守田です。(20131023 23:30)

台風27号が太平洋沖をゆっくりと北東に移動中です。僕のいる京都も一日雨が降りましたが、今は小降りになっています。台風はこのまま各地に雨を降らしながら移動する予定です。関東などこれから雨が多くなるところは、十分な警戒をもってのぞんでください。

台風の到来を前にして、福島第一原発では、再び三度、汚染水タンクの周りの堰から高濃度のストロンチウムを含む放射能水が溢れだしてしまいました。対策は完全に破たんしていて、福島のサイトは、放射能汚染水の沼と化しています。
海の汚染が本当に深刻に進んでいます。同時に、作業環境の悪化と、作業員の方たちの被曝の深刻化ばかりが深まっています。
にもかかわらず安倍首相は23日にも国会で「原発は完全にコントロールされている」「汚染水は完全にブロックされている」と大嘘を繰り返しました。僕は首相がこのように言うこと自身に、大変な危機があると思います。

現実が直視されていない。現場の困難が嘘でもみ消されようとしている。でも嘘で放射能は消えません。現場の士気が著しく削がれるばかりです。コントロールできないものと命をかけて格闘している作業員の方たちにあまりに失礼であり、打撃であり、危機を深めるばかりです。
おりしも11月から4号機の燃料棒の抜き取りという、もっとも困難で、危険でありながら、どうしても避けて通れない作業が始まります。この重大な作業を前に嘘を放置していてはなりません。

ではどうしたらいいのか。大切なのは私たちの側が危機ときちんと向かい合っていくことです。福島原発がまったくコントロールなどされていないこと、いつまたどのような深刻な危機が深まるかも分からないことと向き合うことです。
そのため必要なのは、各地で原発災害をリアルに想定した避難訓練を始めること。とくに東北・関東で積極的に行う必要があります。ぜひそれぞれの地域、職場、学園、市民グル―プで、あるいはご家族で行ってください。

多くの市民が原発災害対策を始めたことが現場に伝わってこそ、はじめて現場は、「やっと自分たちの危機感、苦しさ、使命感が伝わった」と感じることができます。原発災害避難訓練は、4号機燃料棒抜き取りをはじめとした現場労働と連帯する行為です。
もちろん、原発災害のリアルさに目覚めることの中から、現場労働者の被曝対策の強化の意識を高めることも大事です。避難訓練=原発災害対策は、二重三重に、原発労働にリンクしています。

各地で避難訓練に取り組むために「原発災害に対する心得」(保存版)をお伝えします。10月20日の同志社大学松蔭寮の講演で使い、明日の午後1時半からの京都アスニーの講演でも使うものです。過去に掲載したもののアップデート版です。
避難訓練といっても、第一に行うべきことは図上訓練=座学です。まずは「原発災害についての心得」を参照し、学習会を行ってください。呼んでいただければどこへでもうかがいます。

周りの方、地域の方と、原発災害対策について話し合いましょう。災害対策では、原発への是非をいったん横において、多くの方と原発の危険性を論じ合うことができます。再稼働が賛成だという方ともぜひ一緒に行ってください。
消防士、警察官、自衛官の方にも知って欲しい。原発災害があったときに、真っ先に高濃度放射能地帯に派遣されるのはこれらの人々だからです。

安倍首相の大嘘を、ただ批判しているだけでは足りません。いわんや、揶揄して笑っていてはいけません。危機なのです!嘘に対抗するのは真実を掲げることです。真実は福島原発の危機です。すべての原発のあまりの危険性です。
原発災害対策を各地で力強く進めましょう!

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原発災害に対する心得 保存版
                         
知っておきたい心の防災袋(防災心理学の知恵)
1、災害時に避難を遅らせるもの
〇正常性バイアス⇒避難すべき事実を認めず、事態は正常と考える。
〇同調性バイアス⇒とっさのときに周りの行動に自分を合わせる。
〇パニック過大評価バイアス⇒パニックを恐れて危険を伝えない。
〇バイアス解除に最も効果的なのは避難訓練。

2、知っておくべき人間の本能
〇人は都合の悪い情報をカットしてしまう。
〇人は「自分だけは地震(災害)で死なない」と思う。
〇実は人は逃げない。
〇パニックは簡単には起こらない。
〇都市生活は危機本能を低下させる。
〇携帯電話なしの現代人は弱い。
〇日本人は自分を守る意識が低い。(備蓄が大切!)

3、災害時!とるべき行動
〇周りが逃げなくても、逃げる!
〇専門家が大丈夫と言っても、危機を感じたら逃げる。
〇悪いことはまず知らせる!
〇地震は予知できると過信しない。
〇「以前はこうだった」ととらわれない。
〇「もしかして」「念のため」を大事にする。
〇災害時には空気を読まない。
〇正しい情報・知識を手に入れる。

心にとめおきたい避難の3原則(社会災害工学の知恵)
1、想定にとらわれない
〇ハザードマップを信じない。
〇想定はあくまでも人間の推論。それを超えることがありえる。
〇行政の判断に頼らない。危機を感じたらすぐに行動する。

2、いかなる状況においても最善を尽くす
〇自分や周りの人の命を守るために最善の道は何かを考えて行動する。
〇災害で絶対に助かる道はないことを踏まえつつ、最善を尽くす。
〇大事なのは普段の蓄積。いざというときのための準備を重ねておく。

3、率先的避難者になる
〇自分が逃げ出せば他の人も逃げ出す。人を救うためにもまず自分が逃げる。
〇自分と人を逃がすことを最優先する。救助はあとから(津波てんでんこ)。

放射線被曝についての心得
1、福島原発事故での放射能の流れと被曝状況
〇福島原発事故では風の道=人の道に沿って放射能が流れた。
〇被曝範囲は東北・関東の広範囲の地域。京都にも微量ながら降っている。
〇SPEEDIの情報隠しなど、東電と政府の事故隠しが被曝を拡大した。
〇子どもの甲状腺がんをはじめ、健康被害が広がっている。

2、放射線に関する基礎知識
〇放射能から出てくるのはα線、β線、γ線。体への危険度もこの順番。
〇空気中でα線は45ミリ、β線は1mしかとばず、γ線は遠くまで飛ぶ。
〇このため外部被曝はγ線のみ。内部被曝ですべてのものを浴びる。
〇より怖いのは内部被曝。外部被曝の数百倍の危険性がある。(ECRR)
〇放射能には半減期(放射線を出す力が半分になる期間)がある。
〇事故直後は半減期の短いものから放射線がたくさん出るため放射線値が高い。

3、被曝の避け方
〇外部被曝を避ける⇒放射線を遮蔽、線源から離れる、線量の十分低いところに避難。
〇内部被曝を避ける⇒放射能の吸引、飲食を避ける。汚染されていないところに避難。
〇まずはとっとと逃げる。事故の推移はあとから確認し、安全が確認できてから戻ればよい。

原発災害への対処法
1、原発災害への備え
〇一番大切なのは避難訓練。災害と避難をシミュレーションしておく。(位置、天候など)
〇遠くの知人と防災協定を結び、互いの避難先を確保し、家族・恋人などと確認しておく。
〇家族(子ども)と落ち合う場所を決めておく。
〇持ち出すもの(防災グッズとお金で買えない一番大事なもの)を用意しておく。

2、情報の見方
〇出てくる情報は、事故を過小評価したもの。過去の例から必ずそうなる。
〇原発は事故時には計器が壊れ、事態が把握できなくなる構造を持っている。
〇運転員も正常性バイアスにかかりやすく、事故の認知が遅れる。
〇政府の安全宣言は信用できない。(パニック過大評価バイアスへの対応)
〇周囲数キロに避難勧告がでたら200キロ超でも危険と判断。(避難区分を信じると危険)

3、避難の準備から実行へ
〇風下に逃げるのがベスト。判断できないときは西に逃げる。
〇マスクを濡らし重ねて着用し頻繁に替える。帽子を必ず被る。肌の露出は最小限に。
〇雨にあたることを極力避ける。降り始めの雨が一番危ない。傘、雨合羽必携。
〇可能な限り遠くに逃げ、着いた先の行政を頼る。○落ち着いて行動し二次災害を避ける。
〇避難ができない場合は屋内に立て篭る。水・食料を備蓄しておく。(最低一週間分)
〇立て篭る場合は換気扇やエアコンは使わない。すきま風が入る場合は目張りする。
〇避難のときも立て篭るときも、外気に触れたときは、うがい手洗いを徹底する。
〇インフルエンザ対策、花粉症対策を応用して、内部被曝を避ける。

放射能との共存時代をいかに生きるのか
〇元を断つ。すべての原発を止め、解体し、真の安全を確保する。
〇被曝の影響と向き合う。被曝した人を労わり、あらゆるヒバクシャ差別とたたかう。
〇あらゆる危険物質を避け、免疫力を高める。命を守る運動を起こす。
〇前向きに生きる。楽しく生きる。意義深く生きる。そのことで免疫力をアップする。

参考文献
『人は皆「自分だけは死なない」と思っている』宝島社 ―防災システム研究所 山村武彦著
『人が死なない防災』集英社新書 ―群馬大学広域首都圏防災研究センター長 片田敏孝著

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講演会のお知らせ

原発ゼロへの道
もっと知りたい考えたい
福島で何が起こっているのか?

10月26日 午後1時30分開場 午後2時開会
会場 京都アスニー
参加費500円

「内部被曝の現状は?」
講師 守田敏也

主催 右京原発ゼロネットワーク
連絡先 田中啓一 0758732925 山﨑依子 09022809450