守田です。(20131018 22:30)

台風26号は大変な災害をもたらしました。伊豆大島では18日午後7時までの段階で、25人の方の死亡が確認され、なお26人の方が行方不明になっています。
一方、日本列島のはるか南、マリアナ諸島近海で、新たに大きな台風が発生しており、来週の半ばに接近してくる可能性があります。そのころには中心気圧が920hPaまで下がり、「最も強い猛烈な台風」になる可能性が伝えられています。
進路も前回の26号と非常に似通ったコースをたどる可能性があり、しかもより西日本にも接近するため、前回よりも大雨の範囲が広範囲になる可能性も指摘されています。以下、この情報を伝えるテレビニュースを紹介しますので、ぜひご覧ください。

台風27号 予想進路は台風26号と非常に似たコースに
フジテレビ系(FNN) 10月18日(金)18時4分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20131018-00000109-fnn-soci

この間の相次ぐ台風により各地で地盤が緩んでいる可能性があるため、今から警戒を強める必要があります。ぜひみなさん、この機会にそれぞれの行政が出しているハザードマップを手に取り、浸水予想や避難所の場所の確認などを行ってください。
山間部に近いところをはじめ、危険が予想されるところは、ぜひ晴れている間に散歩などで現場観察を行い、避難が必要になった場合のシミュレーションを行ってください。その際、自宅から避難所の間に、増水した場合に危険になる側溝などないか、確認しておいてください。
今回の伊豆大島の事例から、次に集中豪雨があった場合、それぞれの行政が、早めに避難勧告や指示を行う可能性がありますが、私たちの側も勧告が出てから避難所を探すのではなく、あらかじめ危険個所と避難場所を確認しておき、やはり明るいうちに早めに避難を行うようにしてください。

ただしハザードマップを見る際には注意が必要です。マップで浸水予想地区とされている地域の住民は、警戒心を高めることができますが、浸水が予想されない地域の住民の場合、「自分のところは大丈夫だ」と考えてしまい、警戒心を解いてしまう場合が多く、かえって危険なのです。
実際に、2011年3月に東日本大震災を襲った大津波のときに、釜石市で、ハザードマップで津波到達が想定されていた地域の人々が高い確率で避難ができたものの、約1000名となった死者のほとんどが、津波の到達が想定されていなかった地域から出てしまっています。
その意味で災害対策においては「想定にとらわれてはならない」ことを強く頭に入れながら、ハザードマップを活用するようにしてください。けして「安心」するためでなく、災害に強い心の態勢を作るための事前準備として、行政があらかじめ出している情報を活用してください。

実際に大雨が降りだした場合はどうしたら良いでしょうか。怖いのは「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」ですが、これらにはそれぞれ次のような前兆があることがあります。
「土石流」の場合  〇山鳴りがする。〇急に川の流れがにごり流木が混じっている。〇雨が降り続いてるのに川の水位が下がる。〇腐った土のにおいがする。
「地すべり」の場合 〇沢や井戸の水がにごる。〇地面にひび割れができる。〇斜面から水がふき出す。○家や擁壁に亀裂が入る。〇家や擁壁、樹木や電柱が傾く。
「がけ崩れ」の場合 〇がけに割れ目が見える。〇がけから水がふき出ている。〇がけから小石がパラパラと落ちてくる。〇がけから木の根等の切れる音がする。
このような兆候が見られた時には、行政からの指示がなくても、自主避難を行ってください。

ゲリラ豪雨についても、目安が語られるようになってきましたので、それを列挙します。
〇天気予報に「所によりにわか雨」「大気の状態が不安定」「大雨、落雷、突風、竜巻、雹(ひょう)」のキーワード。〇防災気象情報で「大雨・洪水警報」「大雨・洪水特別警報」「周辺や川の上流で大雨」が語られる。
〇川の水かさが急に増えてきたり、濁ったり、木の葉や枝、ごみなどが大量に流れてくる。〇雷鳴が聞こえたり雷光が見えたりする。〇ヒヤッとした冷たい風が急に吹き出す。〇大粒の雨や雹(ひょう)が降り出す。〇黒い雲が広がり急に暗くなる。
豪雨の場合、近くの川からの洪水などが考えられます。この場合、「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」などが考えられない地域では、2階以上に避難していれば安全を確保できる場合があります。この点も事前に確認を行っておいてください。

続いて避難行動に移る際の目安についても書いておきます。前提的に危機の察知においては自分の五感を大事にし、以下に書いたことに当てはまらなくても「避難したほうがいい」と感じたら行動した方がいいです。その上で目安を書きます。
〇市町が自主避難を呼びかけたら。〇前触れと思われる現象(前兆現象)を発見したら。〇近く(同じ市町内や隣接する市町)で土砂災害が発生したら。〇これまでに経験したことのない雨を感じたら。

避難行動に移るにあたっての心得も書いておきます。
〇防災気象情報、防災避難情報に注意。〇車で避難しない⇒ワイパーやブレーキが効かなくなる。アンダーパスに突っ込むと立ち往生。〇浸水が40~50㎝になると外開きドアは開かない。歩行も困難。⇒早期自主避難が大切。
〇「遠くの避難所より、近くの2階」。(ただし家屋の流失の危険性がない場合)〇避難するときは隣近所に声を掛け合う。〇避難者同士それぞれロープをつかんで避難。〇荷物は最小限にしできるだけ両手を開けて避難。
〇マンホールや側溝のフタが外れているとすごく危険。傘や棒などで前を探りながら進む。〇避難時はヘルメット、手袋、雨具、長ズボン、長袖シャツで。懐中電灯も。〇長靴は水が入ると動けなくなる。脱げにくい紐スニーカーなどで避難。
〇火の元、ガスの元栓、電気のブレーカーを閉じ、戸締まりして避難。〇半地下・地下室には近寄らない。〇川、側溝、橋、マンホールに近づかない(絶対に様子を見に行かない)

なおより詳しいことを知りたい方は、防災心理学の知見から優れた啓発を繰り返している「防災システム研究所」のホームページをご覧ください。僕もここから「正常性バイアス」のことなど、重要な点を学びました。

防災システム研究所
http://www.bo-sai.co.jp/index.html

またハザードマップの危険性の問題をはじめ、釜石市などでの実例に学びたい方は、群馬大学災害社会工学研究室のホームページをご覧ください。ここからも僕はさまざまなことを学びました。

群馬大学災害社会工学研究室(釜石市の例を述べているページを紹介)
http://dsel.ce.gunma-u.ac.jp/research/cont-302-4.html

今回の伊豆大島の災害に対しては、事前に各方面から町役場に避難勧告を出すようにとの連絡がありながら出さなかったことが問題にされています。町長も判断の甘さを語っており、今後、何が足りなかったかの検証が行われ、各自治体の災害対策に取り入れられていくことと思います。
ただやはり同時に私たちが考えなければならないのは、私たちが災害に対して能動的になること、行政の指示待ちにならず、自らが判断力、行動力を養っていくこと、近隣のさまざまな理由から避難が困難な方をも助けられるような力を養っていくことです。
この点で、「特別警報」についても考えを整理しておく必要があります。今回の伊豆大島の事態でも「特別警報」は出されていません。つまり「特別警報」の発令基準に達しなくとも、命が危機に瀕する事態が起こり得るのであって、けして「特別警報」待ちになってはならないということです。
これはさきほど指摘したハザードマップの危険性と同じことが言えます。「特別警報」=「ただちに命を守る行動を」という新たな災害警報が設定されたことにより、特別警報発令まで、命の危機はないと思ってしまう誤りです。この点については次の気象解説者、片平さんの文章が参考になります。

伊豆大島記録的豪雨 「特別警報の課題」と「命を守るのは誰か?」
片平 敦 | 気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属 2013年10月17日 14時1分
http://bylines.news.yahoo.co.jp/katahiraatsushi/20131017-00028998/

片平さんは、「特別警報」がどのような基準で出されるものと決められているかを詳述したのち、次のように述べています。

***

特別警報が出される時というのは、もう最終段階と考えたほうが良いのです。
すでに大規模な土砂災害や洪水災害が引き起こされていてもおかしくなく、起きていない地域では一刻も早く、個々人が周囲の状況を判断して「命を守るために最善を尽くす」行動が必要になります。
「特別警報待ち」は、絶対にしてはいけません。

***

重要な指摘です!

今、私たちに問われているのは、災害に対する主体性、能動性です。命を守ることを誰かに委ねるのではなく、今できる最大限のことを行っていくことが問われているのです。
こうした観点は、すべての災害に対して適用できるもので、当然、原子力災害から身を守ることにもつながっていきます。大事なのは事前にシミュレーションを重ねることです。
伊豆大島の方たちを見守りつつ、台風27号への備えを固めましょう!