守田です。(20140603 12:00)
大嘘を平気でつき、ありもしない想定をヒステリックに叫び、まっとうな意見には一切耳をかさずになんでも意のままに動かそうとする安倍政権。
今度は原子力規制委員会のメンバーをきわめて恣意的に変えようとしています。
具体的には田中知(さとる)東京大大学院教授を委員に加えようとしているのですが、これまで政府が公に約束してきた選考基準を反故にして選定を強行しようとしているのです。
というのは政府は原子力行政に対する強い批判にさらされる中で、原子力規制委員会を発足させる際に、規制委員会の独立性や中立性を保証すると公言しました。
僕は、実際には今でも、とても独立しているとも中立しているとも言えないと思っていますが、それでもこれまでは、原子力村からの独立の要件として委員になる資格のない「欠格要件」が二つ決められており、守られてきたのです。
そしてそのもとで、地震に関する一定の厳しい見解が打ち出されたりもしており、安全性など全く無視してただやみくもに再稼働をのぞむ経済界からブーイングがあがったりしていました。
安倍首相は、こうした状況に対し、独立性や中立性の建前そのものを全く無視する人事を強行しようとしています。
欠格要件とは、委員に就任する前の3年間に、原子力事業者や関連団体の役員・従業員だったもの、同じく直前の3年間に、原子力事業者から50万円以上の報酬を受け取っていたものです。
安倍内閣が委員会に押し込もうとしている田中知東大教授は、2010年から12年、「日本原子力産業協会」の理事を担っていました。政府自身が「電力会社と強いつながりのある団体」と名指した協会です。
また2011年度に「東電記念財団」から50万円以上の報酬を受けていました。要するに完璧に欠格要件に一致しているのです。
にもかかわらずというか、だからこそとも言えるでしょうが、安倍首相はこうした人物を委員会に押し込んで、意のままに再稼働宣言を出させようとしているのです。
あまりにひどい。世の中を愚弄している。世界に向かって大嘘を平気でつき、政府がかわした約束も簡単に反故してしまうこの首相の、まっとうな倫理観が完全に欠落させた蛮行にみんなで異を唱えましょう。
具体的な行動として緊急署名が呼びかけられています。6月5日午前9時までと期間が非常に少ないですが、ぜひご協力ください。
また本日(3日)午後6時半から8時まで、首相官邸前での緊急抗議行動も呼びかけられています。僕は京都市在住なので参加できませんが、東京方面で可能な方、どうかよろしくお願いします!
ただ一点、大事な点を押さえておきたいと思います。
安倍首相による次から次へと繰り出されるひどい政策に、政府が強大になっていると感じられる方もおられるかもしれません。確かに一面的にはそうです。ひどく歪んだ選挙制度のもとでの「絶対多数の議席数」を背景に横暴が繰り返されています。
しかしこの間、この安倍首相の横暴自身が、この国の民主主義の底力を呼び覚ましてもいます。僕はその例のひとつが、福井裁判所が出した大飯原発の運転を認めない画期的な判決だったと思います。
これまで司法はほとんどこうした真っ当な判決を出してはくれなかった。いくら多くの人々が原発の危険性を指摘しても、まったく無視して、運転に法的許可を与えてきてしまいました。この国の司法はこんなにひどいのかと悲しく淋しい限りでした。
福井判決はそこからの大きな転換とも言えるもので、僕はおそらく今、全国の裁判官、司法家たちの胸を激しく揺さぶっているに違いないと思います。
端的に言って、政府に逆らわなければ、この世の栄達が保障される。しかしそんなことを続けていて良いのか。これ以上、人々を危険にさらし続けて良いのか。まっとうな司法家として、司法の理想を掲げ、法の力を指し示すべきではないか。そんな問いが生まれているに違いない。
しかも非常に重要な点は、この福井地裁の判決が、実は原子力規制委員会が出している「原子力災害対策指針」への真っ向からの批判にもなっている点です。
福井地裁は、ひとたび原子力事故が起これば、半径250キロにまで被害が及ぶことを認定し、その範囲内の原告の訴えを認めました。これに対して規制委員会が想定している事故は、原発から30キロ圏内の人々のみが避難しなければならないというものにすぎないからです。同判決は明らかに規制委員会の甘い想定を真っ向から批判している。
この点はまた稿をあらためて論じますが、原子力規制委員会の面々は、この判決に唸り声を上げているはずです。この判決内容があまねく社会に浸透していけば、再稼働の大前提としている災害対策の抜本的見直しが必要だという事実、実際には安全面から到底、再稼働を容認する余地などないことが見えてくるからです。
同時に非常に重要なことは、原子力規制委員会の現委員とて、人間としてこの判決に晒され、心にさまざまなさざ波を受けている可能性が高いということです。今、私たちの国にいる人士、とくに何らかの社会的ポストを持っている人々のすべてが、この世の栄達にしがみつくのか、それともまっとうな正義の道を歩むのかが問われている。
だからこそ今、安倍首相は、絶対に権力に逆らわない人物、もっと言えば、権力におもねり、嘘を言いつづけ、人々を危機に晒しても、なんら心に痛みを抱くことのない人物を強く欲しているのです。安倍首相がどんな嘘をつこうと平気で「そうだそうだ」と言い続けられる人物をです。
そうなるとこれまで原子力村にどっぷりつかってきて、なおかつ電力会社から報酬をもらってきたような人物でないと信用できない。それでまさに「欠格要件」にピッタリとはまる人物が浮上してきてしまうのです。
ここにはある意味で安倍政権の最大の弱点が如実に表れている。最大の弱点とは大嘘つきであること、何をやろうとしてもまっとうはことが言えないこと。いやんや人の胸を打つことなど何も言えないことです。
むしろ常に徹底的に開き直り、常に相手の言うことにまともに応ぜずに屁理屈をこねくり回し、その上で、数の暴力だけでことを押し進めようとする。理性的にはとても説明のできないことを平気で遂行していく。そのあり方そのものが最大の弱点なのです。
これに対して私たちが行うべきことは、常に真っ向から正々堂々と正論を掲げて立ち向かうことです。数の暴力に屈してはいけない。まっとうな論が通らないことにひるんではいけない。今はとても大事な時です。
これまで権力サイドについてきた人々を含めて、本当にたくさんの人々が生き方を激しく問われている。それが現在です。歴史の転換点です。だからたとえ一見、孤立しているかのように感じても、今は、絶え間なく正義の声を上げる必要がある。高々と上げる必要があります。
Power to the People!
頑張りましょう!
緊急署名、抗議行動への協力をお願いします!
以下、具体的な行動を提起しているメールを転載します。
夕べ遅くに、FoE JAPANの満田さんが送りとどけてくださったものです。
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みなさま(重複失礼、拡散歓迎)
FoE Japanの満田です。夜分に失礼します。
原子力規制委の人事案が政府から示され、国会で審議されようとしています。
なかでも問題なのは、田中知氏の人事案。
これを就任を認めてしまえば、原子力推進派はやりたい放題。
今だって問題だらけの形だけ審査をやっている原子力規制委員会ですが、「原子力村の、原子力村による、原子力村のための」原子力規制と化してしまいます。
何よりも、政府は自らがつくった規制委の人事のルール(原子力事業者/関連団体出身ではないこと、原子力事業者等からお金をもらっていないこと)を守るべきではないでしょうか?
ということで、以下のような緊急署名を始めました。
「こんな人事案は認められない!」「3・11を忘れるな!」という声を国会に届けましょう!拡散お願いします。
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【緊急署名】 原子力規制委 原子力ムラ人事案にノー!
国会議員のみなさま
原子力規制委員会の人事案に反対をしてください!
署名フォーム1(PCのみ):http://goo.gl/KvgRwo
署名フォーム2(携帯&PC)https://pro.form-mailer.jp/fms/0f88850f59845
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締切:6月5日(木)朝9時
★この署名は、6月5日(木)午後に、主要な国会議員の事務所に提出予定です。ぜひ、提出行動にもご参加ください。
提出行動集合 14:30に、参議院議員会館ロビー
★提出行動のあと、15:30から衆議院第二議員会館前で抗議行動を行います。こちらもぜひ!
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政府が国会に提示した原子力規制委員会の人事案に反対してください。
とりわけ、田中知氏は「原子力ムラ」の中心人物であるばかりか二重の意味で、原子力規制委員会の委員として欠格です。
1.2011年から2012年にかけて、「原子力産業協会」の役員を務めていた。
2.日立GEニュークリア・エナジーや東京電力の関連団体から献金や報酬を受けていた。
2012年7月3日に内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室が出した文書の「欠格要件」に関する記載には、「就任前直近3年間に、原子力事業者及びその団体の役員、従業者等であった者」とあり、政府の関連文書に列記された団体には「原子力産業協会」が明記されています。
また、同文章には、「就任前直近3年間に、同一の原子力事業者等から、個人として、一定額以上の報酬等を受領していた者」としています。
今回の人事が強行されれば、「原子力ムラ」の公然たる復活であり、福島原発事故がなかったかのような暴挙にほかなりません。
政府は自らが定めたルールを守るべきです。
国会議員には、一人ひとりの良識を発揮して、このとんでもない人事案に対して反対することを求めます。
呼びかけ団体:
原子力規制を監視する市民の会
脱原発福島ネットワーク
原発いらない福島の女たち
ハイロアクション福島
福島原発30キロ圏ひとの会
反原発・かごしまネット
FoE Japan
福島老朽原発を考える会
核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団
核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
柏崎刈羽原発反対地元三団体
原発からいのちとふるさとを守る県民の会
※問い合わせ先
原子力規制を監視する市民の会
TEL/03-5225-7213 FAX/03-5225-7214
〒162-0822 東京都新宿区下宮比町3-12明成ビル302号
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★下記の通り、原子力規制委の人事案に反対する抗議行動を行います。ご参加ください。
【明日!】・日時6月3日(火)18時30分~20時、
・場所:首相官邸前(国会議事堂前駅)、
・呼びかけ:原子力規制を監視する市民の会 http://goo.gl/SzHRiL
・日時:6月5日(木)15:30~16:30
・場所:衆議院第二議員会館前
・呼びかけ:原子力規制を監視する市民の会
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【関連情報】
[談話]田中知氏の原子力規制委員会委員への任命案について(原発ゼロの会)
http://genpatsuzero.sblo.jp/article/98410602.html
[社説]規制委人事案 撤回も視野に再検討を(5月31日、北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/542587.html
規制委員候補に電力側から報酬 田中教授、50万円超(5月27日、共同)
http://www.47news.jp/CN/201405/CN2014052701002272.html
[書き起こし]規制委の「中立」基準 適用せず
(5月30日、東京新聞「こちら特報部」)
http://magicmemo.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/580-2044.html
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満田夏花 MITSUTA Kanna <kanna.mitsuta@nifty.com>
携帯:090-6142-1807
※【新刊案内】ブックレット<「子ども・被災者支援法」と避難の権利>
20mSv撤回運動/自主的避難と賠償/避難・帰還政策および被災者支援について一冊のブックレットにまとめました。
http://e-shift.org/?p=2981
※「避難の権利」ブログ
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/
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- 原発再稼働, 反原発・脱原発・原発ゼロ