守田です。(20160829 23:00)

大型の台風10号が太平洋上を記録にない形で迷走した上、日本列島に近づいてきています。
29日21時現在の位置は関東の南東沖数100キロの海上ですが、今後、進路を北西に変え、関東・東北に接近し、明日の午前中から午後にかけて東北地方に上陸する可能性があります。
東北への上陸は1951年の現在の体制での観測開始以来、初めてのことになるそうです。

この台風により記録的な暴風雨が各地を襲うことが懸念されています。
気象庁は8月一月分の雨が1日で降る可能性があるとしています。このため洪水や土砂災害の発生が強く懸念されています。
また今の時期は年間でも最も潮位の高い「大潮」の時期にあたっています。このため台風で高潮が発生し、海岸地帯で浸水被害が発生する可能性があります。

非常に懸念されるのは、東日本大震災から復興、ないし街の回復がまだきちんとなされていない東北の太平洋岸の町々にこの猛烈な台風が襲おうとしていることです。
これまでも指摘してきましたが、日本政府は東北沿岸部の復興をきちんと行わないままに東京オリンピックなどに取り組み始めてしまったため、今も沿岸部では町の再建が十分に進んでいるとはいえません。
2016年1月現在で仮設住宅に住まわれている方は約18万人。さらに激しく壊れた防波堤をどうするのか、高台移転をどう進めるのかなども含めて、さまざまなことが中途半端なままです。

ここに猛烈な台風が襲おうとしており、それに伴う高潮などが起きようとしています。とても心配です。
また初めての台風上陸ということで、東北の方々が、行政を含めて未経験な体験に晒されざるをえないことも大きな懸念材料です。
その上、すでに台風9月、11号でたくさん雨が降り、地盤が緩んでいる後ですので、土砂災害も発生しやすくなっています。

このような状態を前にして、今、提案できることはとにかく「念のため」の精神を大事にした「早目の避難」を広範に行っていただくことです。ぜひとも、とっとと逃げていただきたいです。
とくに大事なのは「行政任せでない命を守る能動的な行動」に出ることですが、このことはけして行政当局への批判、批難を意味しているのではありません。

そもそもこの間、地球的規模での気候や大地の変動が起こっていて、「観測史上初めて」のことが度々記録されています。
熊本・九州地震でもそうでした。4月14日に熊本県益城町でマグニチュード6.5、震度7の大地震が起こり、その2日後の16日に、マグニチュード7.3、震度7のさらなる大地震が起こりました。
マグニチュードは0.1上がるとエネルギーは倍違いますから、16日の地震は14日よりもエネルギーでは16倍も大きかったことになります。ちなみにこのため地震計が壊れてしまい、正確な値が測れませんでした。

これは観測史上、初めての事態でした。大きな地震のあとにそれをはるかにうわまわる地震が来ることなど、現代人は経験したことがなかったのです。
このためとくに熊本では、多くの方たちがさらに大きな地震が発生する可能性も考えざるをえず、家に戻れなくなってしまいました。
避難所はたちまち人が収容しきれなくなり、たくさんのテントが立ち並び、その周辺に多数の車が駐車して寝泊まりする人々が発生しましたが、その中かからエコノミー症候群で亡くなる方も多数出てしまいました。
これらのことに見られるのは、この地震災害があまりに行政の想定を超えてしまったために、対処が間に合わない事態でした。

いやそもそも気象庁は2013年8月末から、それまでの「注意報」「警報」に変えて「特別警報」の発令を始め、「ただちに命を守る行動を」と呼びかけてきました。
それまでのような危険性の告知では、事態に対応できないと判断したが故の措置でした。
しかしこの2013年に伊豆大島で発生した大規模な土砂災害のときも、翌年の2014年に発生した広島市での大規模な土砂災害の時も、特別警報は出されませんでした。いずれも気象庁の設定を越えて急速に災害が進展してしまったからでした。

このことが意味するのは、気象庁そのものが、未曽有の事態に度々襲われて、十分に危険情報が出せなかったり、人々の避難を有効に勧告できなかったりしていることです。
もちろん多くの方がこの限界を越えるために奮闘しておられるのですが、僕はこれは気象庁のせいと考えてはならず、地球規模での災害の変化がこれまでの私たちの科学的知見を上回っていることにこそ向かい合うべきだと思います。
だからこそ、行政に災害との格闘の努力を任せてばかりではいけないのです。何時、避難するのか、逃げ出すのかという判断を、受動的に出してもらうのではなく、自ら能動的に判断し、行動する必要があるのです。

とくに今回起ころうとしているのは、当然にも行政当局も経験のない初の台風の上陸です。
しかも二つの台風が雨を降らせて通り過ぎたあとの大型台風の直撃であり、年間で最も潮位の高い「大潮」の時期が重なっているのです。
さらには東日本大震災の爪痕もまだまだ癒えてないところがたくさんあるのですから、多くの方々に、ぜひとも早めに安全地帯に逃れる行動をとっていただき、むしろ行政を助けてあげて欲しいのです。

その際、非常に参考になるサイトをご紹介しておきます。災害対策のスペシャリスト、山村武彦さんが主宰する防災システム研究所HPに掲載されているものです。
避難や水害対策の手引きとして下さい。

台風・ゲリラ豪雨・洪水・土砂災害・落雷・竜巻・特別警報対策
http://www.bo-sai.co.jp/suigaitaisaku.htm

またこの記事の末尾にとくに重要だと思われる満潮情報や、大雨、風、高波、高潮の予想などを転載しておきます。
これらもあくまでも「予想」であることを踏まえつつ、より安全側にたった判断の上で行動してください。

なお東北への初の台風の上陸の可能性がある中、やはり福島第一原発サイトが被害を受けないか不安が募ります。
これに対してはとにかく現場の奮闘を祈るしかないですが、同時に何が起こっているのか、危険に見舞われていないか、避難の必要性が生じていないかなど、主に台風の影響を受けない地域の人々でウォッチし、情報を発信しましょう。
僕も今は京都にいますので、明日は台風情報全般をチェックしつつ、福島原発の状態のチェックを続けようと思います。

ともあれ東日本のみなさんの安全を心の底からお祈りします。必要がある時は、けして躊躇せず、とっととお逃げ下さい。
以下、必要情報などを貼り付けておきます。

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気象庁 台風情報
http://www.jma.go.jp/jp/typh/1610l.html

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高潮に警戒を 東北地方の満潮時刻は
NHK NEWSWEB 8月29日 15時59分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160829/k10010657991000.html?utm_int=word_contents_list-items_003&word_result=%E5%8F%B0%E9%A2%A8%EF%BC%91%EF%BC%90%E5%8F%B7%20%E6%B3%A8%E6%84%8F%E7%82%B9

気象庁によりますと、台風が近づくと予想されている東北地方の太平洋側では、今は1年で最も潮位が高い大潮の時期にあたります。
台風の進路にあたる東北の沿岸では、5年前の巨大地震の影響で地盤が大きく沈下しているところがあり、気象庁は、台風が近づいたり満潮を迎えたりする時間帯を中心に、高潮に警戒するよう呼びかけています。

東北地方の太平洋側の30日午後から31日午前にかけての満潮時刻は次のとおりです。

福島県
いわき市の小名浜港
30日午後3時33分ごろと31日午前2時32分ごろ。
相馬港
30日午後3時24分ごろと31日午前2時19分ごろ。

宮城県
仙台新港
30日午後3時18分ごろと31日午前2時14分ごろ。
塩釜港
30日午後3時20分ごろと31日午前2時16分ごろ。
石巻港
30日午後3時19分ごろと31日午前2時11分ごろ。
石巻市の鮎川港
30日午後3時17分ごろと31日午前2時9分ごろ。

岩手県
大船渡港
30日午後3時8分ごろと31日午前2時ごろ。
釜石港
30日午後3時8分ごろと31日午前1時58分ごろ。
宮古港
30日午後3時9分ごろと31日午前1時49分ごろ。
久慈港
30日午後3時ごろと31日午前1時46分ごろ。

青森県
八戸港
30日午後2時54分ごろと31日午前1時48分ごろ。
むつ小川原港
30日午後3時1分ごろと31日午前1時44分ごろ。
青森港
30日午後2時20分ごろと31日午前2時17分ごろ。

高潮は、台風の接近に伴い、気圧が1ヘクトパスカル下がると海面が吸い上げられて1センチ高くなるほか、強い風が沖合から吹くと大量の海水が吹き寄せられてさらに潮位を押し上げます。
そして、海面全体が上昇し大量の海水が押し寄せ、沿岸の地域に浸水の被害が出ることがあります。
30日から31日にかけて、東北地方の太平洋沿岸など台風の進路にあたる地域では、台風が近づく時間帯や満潮の時間帯を中心に、高潮に警戒が必要です。

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大雨や高波など 警戒必要な時間帯の目安
NHK NEWSWEB 8月29日 18時32分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160829/k10010657351000.html

大雨や高波など 警戒必要な時間帯の目安
気象庁によりますと、台風や上空の寒気による大雨と高波などに警戒が必要な時間帯の目安は次のとおりです。

大雨
まず、大雨が予想される時間帯です。
▽関東では30日の未明から夕方にかけて。
▽北陸では29日夜から30日夜にかけて。
▽東北では30日未明から31日昼ごろにかけて。
▽北海道では30日未明から31日昼すぎにかけて。


続いて暴風に警戒が必要な時間帯です。
▽関東では30日朝から昼すぎにかけて。
▽東北は30日昼前から31日朝にかけて。
▽北海道は30日夜から31日朝にかけて。

高波
続いて高波です。
▽東海と伊豆諸島、小笠原諸島では30日の朝にかけて。
▽関東では30日の夕方にかけて。
▽東北では29日夜から31日昼にかけて。
▽北海道では30日昼から31日昼にかけて。

高潮
このほか、東北では30日昼から31日朝にかけて、高潮に警戒が必要です。

今後の台風の進路や速度によっては、見通しが変わる可能性があり、気象庁は、最新の情報を確認するよう呼びかけています。