守田です(20200425 10:30)

(1799)(1980)で、渋谷健司氏が、WHO事務総長の感染症対策における側近とは言えないこと、また福島原発事故後は、人々を「怖がらせない」ための活動をしてきたことを紹介しました。
今回は「東京は手遅れに近い」「検査抑制の限界を認めよ」という主張についての考察を明らかにします。実は事実によって「検査を拡大し感染者を囲い込むことで、感染拡大を防ぐ」戦略が誤っていたことが、見えてきています。
このことを明らかにしつつあるのが、各国で進む「抗体検査」の結果です。

● 各国で進む抗体検査

抗体検査とは、感染症にすでにかかって、「抗体」(そのウイルスを排除しようとするもの)ができているかどうかを調べる検査です。これを多数の人に行えば、感染拡大の様子もつかめる。すでに各国・各地で行い出しています。
抗体は二つあります。感染初期にはIgM抗体ができますが一月ぐらいで消えていきます。これに対して少し遅れてIgG抗体ができますが、こちらは長く持続します。
抗体が獲得した人が多くなれば、もう感染しない人が増えて、その分、感染症に立ち向かう力が増えるのではとも期待されています。「抗体ができていることを、自由に活動してよい証明書にしよう」との動きすら出ています。

同時にこの検査は、PCR検査よりも時間が早くすみ、検査時の感染リスクも少ない。PCR検査は、鼻に綿棒を入れてウイルスを採るため、採取者が感染するリスクがあります。判定までも時間と労力がかかります。
さらに抗体検査は血液の中の抗体の有無を調べるため、採血が必要ですが、鼻の奥に綿棒を突っ込むことに比べて、感染リスクがずっと低い。また判定もすぐに出るし、労力も少ない。
いま各国がロックダウンを続けるのが無理になり、解除に向かいつつありますが、その際の目安の一つになることが、強く期待されています。

しかし、「まだ抗体検査に期待をかけてはいけない」という意見も、多数あります。
すべての検査には、正しく判定されない「誤差」がありますが、この抗体検査、かなり精度が悪いらしい。さまざまなキットが売り出されていますが、どれも、精度の低さが問題視されているPCR検査よりも、さらに悪いようです。
また抗体ができたら、確実に感染しなくなるとのエビデンスも、まだ十分には得られていない。「検査」「検査」と叫んできたWHOは、いまは「抗体検査に期待してはならない」と連呼しています。

15分で検査結果が出る「新型コロナウイルス抗体検査キット」とは?
2020年3月22日 ヤフーニュース 柳田絵美衣 | 臨床検査技師(ゲノム・病理検査)、国際細胞検査士
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagitaemmy/20200322-00168970/


二つの抗体について示した図 ヤフーニュースより

● 幾つかの検査から見えつつあること

このように、抗体検査は、まだ使われだしたばかりですから、そこで得られた情報がどれだけ確かなのかも未定です。
しかしそれでも抗体検査で、新型コロナの感染の、ざっくりとした広がり方、またこれに対する対抗戦略の良し悪しの、判断の一つの目安を得ることは可能なのではないでしょうか。
そしてその点で、いくつか出てきた結果を見ると、驚くべき可能性が見えてきています。

一つはカリフォルニア州サンタクララ群で、試験的に行われた抗体検査の結果です。3,300人が受けましたが、抗体反応があったのは2.8%~4.2%だったそうです。
これに群の実際の人口をあてはめてみると、48,000人から81,000人が、すでに感染していたと推定されます。
郡内のPCR検査陽性者は1,000人程度。そうすると、実際の感染者数は、PCR検査陽性者の、なんと約50倍から80倍にもなります。ただし検査の精度がどう低いのかも見えてないので、数値は大きく変わることもありえます。

カリフォルニアで抗体検査、予想より遥かに多い罹患率が判明
WEDGE 2020年4月19日
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/19372


抗体検査について報じるWEDGE ロサンゼルスのお隣のオレンジ郡ハンティントンビーチで行われた自宅待機命令への抗議デモの様子が添えられていた

もう一つは同じくカリフォルニア州の、ロサンゼルス群と南カリフォルニア大学の研究チームが行った調査で、863人を対象に行われました。
結果は2.8%~5.6%。これに実際の人口にあてはめると、22万人から44万人が、すでに新型コロナウイルスに感染し、抗体を持っているとみられるそうです。
ロサンゼルス郡のPCR陽性者は、約8,000人なので、これまた実際の感染者は、28倍から55倍であった可能性があります。

新型コロナの感染者数 実際は数十倍か 米の大学など調査
2020年4月21日 14時35分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200421/k10012398421000.html?fbclid=IwAR3SVRJqscq7NtRpn1YcnSWdotAfb40d-QmOBkfMo-TQH5rRsFaMXRZqLkw

端的に言って、こんな膨大な数の人々を、検査で見つけて、隔離し続けることなど可能でしょうか?不可能です!
この点で、渋谷健司氏の論拠は、大きく崩れ出しています。

続く

次回は、感染者が予想を大きく上回って、膨大にいることの意味について書きます。

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