されたと伝えられています。

私たちの国は、このトルコに原発を輸出しようとしています。美しいシノップの半島の環境を破壊してです。その上トルコは日本と同じ地震大国。それだけでも原発を建てるのは大変危険です。
しかも政府は人権感覚に著しく欠けています。だからすぐにデモ隊に暴力を振るう。よりによってこんなにひどい政府を相手に、原発輸出など安倍政権に進めさせて良いのでしょうか。
さらにこの政府は安全思想も著しく欠如しています。そのことがはっきりしたのがこの5月13日にソマ炭鉱で起こった悲惨な事故です。これまで301人の死亡が確認されていますが、安全対策にかなりの落ち度があったことが死者を拡大した要因であることが明らかになっています。

こんなところに危険な原発を建てさせてはいけない。もちろんあらゆる国への輸出に反対ですが、とくに人権意識も安全思想も欠如したトルコ政府に原発建設を進めさせるのは最悪です。
チェルノブイリ原発事故で被曝し、苦しんできたトルコの多くの人が反対運動を続けるでしょうが、再び、三度、政府が強権を発動し、治安部隊に暴力を発動させることは明らかです。そんなことをけして許してはいけない。
私たちには福島原発事故で世界に大量の放射能汚染をもたらしてしまった国に住まうものとしての責任からも日本からの原発輸出を食い止める義務があります。トルコ政府の暴力を止める責任だってある。そのためにもこの間トルコで起こっていることをしっかりと把握しておきましょう。幾つかのニュース、動画などを紹介しますのでぜひご覧ください。

まずはNHKのテレビニュースを紹介します。

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トルコ 反政府デモから1年 衝突相次ぐ
NHK 20140601
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140601/k10014885151000.html

トルコでは、去年、エルドアン政権に抗議するデモが行われてから1年となるのに合わせて、31日、各地で大規模な抗議集会が呼びかけられ、治安部隊が催涙弾などを使ってデモ隊の抑え込みを図ったことから、衝突が相次ぎました。

トルコでは去年5月、最大都市、イスタンブール中心部の「タクシム広場」の再開発に反対するデモが起きたことをきっかけに、エルドアン政権に抗議するデモが全国に広がりました。
抗議デモが本格的に始まってから1年となる31日、若者らがタクシム広場で大規模な抗議集会を呼びかけ、治安部隊は周辺におよそ2万5000人の隊員を配置するなどして広場を封鎖し厳戒態勢をとりました。
デモ隊が広場に入ろうとしたため、治安部隊が催涙弾や放水車を使って抑え込みを図ったことから、広場周辺で衝突が起き、地元メディアによりますと、けが人が出ているほか、およそ80人が拘束されたということです。
また、首都アンカラや西部のイズミールなど各地でも大規模な抗議集会が呼びかけられ、デモ隊と治安部隊の衝突が相次いでいます。トルコでは、ことし3月に政権がインターネットのツイッターなどを遮断する措置をとったことに対し、反発が高まったほか、先月には西部の炭鉱で起きた爆発事故で300人以上が死亡し、政権の安全対策の不備が指摘されるなど、政権への批判が後を絶たない状況が続いています。

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続いてFNNのテレビニュースと、AFPの報道をご紹介します。
AFPの記事の中で注目していただきたいのは、エルドガン首相が、抗議の声を上げるトルコ市民にこのように言い放っていることです。
「参加すれば、強制排除を指示されている治安部隊が、AからZまで必要なことはすべて行うだろう」・・・デモ参加者を暴力で脅すこの首相は本当に最悪です!

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トルコ反政府デモから1年 各地で警官隊とデモ隊の衝突広がる
FNNnewsCH 20140601
https://www.youtube.com/watch?v=Ofuj0gqEqxU
反政府デモから1年、トルコ各地で大規模デモ 催涙ガスや放水も
AFP BBNews 2014年06月01日 10:00 発信地:イスタンブール/トルコ
http://www.afpbb.com/articles/-/3016447

【6月1日 AFP】トルコの首都アンカラ(Ankara)とイスタンブール(Istanbul)で31日、昨年の反政府デモから1年になるのに合わせて抗議デモが行われ、集まった数百人規模のデモ隊に対し警官隊が催涙ガスと放水車を使用した。
現地のAFP記者によると、昨年8人が死亡、数千人が負傷する暴動が発生したイスタンブールのタクシム広場(Taksim Square)近くで、警官隊とデモ隊が衝突。デモ隊は、「タクシム(広場)はあちこちにある。抵抗勢力はあちこちにいる」と叫んでいたという。

首都アンカラでも、花火を投げつけるなどしたおよそ1000人のデモ隊を排除するため、治安部隊が催涙ガスと放水車を使用した。
これに先立ち、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相は、抗議デモを阻止するために、当局は「必要なことはすべて」行うと警告していた。
同大統領は、イスタンブールで行われた集会に参加した数千人の支持者らを前に、「国民全員に告ぐ。騙されてはいけない。それは環境保護団体の運動ではない。そこに誠実さはない」と述べ、「参加すれば、強制排除を指示されている治安部隊が、AからZまで必要なことはすべて行うだろう」と警告した。

■海外メディアに対する圧力も
イスタンブールでは、タクシム広場周辺やその他の場所の警備が強化され、およそ2万5000人の警官が配備された。タクシム広場に通じる道路は閉鎖され、公共交通機関は運行が縮小された。
タクシム広場周辺の緊張が高まる中、海外メディアに対する圧力も強まった。米CNNテレビの取材班は、同広場で生中継をしていたところを警察に阻止され、一時的に拘束された。
CNNのアイバン・ワトソン(Ivan Watson)記者は、マイクロブログのツイッター(Twitter)で、「CNN取材班は、30分後にトルコ警察から釈放された。拘束中に私に膝蹴りした警官について、別の警官が謝罪した」とつぶやいた。
当局は、すでに65人が逮捕されたと発表している。
(c)AFP/Philippe ALFROY

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さらに注目していただきたいのは、この5月31日の行動が、単にイスタンブールでの大規模なデモ弾圧から1年目だったから起こっただけでなく、ソマ炭鉱で300人越す方たちが亡くなったから、しかも炭鉱の安全性が著しく欠如していたためにこれほどの犠牲者が出たからでもあります。
エルドガン首相はこのときこんなことを言い放っています。「炭鉱での事故は世界各国で起きており、トルコのケースはまだましだ」!・・・なんてひどい!
しかもエルドガン首相が、安全対策を怠ってきたこの炭鉱のオーナーと癒着していることも明らかになっています。以下、ニュース面の左上をクリックすると動画がみれますのでご覧下さい。

鉱山爆発280人超死亡…各地で反政府デモ
日テレニュース24 2014年5月15日 23:36
http://www.news24.jp/articles/2014/05/15/10251226.html#
もちろんデモ隊弾圧のひどさも際立っています。昨年5月末のデモでは警官隊がガス銃を繰り返し水平撃ちしました。ガス銃は建前上、群衆の「興奮」をおさえるために使用するとされているもので、直接、人に当たることのないように、上に向けて撃つことが義務付けられているものです。
しかしトルコの警官隊は明らかに頭部を狙い撃ちしているのです。だからたくさんの人が頭部に裂傷を負って命を奪われている。しかも警官隊の攻撃は見境がない。デモ隊の周りにいる通行人までもが狙われるのです。このときも買い物に来ていた15歳の少年が頭を狙われ直撃されました。
少年はそれから何か月も昏睡状態を続けましたが、ついに今年の3月11日に亡くなってしまいました。実はこの日は僕がトルコのシノップを訪れて講演させていただいた日でもありました。そのため講演の後、僕もシノップの町中で行われた虐殺抗議のデモに参加しました。一生忘れません!
以下、アメリカのCNNのカメラがイスタンブールでの少年の葬儀の様子を捉えているのでご覧下さい。英語放送です。

催涙弾で負傷の15歳少年死亡
CNN.co.jp 2014.03.12 Wed posted at 09:31 JST
http://www.cnn.co.jp/video/12485.html

もう一点。やはりCNNが貴重な映像を流しているのを知りました。昨年5月末のデモの時、警官隊がデモ隊のそばを歩いていた「赤いドレスの女性」に催涙ガス(ペッパーガス)を吹き付けているシーンです。
これもあまりにひどい。ドレスを着た女性に、ガスマスクやプロテクターを付けた屈強な警官が襲いかかっているのです。問題のシーンは写真で残っているのみですが、丁寧な取材が行われています。これも英語放送です。

「赤いドレスの女性」 トルコ反政府デモのシンボルに
http://www.cnn.co.jp/video/11129.html

これらを見ればいかにトルコ政府が野蛮であるのかがよく分かると思います。買い物にきていただけの少年や、ドレスを着て歩いていただけの女性に襲いかかる。人間としての倫理観、正義感が崩壊しています。
にもかかわらずトップセールスで原発を売り込んできた安倍首相はまったくこれらのことに言及しようとしない。相手がどんな酷いことをしていようとも平気で危険な原発の売り込みをする。「死の商人」そのものです。
安倍首相は事実上、エルドガン政権の暴力を頼みに、シノップに原発を作ろうとしているのです。彼もまたこの件だけをみても明らかに倫理観が欠如しています。

ちなみに僕はトルコに行ったときに、繰り返し「私たちの国の首相は大嘘つきです。どうか騙されないでください」と訴えました。すると講演の後にトルコ人男性が僕に近寄ってきてこう言いました。
「いやいやうちの国の首相も大嘘つきだから」・・・。まさに大嘘つきの二人、どこか似た者同士の二人が取り決めたのがシノップへの原発輸出なのです。
このとき、強権的なエルドガン首相に抵抗してきたトルコの人々が、安倍首相の本質をもいち早く見抜いていることが強く伝わってきました。トルコの人々は安倍首相の安全宣言などに騙されていない。だからむしろ安倍首相はエルドガン首相の暴力を頼みにしているのでしょう。

そんなこと、とてもではないですが許すことはできません。トルコの人々と一緒になって原発建設を食い止めましょう。大嘘つきが首相になっている両国のひどいあり方を一緒になって変えていきましょう。

Power to the People!