守田です(20210422 23:30)

● 被爆二世宣言、お読み下さい

みなさま。今回は歴史的文章をご紹介します。「被爆二世宣言」です。1977年6月に関東被爆二世連絡協議会(準備会)から発せられました。ともあれご覧下さい。

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被爆二世宣言

私達被爆二世は、みずから「被爆二世」としての自覚を持って生きてきただろうか。差別や偏見を恐れ、「被爆二世」と名乗ることをためらってきた私達。健康だから、自分には関係のない事だと考えてきた私達。健康の不安におびえつつ毎日を送りながら、しかしそれをぶつける場もなく埋没していた私達。差別や偏見に泣きながら、それに何らの対応もできないでいた私達ではなかったか。

自分は「被爆二世」ではないとみずからにいいつづけなければ生きてこられなかった現実。それが私達に「被爆二世」であることの表明をためらわせてきた。

だが、みずからを隠すことで、あるいは、みずからの立場を自覚しないことで何かの良い事があったというのだろうか。そうではなかったはずだ。隠している時にはいつ、明らかになるかという不安におびえねばならない。死ぬまでおびえつづけなければらなないというのか。みずからの立場を自覚しないという事は、みずからに起こっている事態を認識できないということを意味する。つまり、いざ具体的に差別なり何なりの問題にぶちあたった時に、それに負けてしまうことになるのだ。

差別や偏見自体を認めようというのか。自分が「被爆二世」を名乗れずにいる間にも、私達の健康破壊はすすみ、差別や偏見も増大していくのだ。また、自分たちの健康に無知であることも、それを無視した労働も、自分自身を痛めつけ、苦しめ、そして仲間をも、同様の苦しみに追いやっていくことになる。

被爆二世であることで、差別する、偏見をもつ社会こそを変えていかなければならないのだ。だまっていては何も変わらない。ただ自分たちの苦しみが増していくばかりだ。そして、それが、私達の子孫にまで及んでいこうとしている。今こそ、私達は、自分たちが何故苦しまねばならないのかを明らかにし、それを解決するために全力をそそがなければならない。

私達の命は、明日あるかどうかはわからない。しかし、この今日を、この明日を生きていくためには、また本当に”人間として”生きていくためには、みずからがまず「被爆二世」と名乗ることによってこの現実を打破するためにたちあがらなければならない。

われらは今ここに宣言する。”被爆二世である”ことを。

関東被爆二世連絡協議会(準備会)

● 宣言のよびかけるもの

みなさん。どのように思われましたか?44年前に出されたこの宣言は『被爆二世宣言』創刊号の巻頭に載せられたもの。宣言を編んだのは被爆二世の森川聖詩さんと、西河内靖泰さんです。
1977年6月に出されました。私事になりますが、この年月は高校3年生だった僕が生まれて初めて集会とデモに参加した時でもあり感慨深いです。宣言の月日と僕のスタートが重なっていることを光栄に思っています。
宣言は「被爆二世」に自ら名乗りを上げることを呼びかけています。呼びかけて、被爆の遺伝的影響と真正面から向かい合い、同時に被爆者や二世への差別、偏見と立ち向かい、人間らしく、堂々と生きることを求めています。

「被爆の遺伝的影響」と言われてみなさんはどのように思うでしょうか。僕は間違いなくあると思っています。もちろん現れ方は人それぞれによって違います。それらしいものを感じない方もおられます。それも含めて確かに「ある」のです!
この影響の詳細なあらわれを僕が世話人として参加している京都「被爆二世三世の会」でアンケート調査で調べているところです。すでに2回目に踏み込んでいて、具体的にどういうことが傾向的につかめるのかの抽出を進めています。
詳しくは以下のファイルをご覧下さい。http://aogiri2-3.jp/chousa/2020chosa.pdf

実はこのアンケートに「被爆二世宣言」を編まれた森川さんと西河内さんが深く関わられています。あれから40年余り、紆余曲折を経た上ですが、森川さんは今度は書物の形で新たな「被爆二世宣言」を出されました。
著書『核なき未来へ~被爆二世からのメッセージ』(現代書館)を通じてです。西河内さんの強い勧めで書かれたこの本の中で、森川さんは二世として、ご自身の身体に起こったことを赤裸々に書かれました。
京都「被爆二世三世の会」の今回のアンケートは、この森川さんの体験に沿って「あなたの身体にこういうことはおきてきませんでしたか?」と問う形で始まります。

その意味で1977年6月に出された「被爆二世宣言」と、現在私たちが進めている「被爆二世三世健康アンケート」調査は同じ志向性を共有しています。
被爆被害をしっかり認識し、真正面から向き合い、だからこそ乗り越えることで、より人間らしく、堂々と生きようという志向性です。
宣言はそれを呼びかけています。森川さんの近著、『核なき未来へ』もそうです。

● 宣言のあなたにとっての意味

さて今回の記事のタイトルで、僕は「被爆二世宣言」を「あなたにお届けします!」と書きました。その意図にお気づきでしょうか。
端的に言います。被爆、そして被曝の被害はこれを読んでくださっているあなたのものでもあるからです!あなたもヒバクシャなのです。ぜひその自覚にお立ち下さい。
なぜか。私たちは2000回以上の核実験にさらされてきたのです。ものすごい規模の放射性物質が撒かれ続けたのです。その中で私たちは生を受け、生きてきたのです。

核実験だけではありません。スリーマイル島、チェルノブイリと原発事故もまた繰り返し起こされました。そればかりではなく、核廃棄物の不法ですざんな投棄もありました。核兵器工場の火災もありました。原子力潜水艦の沈没などもありました。
それやこれや、私たちの地球は何度も何度も、放射性物質で汚されてきたのです。その中で私たちは汚染された水と食べ物を採り入れてこざるをえなかったのです。
そのうえに私たちは福島原発事故に直面してしまいました。住まうところでの「濃淡」の違いはあるとはいえ、私たちの多くが大気から、海から、食べ物から、福島由来の放射性物質を採りこんでしまっています。

だから再度言います。あなたはヒバクシャなのです。あるいはヒバクシャの二世、三世・・・なのです。私たちは親世代が被曝し、胎児のときに被曝し、その後も直接にも被曝している。たくさんのリスクを負っています。
だからみなさん、ぜひ「被爆二世宣言」を自分事としてお読み下さい。福島原発事故での被災者を、岡山県在住の医師、三田茂さんが「新ヒバクシャ」と命名しています。だからこう言いましょう。

「私達の命は、明日あるかどうかはわからない。しかし、この今日を、この明日を生きていくためには、また本当に”人間として”生きていくためには、みずからがまず「新ヒバクシャ」と名乗ることによってこの現実を打破するためにたちあがらなければならない。
われらは今ここに宣言する。”新ヒバクシャである”ことを。」
この自覚を持ってこそ、私たちは私たちを襲ってくる命の危機と立ち向かえる。だから堂々と生きれる。リスクを正面から受け止めてこそ、私たちは能動的に生きれるのです。

だから、いま、この核の時代において、核の被害をともに背負ったものとして、だからこそ、核なき未来を、ともに手繰り寄せうる仲間として、私たちは、結合しましょう!
そのようなものとして「被爆二世宣言」をお読み下さい!

24日に京都被爆二世三世の会年次総会があります。森川さんもzoomで、西河内さんは会場で参加されます。総会には一般参加も可能です。玉山ともよさんの記念講演もあります。詳しくは以下の記事をご覧下さい。
https://toshikyoto.com/press/6225.html

#被爆二世宣言 #森川聖詩 #西河内靖泰 #核なき未来へ #京都被爆二世三世の会 #被爆二世三世健康調査アンケート

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