守田です(20211122 23:30)

● くい損傷が2007年(14年前)中越沖地震によるもの?

またしても原発で深刻な事態が明らかになりました。柏崎刈羽原発6号機原子炉建屋につながる「大物搬入建屋」を地中で支えるくいが損傷していたのです。

くい損傷を報じるNHK

この建物は原子炉で使う核燃料の出し入れなどに使う設備で、東電によれば太さ1.8m、長さ12メートルの鉄筋コンクリート製のくいを岩盤に8本打ち込んで基礎部を支えています。
くいの中には直径3センチの太い鉄筋が18本、円形状に入っており、周囲をコンクリートで固めていますが、このうち7本が折れ、11本が変形していました。

TEPCO(東京電力)によるくい損傷の説明

この件は11月2日に東電から規制委員会に伝えられ、4日に柏崎刈羽原発所長の定例会見で初めて報告、その後、規制委員会より10日の定例会合で発表されました。規制委は2007年の中越沖地震によるものとの可能性を示しました。
新潟日報は県の技術委員会委員の談話を交えてこう伝えています。

「県技術委員会委員の田村良一新潟工科大教授(耐震工学)は、くいの損傷という事実に驚いた。
『地震でくいが損傷した事例は、1964年の新潟地震や1995年の兵庫県南部地震でもあったが、滅多にあることではない』と指摘。『一般の建物より安全に造ると思っていた原発で損傷したのがびっくりだ』と話す。」
「元県技術委委員の鈴木元衛さんも『くいが損傷すれば揺れが不均衡になる。隣接の原子炉建屋の揺れ方にも影響しかねず、簡単な話ではない』と強調する。」
「6、7号機には他にもくいを持つ構造の施設がある。中越沖地震では、くいを持つ変圧器で揺れの影響による火災が起きた。耐震重要度の低い施設を甘く見たことが遠因だった。」

新潟日報 2021年11月11日より

● このくいだけでなく他にも損傷が見逃されている可能性が

今回、くい損傷が発見されたのは、それまで耐震性を問われていなかったこの建物が、新規制基準で耐震性を求められ、そのための補強工事のための周辺の掘削が行われたからでした。
しかしそうなるといろいろと問題が出てきます。一つにこの損傷が14年間も把握されていなかったのに、原子力規制員会が2017年に柏崎刈羽6号機、7号機に再稼働を認めたこと。
要するに規制委員会は、地震の深刻な影響を見逃していたのです。恐ろしい事態です。

柏崎刈羽原発に原子力規制委員会が再稼働の許可を与えたことを報じるANN

しかもこの損傷は、周辺を掘ってみないと分からないものでした。6,7号機そのものは「固い岩盤の上に直接建屋を建てている」とのことでくいを持っていませんが、周辺には他にもくいが使用されている建物があります。
それらの建物でも、地震による損傷が見逃されている可能性があります。だとすれば、他のくいを打ち込んだ建物も、すべて周辺を掘削してみるべきです。
にもかかわらず今回、規制委員会は理由を明確にしないまま「その必要性はない」と断じました。これはおかしい。損傷の可能性が見えながら調査をしないと言うのです。

ここには規制委員会の自己防衛が働いている可能性が強く疑われます。調査を進めてさらに損傷が見つかった場合、そんなボロボロの原発になぜ再稼働の許可を与えたのかという批判が当然にも起こってくるからです。
規制委員会が本当に安全のことを考えているのならば、自らの見逃しの検証を含めて、さらに地中のくいの点検に向かうはずですが、それをせずにこのまま、この件に関する幕引きを図ろうとしているのではないでしょうか。
しかしそういう姿勢が、電力会社が少しも「規制」を守ろうとせず、「不祥事」が何度も起こる状態を生み出しているのです。

想定を大きく超えた揺れが原発を襲ったことを報じる朝日新聞

● そもそも衆院選直後を狙った発表がいかがわしい

もちろんもっと陰湿な隠蔽体質を持っているのが東京電力です。今回の発表のあり方にもよくあらわれています。総選挙後の11月2日というタイミングで規制委員会に報告し、4日に所長の定例記者会見で発表したからです。
これは福島第一原発のサイトからの、放射能汚染水の海への漏れ出しを、東電が最初に発表したのが、2013年7月22日だったことを彷彿とさせます。前日が参院選による与党自民党の圧勝、民主党の惨敗の日だったからです。
当然にも翌日以降の新聞は、選挙関連の記事で埋め尽くされていました。東電は明らかにそのタイミングを狙ったのですが、今回も総選挙直後に発表がなされました。

東電は2013年7月21日の参院選投開票日の翌日に汚染水漏れを公表した 日経新聞20130723

しかも東電はこの時、9月に業務用の車両が誤った通行証を使っていたことを見逃し、原子炉建屋などの重要エリアに通じる「周辺防護区域」にまで入り込んでしまったことと抱き合わせで、くいの損傷を発表しました。
他人のIDカードを使った中央制御室への不正入室問題などを考えたとき、この問題とて確かに重い意味合いを持っていますが、しかしこれがハイライトされたために、新潟日報の見出しは「車両通行証誤使用見逃す」のみになっています。
くい損傷の問題は小見出しで紹介されているだけで、人の注意を引きにくい構成になっていました。残念ながら、東電が狙った通りの紙面だったのです。

柏崎刈羽原発所長の会見を伝える新潟日報 2021年11月5日

常に安全よりも自社の儲けを優先する東電は、地震の点検のためにあちこちを掘削することなどやりたくないのです。また他の施設も点検を進めることなど、規制委員会もやりたくないことも見通しているのです。
だからこそ、かなり前から発表の仕方を考え抜き、選挙直後に発表の日をしつらえ、なおかつ車両の問題と抱き合わせにし、さらに本格的な発表を原子力規制委員会にさせて、追加的な調査など必要ないと結論づけさせたのです。
ひょっとしたらすべてが規制委員会と示し合わせた出来レースだったかもしれません。新聞社のみなさん。こここそ掘り下げなくてはダメです!こういう東電のマスメディアコントロールを見破り、暴かないといけない。

ともあれ東電と規制委員会に委ねていたら、危険性が深まるばかりです!東電に原発を動かす資格はないし、規制委員会に規制当局を名乗る資格も規制を実行する資格もありません。このことを突き出していきましょう。

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