守田です(20180710 23:30)

豪雨が過ぎゆきました。すべての特別警報が7月8日のうちに解除されました。
しかし雨が止んだからといって洪水被害は止まっておらず、広島県の府中町で10日午前10時すぎ、町内の榎川が氾濫し、周辺住民に避難指示が出されました。
同様のことがまだ他でも起こりえる可能性があります。土砂災害や洪水にご注意されてください。

被害はあまりにも甚大でいまなお拡大しつつあります。
朝日新聞のまとめでは10日午後9時時点の死者は158人。心肺停止1人。死者は府県別では広島58人、岡山54人、愛媛26人、京都と福岡各4人、山口3人、鹿児島と兵庫、高知各2人、岐阜、滋賀、佐賀各1人。
行方不明などは広島45人、岡山21人をはじめ少なくとも72人だそうです。

(図表は「時間泥棒」仕置人さん提供)

100人以上の死者が出たのは1983年7月豪雨の112人(行方不明5人)以来ですが、この時は主に被害が島根県に集中しました。
今回は西日本各地で被害が起こっています。

お亡くなりになられた方に心からの哀悼の意を表します。
また被災されたみなさまにお見舞いを申し上げます。
行方不明の方が一人でも多く無事に発見されることを願ってやみません。

まだ救助活動が継続していますが、現時点で今回の豪雨災害の特徴を振り返っておきたいと思います。
一つは何といっても雨の降り方がもの凄かったことです。

やはり朝日新聞のまとめを援用しますが、梅雨前線の停滞が始まった6月28日から7月8日までの総雨量は、高知県馬路村で1852.5ミリ、岐阜県郡上市で1214.5ミリ、愛媛県西条市で965.5ミリ、佐賀市で904.5ミリを観測しました。
この期間中、72時間降水量は22道府県119地点、24時間降水量は19道府県75地点で観測史上最大を更新しました。まさに「記録的な」豪雨でした。
これらから分かることは、原因はともあれ少なくとも日本列島をとりまく気象状況が近年大きく変動し、雨の降り方が抜本的に変わってしまって、これまでの経験が役に立たなくなっていることです。

たとえば高知県馬路村の年間降水量を調べてみると2201ミリだそうです。
https://ja.climate-data.org/region/2420/

今回の降り始めからの雨量は年間降水量の約84%にもなります。雨の多い高知・馬路村の1年分の雨量の8.5割が降ってしまったのです。
ほかにもいたるところでこれまでを激しく上回る豪雨が降ったわけですが、1年分の雨が数日で降ってしまうのですから、災害を防ぐためのさまざまな仕組みが次々と突破されてしまう理由も分かります。

とくに怖いのはいきなり1時間あたり100ミリを越えるような大雨が各地で降っているところです。各地で起こった土砂災害の現場での証言の中に次のようなものがありました。
「直前までは降水量が1時間あたり10ミリから20ミリぐらいで避難する必要を感じなかったが、いきなり大変な豪雨になり、その時にはとても逃げられないと思った」とのこと。
その激しい雨の中で隣家に土砂が流れ込み、家が押しつぶされてしまったのに「その音すら聞こえなほどの雨音だった」といいます。

このことは避難の難しさ、避難指示を出すタイミングの難しさをも表しています。
端的に言って早い時期に逃げ出した方がいいですが、危険な状態はいきなりの1時間に100ミリの雨でやってくるので、まだ危険が迫っていない、言うなれば「穏やかな状態」の時に避難する必要があります。
しかし実際にその後に土砂が家を押しつぶしてしまうのは、避難したうちのごく少ない例になるでしょうから、多くは「空振り」にもなります。それでもいいから逃げることを勧めるしかない。

そうなると避難所にはたくさんの人が押し寄せることになるし、それを受け入れられるだけのあらかじめの準備も必要となります。
しかし多くの場合、現状はそうはなってはいないのが実情です。ものすごい数の人を一気に受け入れることは想定していないため、各地で「避難所」といっても十分な受け入れ態勢ができていないのが現実なのです。
そしてそのことが実際の避難を躊躇させることにもつながっているとも思われます。

そうではなくて、地域のたくさんの方が来られることをあらかじめ想定し、ときに実際に避難訓練も行い、数夜をできるだけ楽に過ごせるだけの体制を作りだしておくことが必要となっているのです。
その上で今回のように「記録的豪雨」が予想されるときは、「念のため」の避難を奨励し、実際に行ってもらうのです。
それ以外に今回のように一定期間雨が降り続き、その後に1時間に100ミリの雨が降って裏山が崩れるなどの事態に対応する道はないと思います。

とにもかくにも「念のための早いうちの避難」が大事であり、それを受け入れることができるだけの体制を各地で進めることが急務です。
このためにこれまでの「常識」を捨て、災害対策をみんなで抜本的に考え直していくことが必要です。

続く