守田です(20180411 23:30)

京都府知事選の捉え返しの続きをお送りしたいと思います。

まず基礎的データを押さえたいと思います。
総得票数は西脇隆俊氏402,672票、福山和人さん317,617票。得票率はそれぞれ55.9%と44.1%でした。投票率は35.17%。前回比で+2.1%でした。

ちなみに前回(2014年)の知事選挙では、与野党相乗りの現職候補であった山田啓二氏が481,195票、共産党が推薦し無党派市民が推した尾崎望さんが215,744票を獲得しました。
これと比較すると、今回の選挙では相手陣営が約8万票減らし、福山さんが約10万票伸ばした計算になります。なお前回の投票率は34.45%でした。

敗れはしたものマスコミ各紙は西脇陣営の苦戦と福山さんの善戦を伝えています。
例えば毎日新聞は「保守系府政になってからの共産推薦候補では最高得票率(44%)となる善戦」と伝えています。他の各紙も一様に福山さんの奮闘を讃えていました。

各市町村の詳しい投票数に関するデータと前回選挙の比較が以下から見ることができます。

2018知事選得票結果と前回比較
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10213520618588165&set=a.3300903639751.2140616.1182740570&type=3&theater&notif_t=feedback_reaction_generic&notif_id=1523457543403418

例えば京都市内を見たとき、前回選挙では革新側の尾崎さんが40%を越えたのは左京区だけでした。しかし今回はすべての区で40%を越え、左京区は52.8%!つまりここでは福山さんが勝っていたのでした。
市内の得票数を見ても、前回は尾崎125,320、山田219,706であったのに対し、今回は福山169,441、西脇195,196でした。36.3対63.7が、46.5対53.5まで縮まりました。

僕が特に印象深かったのは原発直近の舞鶴市で、前回は尾崎6,207、山田21,421とトリプルスコア以上の差だったことに対し、今回は福山10,540、西脇16,904と大きく差が縮められたことです。
同じく多くの地域が30キロ圏内に入る綾部市も、前回は尾崎2,999、山田9,831とやはりトリプルスコア以上の差だったのが、今回は福山4,627、西脇7,200とこれまたかなり差を縮めています。
宮津市でも、前回は尾崎1,810、山田6,396とこれまたトリプルであったものが、今回は福山2,806、西脇4,581と同じように差が縮まっています。

僕自身、ここ数年の間に、何度となく舞鶴、宮津、綾部での原発問題の講演を行ってきたので、僕を呼んでくださったみなさんの努力もまたこの数字に反映しているように思え、嬉しく感じました。
もちろん同様の講演は京都市内でも何度となく行って来たので、それもまた反映していたのではないかと思います。脱原発を高々と掲げた福山さんの主張が支持を広げたのです。

さてこのように細かく見ていくと各市町村で福山さんが善戦して差を縮めていたこと、西脇氏はどこでも伸びきれなかったことが分かります。
その点で今回の選挙は次への大きな可能性を切り開くことができた選挙だったと思います。
ちなみにこうしたデータ的裏付けがない中で、すでに福山さん本人や、呼びかけ人の西郷さん、石田さんがまさにこのように述べたことは前回、ご紹介した通りです。

さて自民党、公明党、希望の党、立憲民主党、民進党が与野党相乗りで野合し、まさに組織票を固めて臨んできたことに対し、福山陣営はなぜここまで善戦できたのでしょうか。
同時に「善戦」の域を越えて、どうすれば44%の得票率を50%越えまで持って行き、勝つことができるのでしょうか。

まず何よりも大きかったことは、今回の選挙で私たちが、「つなぐ京都」を中心に、かなり広範な市民的連携を作りだせたことにあると僕は思います。

福山さんを推薦したのは政党では共産党、新社会党、緑の党でした。これにそれぞれの党を支援する市民グループ、さらにこれに加えて立憲民主党を支援する市民グループ、そしてまた無党派市民のグループや個人が集いました。
このうち無党派市民の中には、端的に言って共産党に対して批判的観点を持っていて、これまで選挙を一緒に行ったことがあまりないか、ほとんどない方たち、グループなども多く含まれていました。
その上に立憲民主党のサポーターの方たちが加わったのでした。とても画期的でした。

これ自身は2011年の福島原発事故以来、毎年3月のバイバイ原発京都集会や、毎週金曜日のスタンディングがついに300回を越えた関西電力京都支店前金曜行動(キンカン行動)で培ってきた信頼関係が大きく寄与しています。
長い長い時間をかけた連携が作りだされてきて、今回、パアッと爆発的に広がった感じがあります。

例えば2016年初頭に行われた京都市長選ではここまでの連携が作れませんでした。僕自身はこの時も、共産党やその支援者のグループと無党派市民の連携を作らねばとさまざまに動きましたが、今回ほどには乗ってきてくれませんでした。
ではなぜ今回は可能になったのか。一つに保守系候補が、安倍官邸との太いパイプを自慢する中央官僚であったこと、しかも復興庁で被災者に冷たい仕打ちを行ってきた当事者であったことにあると思います。

原発反対での積み重ねられてきた共同行動の実績の上に、安保法制反対、憲法を守るための野党共闘の実現などが京都でも行われて、いわば一つに集う条件が大きく醸成している中で、西脇氏がやってくることでこの連携のスイッチが入ったのでした。
僕にとってこれは前回の市長選の時に追い求めていた連携の形で、なんとか2年後の市長選に間に合わせたいと懇願していたものが、一気に開花したような感覚があります。

さてこうしてできた「つなぐ京都」の連携を素晴らしく発展させてくれたのが、候補者福山和人さん自身の素晴らしい魅力でした。
福山さんの魅力は、今回の選挙に参加したそれぞれの方が口々に語っていると思いますが、あえてまとめてみると、第一に弁護士として貧しい人、困窮している人を支えてきた実績から、京都府政のあるべき姿へのかなり具体的なビジョンを持っていたことが

あげられます。僕自身、これまでここまで候補が掲げる府民の生活を守るための諸政策に納得したことはありませんでした。「すごい」と思いました。

第二に「つなぐ京都」のいわばバックボーンをなしている脱原発への取り組みについても、大飯原発差し止め訴訟や原発賠償京都訴訟の弁護団に参加してきたことでかなりの専門的な知見をもたれていたことです。
それも原発の構造的危険性と新規制基準の矛盾を把握するとともに、避難者の集団訴訟である原発賠償訴訟に関わることで、いわば「被曝」の意味するところ、原発事故にあった辛さ、悲しさのリアリティをしっかりと把握されていました。
これらを踏まえて廃炉ビジネスの可能性まで言及し、経済的効率性からも脱原発が正しいこともきちんと述べられました。
この7年間、第一義的に原発の問題、被曝の危険性と格闘してきた僕にとって、まさしく理想的な候補者でした。

そして第三に、これらどこまでも理路整然と語れる内容を持ちながらも、同時にとても温かいハートを持たれていて、自分の心のうちをあけっぴろげに語るその姿が、聴衆の心を一瞬にしてつかんでしまったことです。
福山さんは、貧しい人のことを語ったり、あるいは自分を育ててくれたおばあさんが認知症になり、お世話をしたことを話すときなど、度々、涙ぐんで、必死にこらえて天を仰がれていました。
人々へのまなざしの温かさがその場でダイレクトに人々に伝わりました。

続く