守田です。(20141226 08:30)

トルコの友人のアクティヴィスト、プナールさんからの依頼で、今回の総選挙の分析をトルコの方たち向けに書きました。
プナールさんが翻訳して下さって、向こうの新聞に載せていただく予定です。
みなさん。トルコの民衆と連帯して核のない世の中を目指していきましょう!!

*****

トルコのみなさん。12月14日に投開票が行われた衆議院議員選挙において、与党がたくさんの議席を獲得しました。
日本のマスコミの一部は「与党圧勝」と報道しましたがトルコではどのように報道されたでしょうか?

今の与党(自民党と公明党)は日本の原発の再稼働を進めようとしています。そればかりかご存知のようにトルコを始め、各国に原発を輸出しようともしています。
そんな与党が「圧勝」したと聞いて、トルコのみなさんはさぞ胸を痛められているのではないかと思います。日本の脱原発派は何をやっているんだというお叱りの声もあるかもしれません。
そこでみなさんに今回の選挙が意味しているのはどういうことなのかをお伝えしたいと思います。

何よりも強調したいのは、今回の選挙は日本の民衆の意志をほとんど反映していないということです。これは一つには日本の選挙制度が大変、歪んでいることがもたらしています。
衆議院選挙は小選挙区と比例区の並立制で、有権者は2票を持ち、自分の地域の選挙区の候補と、支持する政党名の二つに投票します。比例区は日本の大きく幾つかに分割して設定されています。
問題は日本では、小選挙区制を採用している多くので行われている、この制度にまつわる欠陥を補正する仕組みをまったくとっていないため、有権者の意志の反映が著しく歪められていることにあります。

具体的な数値を出しましょう。今回の選挙で与党の中核である自民党は小選挙区で約2561万票を獲得しました。そのことで小選挙区で獲得した議席数は222です。
これに対して野党の中で唯一鮮明に「原発をただちにゼロに」というスローガンを掲げた日本共産党は小選挙区で約704万票を獲得しました。自民党の得票数の27%です。ところが獲得議席はなんと1議席なのです。
自民党222議席の27%だったら60議席あってもおかしくないのになんと1議席です。お恥ずかしいほどに日本の選挙制度が歪んでいることがここからお分かりかと思います。

このため日本の衆議院選挙では前回、今回と棄権者が多く出てしまっています。投票が真っ当に反映されないため、意中の候補に勝てる見込みがないと思った人が投票にいかなくなってしまうのです。
しかもこれに輪をかけて安倍政権はできるだけ人々が投票に赴かないように、争点をみせない形で選挙をしました。中でも多くの有権者が反対している原発再稼働について選挙中はほとんど触れませんでした。
この結果、投票率がなんと52%台になってしまいました。有権者の二人に一人が「ばかばかしい」と感じて、投票場にいかなかったのです。投票率は第二次世界大戦後に日本が民主主義国になって以来、最低でした。

では自民党は有権者のどれぐらいの票を得たのでしょうか。比例区での自民党票は約1766万票。今回の選挙における有権者数は約1億124万人。そのため自民党の得票率は約17.4%です。
つまり「圧勝」と報道され、事実475議席のうち290議席も獲得した自民党は現実には17%しか有権者の信任を受けていないのです。ちなみに17%を正確に反映させた時の議席数は84です。
にもかかわらず日本の小選挙区制のひどい仕組みと低得票率によって自民党は290もの議席を獲得し、のちに無所属の候補が自民党に入党したため最終的に291の議席を得ました。これが「圧勝」と報道されている中身です。

これに対して日本の民衆が原発の再稼働についてどう思っているのか、政府に批判的な数少ない番組の「報道ステーション」が今年の7月にとったアンケートがあります。
それによると再稼働支持は30%、支持しないは56%、分からないが14%となっています。再稼働反対が賛成を倍近くも上回っているのです。この民意の力によって今、日本のすべての原発は止まったままです。
もちろん自国での原発の再稼働をのぞまない日本民衆が、それをトルコのみなさんに押し付けて良いなどと思っているはずがありません。

このことから私は今回の選挙結果に、私たちの国の民意はほとんど反映されていないと考えています。
その点でぜひともトルコのみなさんは与党「圧勝」などという報道に騙されないでいただきたいです。日本民衆の多くは危険な原発をトルコに押し付けることを望んでいません。何よりもそのことを知ってください。
だからこそ安倍政権は、この話題を徹底して避けて選挙を挙行したのです。こういうあり方を私は民主主義の手酷い破壊だと思っています。

ただその酷い制度の中でも、前述した野党の中で最も鮮明に原発即時ゼロを掲げている日本共産党の議席は8から21へと大幅に伸びました。(小選挙区1、比例区20)
得票数を見ると選挙区では470万から704万、比例区では369万から606万といずれも倍近く票を伸ばし、それぞれ自民党の三分の一もの数を獲得しています。ここには日本民衆の原発反対の声が強く反映されています。
小選挙区では与党議員を落とすためにあえて自分の好きではない候補に投票した方も多くおられるので、実際の反対票はもっとたくさんあったとみてとることができます。

一方で自民党よりも強く原発再稼働や人種差別的な発言を繰り返している極右政党の「次世代の党」が議席を19から2へと激減させてほとんど壊滅してしまいました。
実は安倍首相の政治的スタンスは、自民党よりもこの次世代の党の首長に近いのですが、この歪んだ選挙制度の中ですら極右はまったく伸びることができませんでした。
日本の中では人種差別発言やヘイトクライムがまだまだ続いていますが、こうした人種差別主義の党が瓦解したことはとても良かったと思います。

もちろんそうは言ってもこれだけの議席を自民党が得てしまっていること自身は深刻です。今後、原発の再稼働や輸出が国会の多数派の力で推し進められようとしてくる可能性が強くあります。
私はそれに対して、今こそ、民衆の直接行動による抵抗を大きくする必要があると思っています。
ここで言う直接行動とは選挙以外のすべての行動を指します。デモもそうだし裁判や署名集め、学習講演会、映像による訴えなど、本当に多様な取り組みが可能であり、事実、行われています。

とくに私たちの国では原発反対のデモが繰り返し起こっています。首相官邸前ではこれまでに最大で20万人のデモが起こりました。しかもこのデモは今も毎週金曜日に継続的に行われています。
私の住む京都の町でも、駅前の関西電力支社前に毎週金曜日の夜にたくさんの人が集まってきています。私も選挙直前の12月12日にも参加しましたが、現場で聞くとこの日の行動は139回目だったそうです。
これと同じように首相官邸前をはじめ全国の至る地域で電力会社前のデモがすでに100回を大きく上回りだしています。100週を越える連続デモが行われているのです。

私は国会の議席は多数を獲られていてもこうした民衆行動によって、政府の原発再稼働や原発輸出の目論見を止めることができると確信しています。
そのための最も確かな仲間はトルコのみなさんです。トルコのみなさんが「原発は嫌だ!」と叫んでいることが何よりも私たちの励みになります。嫌だと言っている人たちに押し付けることなどあってはならないと思うからです。
だからトルコの友人のみなさん。日本の与党の「圧勝」などという報道に惑わされることなく、より力強く原発反対を叫んでください。私がそれを日本に紹介します。それが私たち日本民衆の力になります。

同時にそうしてトルコと日本の民衆の連携を積み上げる中で、私たちはともに民衆に力が宿る時代を一緒に切り開いていきましょう。
合言葉はPower to the people!です!
ともに熱く連帯して頑張りましょう。核のない、本当に平和で幸せな未来を共に築きましょう!!