守田です(20200410 20:00 0416追記)

● 新型コロナは致死率が高くないからこそ蔓延するうえに人間側の防御態勢の弱点を突いてしまう!

新型コロナウイルスの重要な特徴が見えてきました。端的に言います。この感染症は致死率がそれほど高くはないからこそ、広範に感染を広げうる!宿主の多くを殺さないし、むしろ多くの人を元気なままにしておくからウイルスは広がりやすいのです。
「致死率が高くない」というと、「甘く見ている」という批判が来そうですが、違うのです。だから怖いのです!
肺に感染してウイルスを増やすので、肺活量が高まると飛沫感染でうつるし、発症前、無症状のままでも感染させる。だからとても防ぎにくい。そのあり方が、ウイルスと同時に不安も大きく広げていく。そうしてパンデミックを起こしています。

ここまでだったら「そんなことは知っている」という方もおられるかと思います。さらに一歩進みましょう。
このウイルスは、人間の側の防御態勢に潜む弱点、いわば想定外の点を突いているのではないか。だからこそ猛威を振るっているのではないかと思われます。
しかしここに気づけば、有効な対策を導き出すことができるし、実に一部ではすでに始まっています。

大きなヒントを与えてくれたのは、2018年5月にジョンズ・ホプキンス大学が出版した『パンデミック病原体の諸特徴』という論文です。
IWJさんが3月13日に素晴らしいレポートを出し、著者の一人に重要な点をメールインタビューもくれているので、紹介します。

IWJ調査レポート!新型コロナは「地球規模の破滅的な生物学的リスク(GCBR=Global Catastrophic Biological Risk)」!? ジョンズ・ホプキンス大学の『パンデミック報告書』が、2年前にコロナの出現を予見し、警告! 2020.3.13
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/469833

ここにあるように、この論文は「地球規模の破滅的な生物学的リスク」(GCBR)を起こしうるものは何かを考察しています。
詳細はこのレポートに譲ります。原典に当たりたい方は以下をご参照ください。

The Characteristics of Pandemic Pathogens(『パンデミック病原体の特徴』)
http://www.centerforhealthsecurity.org/our-work/pubs_archive/pubs-pdfs/2018/180510-pandemic-pathogens-report.pdf


論文の表紙

● 感染症の脅威は、人間側の防御のあり方によって大きく変わる!

論文には、パンデミックを起こしうる7つの特徴が書かれています。致死性がそれほど高くはないことをはじめ、その多くが新型コロナに合致しています。この点もIWJさんのレポートが端的にまとめてくれています。
このありがたい仕事を受けて、僕はさらに一歩進めたいと思います。この論文では次の点が指摘されているのです。

「感染症の発生はより大きな社会政治的、地理的、環境的、および経済的な状況で発生するため、付随する複雑さの存在が発生を悪化させ、それだけでは破壊的な能力を有することができない微生物に、GCBRレベルのステータスを与える可能性があります」。
Additionally, as infectious disease outbreaks occur within a larger sociopolitical, geographic, environmental, and economic context, the presence of concomitant complexities can exacerbate an outbreak and confer GCBR-level status on a microbe that is unable, on its own, to possess such destructive capacity.

要するに感染症は、人間の側のあり方によって、「それだけでは破壊的な能力を有することができない微生物」に、「破滅的な生物学的リスク」のステータスを与えうるというのです。
このことを頭に入れて考えると次の結論が出てきます。「新型コロナは人間の側の防御体制の弱点をついている」のではないかということです。

どんな弱点でしょうか。感染症対策がエボラ出血熱やSARSなど、致死性の極めて高いもの、絶対に感染を防がねばならないものを相手に作られていることではないか。
(注 感染症法は感染症を致死率など危険性の高いものから5類に分けています。エボラ出血熱は1類、SARSは2類で、新型コロナもここに分類されています 4月16日追記)
これに対して新型コロナは、致死性はけして高くない。にも関わらずディフェンスはすごく強固です。だからこそ医療崩壊を引き起こしうる面があるのではないか。
例えば8~9割とも考えられる無症状者・軽症者をも14日間隔離しています。このため医療者が感染すると、元気でも医療現場を離れねばならず、医療のダウンに直結してしまう。

いや一人の感染者が出ると、周りの「濃厚接触者」も自宅待機しなくてはだから、その方のいるシステムのダウンにもつながりやすい。事業所の一時閉鎖等々です。
そのことが感染者が、無症状でもウイルスをうつす可能性があることとあいまって、恐怖を何倍にも膨らませていく。人々の、他者の命を大事に思う優しい心に食い込んでくる。
しかし実はその多くが、ウイルスそのものの力ではないのです。人間の作ったルールによるものです。だったらルールを柔軟に変えることが、戦略的に問われているのではないでしょうか?

続く

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#新型コロナウイルス #パンデミック #ジョンズホプキンス #GCBR