守田です(20210922 23:30)

● 伊方原発職員の長きにわたる不正が内部告発で露見

伊方原発3号機で本年7月に大きな不正が露見しました。2016年~2020年にかけて、伊方原発に勤務する社員が、当番中に不正に発電所外に出ていたのです。
しかも2017年3月から19年2月の間、3号機稼働中の2回を含む5回では、緊急時対応要員22人が満たせない状況になっていました。明確な「保安規定違反」です。
この社員は「配管接続班長」でもありました。重大事故時に炉心に冷却水を供給する役割を担っていた班長だったのです。それが原発の稼働時にすら不正に原発から出ていってしまっていた。

しかも勤務中の外出は合計46回にも及んでいた。その多くが不正であった可能性が濃厚です。明らかにこんなことが「状態化」していたのです。
なお社員は何をしていたのかというと、車にガソリンを入れに行ってたのだそうです。その時、社用車用のガソリンを合計で38万円相当も自分の車に入れてしまっていた。
このことが露見したため、すでに本年1月に依願退職させられています。それが重大事故対応を担うとされた「配管接続班長」だったのです。


問題を報じる読売新聞

● 再発防止策が明らかにしている安全精神の崩壊

これに対して9月10日に出された四国電力が出された「再発防止策」がまた酷い。
「宿直時の点呼の頻度を高め」「GPS付スマートフォンによる宿直者の所在確認」「無断外出に使われた社有車の管理強化」・・・。
社員が不正を働かないように、締め付けを強化しようというのです。しかしそんな「疑い」を前提にした締め付けは安全文化の崩壊を進めるだけです。

そもそも問題は「配管接続班長」が、これほど安易に外に出てしまっていたことにあるとともに、明らかに誰も咎めようとしなかったことにもあります。
こんなに何回も不正外出があったのに、気が付かなかったというのなら、誰もが職場の在り方になんの関心も持っていないことを意味します。
要するに安全文化が内側から崩れているのです。この根本要因にメスを入れずに社員を締め付けても、必ず同じようなことが起こるし、そもそも重大事故への対処に社員がまともに向かえるはずがありません。


報告書提出を報じる愛媛新聞

● ひどい規制のあり方が構造的な不正を生み出している

ではなぜこんなひどい不正がまかり通り続けてきたのか。答えは明確です。そもそも再稼働に向けて、あまりに無理なことや不正が繰り返されながら、電力会社と規制当局事態にごまかされているからです。
例えば、今回、伊方原発3号機は「テロ対策施設」が設置できなかったから運転停止に至っていたのですが、本来、いつまでに作らねばならなかったのかというと2018年だったのです。
ここももっと説明がいる。そもそもこの施設は、正しくは「特定重大事故等対処施設」で、2013年に定められた新規制基準で設置が義務付けられたのです。


特定事故等対処施設設置期限の変遷

ところが当時、西日本に主力の加圧水型原発をはやく動かしたかった原子力規制委員会は、この施設の設置を新規制基準施行から5年後と大甘の猶予を与えてしまったのでした。
にもかかわらず、この施設は2018年にすら完成しなかったのですが、そうしたらさらに「設置許可を出してから5年」と期限が延ばされた。しかしこの大甘を重ねた期限すら四国電力が守らず、3月22日に期限が切れてしまったのです。
つまり四国電力は2011年3月11日の事故からなんと10年経っても、この施設を作らないまま、何度かの稼働を行ってきたわけです。あまりにひどいのですが、これらの過程を一貫して社員たちは見ています。


特定事故等対処施設設置期限の変遷

● ウソツキの規制委員会と電力会社が社員の不正を止められないのは当たり前

しかも「テロ対策施設」という言い方にも大きなウソが含まれています。フィルターベントの設置など、重大事故対策のための装備が大きく含まれているからで、それを「テロ対策」などというのはウソつきの仕業です。
また伊方原発が深刻な事故を起こした時に、とてもではないけれど周辺住民が安全に逃げることなどできない。とくに伊方原発より先にいる佐田岬半島の人々5千人は海が荒れたら逃げ道は皆無です。なのに稼働が強行されてきた。
そもそも最悪の場合には、放水銃で放射能を打ち落とすとされているのですが、そんなことまともにできるわけがない。実は現場社員こそが、それを一番良く知っているのです。


関西電力ホームページに掲載された放水銃 こんなものは事故対策とは言えない!

このように伊方原発は、いや全国の原発が矛盾だらけです。にも関わらず電力会社はウソを重ねて運転を強行し、原子力規制委員会もたびたびウソに加担している。でもそれでマスコミは騙せても社員を騙すことなどできません。
にも関わらず、自分たちだけルールを守れと言われて、どこまで守れるでしょうか?とくに「配管接続班長」などになると、こうしたごまかしを嫌と言うほど知り、自らも加担してしまっていたでしょう。だから平気でルールを破るようになってしまった。
これが不正が止まない構造的な理由です。大元にある再稼働のための大ウソを正さないと不正は無くならない。でもこれを正したらもう稼働はできないのです。だからもはや全国の原発を直ちに止めるしか道はない。このことを訴え続けましょう。


奮闘する「伊方原発をとめる会」の人々。次回、詳しくお伝えします!

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