守田です(20200829 15:00)

しばらく新型コロナよりも桁違いに深刻で危険な放射線被曝問題にフォーカスしてきましたが、この間の社会的議論の進展を踏まえつつ、新型コロナウイルスに関する考察を再開したいと思います。
昨日の安倍首相の辞任により、旧専門家会議の新型コロナ対策が、なんでもかんでも安倍首相を擁護するためのものと、一部の方たちに曲解されてきた面も薄まると思える点も踏まえて、積極的な論を展開していきたいです。

● 新型コロナ第一波を振り返る

この病、今年の2月にはじまったころはもっと格段に恐ろしいものとして捉えられていました。3月に感染が拡大しだし、オリンピック中止が決まり、各国がロックダウンに入りだすと、日本でも強権発動を求める声も出てきました。
そんな中で4月7日に安倍首相が緊急事態宣言を発しましたが、これに向かう過程で僕は明確な反対を掲げました。
ちなみに残念なことに、法案が作られるときには反対した野党のすべてが、まさかの腰砕けになってしまい、どの一つの党も実際の宣言には反対してくれませんでした。その中で「連帯を求めて孤立を恐れず」に緊急事態宣言に反対しました。

明日に向けて(1790)緊急事態宣言に反対します!でも出されてしまったらそのもとでできることを広げよう―新型コロナの影響を民主主義的に越えるために(7)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/2cd41c657a7e4fdd3809114d5fda7c7e

僕が緊急事態宣言に反対したのは、自治体の長に強権などもたせなくても、民主主義的に事態を越えていけると確信していたからです。とくにこの頃、新型コロナ対策専門家会議に集った方たちが、積極的に民衆との対話をしようとしていた。
その姿勢の多くに共感しました。実際、専門家会議の提言は一部からは強烈な反発を受けながらも、三密を避けるなどの点で大きく受け入れられ、その中で市民全体で事態の深刻化を乗り越えられたと思います。ロックダウンなどなしにです。

同時に、この頃から僕は、「新型コロナウイルスはけしてそれほど恐ろしいものではない。しかし人間の側、社会の側の対応を間違えると、医療崩壊を生んでしまう可能性がある」とも考えていました。
一方で専門家会議への罵倒を続ける一部の人々からは、「東京はもう手遅れ」「いまのニューヨークは二週間後の東京」などと危機を煽りまくる言説が飛び交っていました。
日本赤十字病院の医師などを騙った危機煽りのチェーンメールが、全国各地で流されるなど、危機煽りのための何らかの勢力の暗躍を思わせる事態も起こっていました。

しかし実際には「東京は手遅れ」などではなかった。心配された医療崩壊は未然に防ぐことができたし、重症者の増加スピードも、医療のキャパシティを越えることのない線にとどめることができました。
ものすごく多くの人々の努力の重なりによるものだと思います。私たちはよく頑張った。その中でロックダウンなど必要なかったことを証明できたのは、世界の民主主義を守る上でも、とても大きなことだったと思います。


専門家会議を代表してNHKドキュメントで山中伸弥さんとの対話に応じる尾身茂さん 4月4日

● 新型コロナウイルスはただの風邪だろうか?

さてそれで今はどのような事態の中にあるのでしょうか。多くの人々が第二波の最中と捉えています。感染の山は下降線に向かいつつありますが、ともあれ明確なのは、第一波と比較して重症者も死亡者も格段に少ないことです。
ウイルスの弱毒化なども考えられますが、ともあれ新型コロナウイルスに関する知見が積み重ねられ、対処のレベルがあがったことも大きく結果していると思います。経験値が積み上げられたのです。
またすでに感染は大きく拡大していて、多くの人々が免疫を持つにいたったのではとも語られています。ともあれ確かに第一波と比べて、重症化が少なく、命を救うことにより成功していることは確かです。

そんな中、これらを背景に「新型コロナはただの風邪だ」という、本年の4月ごろにはごく少数だった意見がどんどん強くなっていますがさてどうでしょうか。
この点、3月4月の論稿の中で僕は「専門家会議を支持するけれども、実際には病のリスクはもっと低く見積もってもよいと思う」とも論じてきました。
その上で、新型コロナを強烈に怖いと思っている人もいるし、さまざまな形で恐怖が煽られてもいる。またまだまだ分からないことも多かったことから、民衆の合意点、一致点として専門家会議の提言に集うのが良いと考え、それを表明しました。

ただしだからと言って「ただの風邪」とも考えませんでした。なぜならこの病が指定感染症の第二類に分類されていたからです。そうである以上、感染者は指定感染症病床に隔離しなければならないのが法の定めです。それがごくわずかしかなかった。
僕がそのころ打ち出したのは、「人間の側のガードが高すぎるので、アジャストして低めることが必要だ」ということでした。それなしにいきなり対策を止めてしまうのは論外。感染者を隔離する必要があるので医療がパンクするからです。
では指定感染症第二類に分類したことが間違っていたのでしょうか?そうとも言えますが、未知の面も多かったのでそれはやむを得なかったのでは?そしてこの分類をしている以上、一時期の行動の抑制もやはり必要だったと僕は思います。


指定感染症の分類 産経新聞より

●指定感染症”分類見直し”議論

この点で注目すべきことがあります。この8月24日に行われた感染症対策分科会の会見で、指定感染症の二類の見直しの議論がようやくにして出てきていることが報告されたことです。とても良いことだと思います。
尾身茂さんはこのように述べられました。「軽症な人でもあるいは無症状な人でも感染で見つかってしまうと、今だと報告されて、行政機関は対処しなくちゃいけないわけですよね。それが実態に合うのか合わないのか」
実際その通りで、この点の論議が必要なのです。それで分類をもっと低くできれば社会的対応は格段に楽になる。この点を報じたABEMAnewsをご紹介します。なお僕の意見は、宮沢教授や出演者とすべて一致しているわけではありません。

「新型コロナの毒力・感染力からすると明らかに過剰だ」指定感染症に分類はやりすぎ!? アンチGoToキャンペーンに苦言も…ウイルス学 宮沢孝幸准教授に聞く
https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p2162?utm_medium=webl&utm_source=abematimes&utm_campaign=times_yahoo


指定感染症分類の見直しについて論じる尾身茂さん 8月25日

どうも政府もまたこの方向性を強めつつあるようです。あまりフォーカスされていませんが、昨日の安倍首相の辞任会見でも、以下のように述べられたからです。
「新型コロナウイルス感染症については、感染症法上、結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)といった2類感染症以上の扱いをしてまいりました。
これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直します。軽症者や無症状者は宿泊施設や自宅での療養を徹底し、保健所や医療機関の負担軽減を図ってまいります。」
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0828kaiken.html

この点は極めて重要な点ではないか。ぜひ注目したいです。

続く

#新型コロナウイルス #指定感染病 #専門家会議 #ワクチン

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