守田です。(20140910 22:30)

今度の日曜、月曜と信州大鹿村に行ってきますが、この地は今、リニア新幹線問題で揺れています。通過予定地になっているからです。
大鹿村は南アルプスの西側の麓の村。麓というより村の敷地は南アルプスの稜線にまで広がっています。聳えたつ有名な山は荒川岳や赤石岳。赤石岳は赤石山脈の名の由来の山でもあります。
稜線の東側はどこになるでしょうか。静岡県静岡市です。静岡市はさらに北側に稜線が延びていて塩見岳や農鳥岳も有しています。素晴らしい山塊ですが、この荒川岳から塩見岳にいたる稜線の間の辺りにトンネルを掘ることが計画されているらしい!

リニア中央新幹線南アルプス付近のルート
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/liner-minamiarupusu1.html

この山域は登山者にとって聖地の一つとも言えるところで、僕もかつてクライマーのはしくれとして何度も足を運んだところでもあります。その度に大自然の雄大さに大切な何かを教えられてきました。
厳冬期にも挑み、極寒の赤石岳頂上付近で仲間3名が次々と滑落し、救助に大奮闘しながら、自然の凄さ、厳しさを教えられたこともありました。いざとなった時の人間の底力、勇気などもここで学びました。
さまざまな意味でたくさんの恩を感じるこの場が蹂躙されることを黙って見ていることはできません。

計画を調べてみるとトンネルは、さすがに山の真下のゼロメートル以下では圧がかかりすぎて掘れないので、標高1560メートルの地点を通過するつもりであることが分かります。
となれば南アルプス山塊の山の中腹に大きな穴が空けられることになります。そのための作業道路の建設や、残土の排出等々を含めて、膨大な環境破壊になることがすぐにも分かる計画です。
しかも単純に考えても電磁石で車体を持ちあげるリニアは莫大な電力を必要とします。リニアの建設が原発の再稼働や新増設とセットの計画であることは間違いないです。

電気が足りないから原発再稼働が必要だとうそぶきながら、こんな電力消費型の巨大施設を作ろうとしている。それだけでも大嘘つきの計画だと言えます。
さらに良く分析していくと、この計画にはもっとたくさんの矛盾があることが見えてきます。電磁波公害は発生するし、しかもルートが危険過ぎるし、そもそも実効性自身があやしい。採算性も悪すぎる。
もんじゅのように大きな危険性と財政的負担だけが残る可能性があります。絶対に着工前にやめさせなければいけない計画です。

これらを端的に示しているものを探していて、ネットにうってつけのものがアップされていたので、紹介したいと思います。以下のものです。

リニア中央新幹線がやってくる ヤア!ヤア!ヤア!
2014年8月 スタジオH3製作 (17分20秒)
https://www.youtube.com/watch?v=u-cLZ2m6324

この動画をアップしてくださっているブログも紹介しておきます。

つぶやきかさこ~生き方・働き方・考え方+旅
http://kasakoblog.exblog.jp/22282308/

つぶやきかさこさんに深く感謝しつつ、リニア新幹線計画をストップするために、動画で説明されている内容をさらに簡単にまとめてみることにしました。
多少、言葉を付け足したところもありますが、基本的に動画と同じ内容です。お時間のない方は文章でお読み下さい。
お時間のある方はぜひ動画を!漫才仕立てになっていてユーモアにも溢れていて面白いです!まとめではこの部分は表現できませんでした・・・

以下、お読み下さい。

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リニア中央新幹線がやってくる ヤア!ヤア!ヤア!

そもそもJR東海が計画するリニア中央新幹線とは、「超電導磁気浮上方式」で車体を浮かせて高速で走らせるものです。
最高時速は500キロ以上。東京―名古屋間を40分で、東京―大阪間を67分でつなぐとされています。現行新幹線の2倍のスピードです。
開通予定は東京―名古屋間が2027年、東京―大阪間が2045年とされています。

以下、問題点を列挙していきます。

1、消費電力が膨大であること。結局、原発再稼働、新設、増設とセットであること。
リニア中央新幹線の消費電力は現行新幹線の3倍程度とされています。エネルギー消費3倍で得られるスピードは2倍程度ですからエネルギー効率が新幹線よりも悪いのです。電気の無駄遣いになります。
しかも現行新幹線の3倍程度というJR東海の試算にも不確定要素が大きくあります。実際には4.5倍程度、ないしそれ以上という試算もあります。
現行の新幹線に合わせてこの膨大な電力が必要になるのですから、今の発電所体制で足りるはずがありません。つまりリニア新幹線は明らかに原発再稼働、新設、増設とセットになった計画なのです。

JR東海の葛西敬之会長が2011年5月24日に産経新聞で行った発言に、このことがよく表れています。
「原子力を利用する以上、リスクを承知の上で、それを克服・制御する国民的な覚悟が必要である。(略)腹を据えてこれまで通り原子力を利用し続ける以外に日本の活路はない。
政府は稼働できる原発を全て稼働させて電力の安定供給を堅持する方針を宣言し、政府の責任で速やかに稼働させるべきだ」。
明らかに原発が稼働しないとJR東海が社運をかけて推進しているリニア中央新幹線が成立しないという危機からの発言ですが、自分たちの利害のために「リスクを承知の上で原発を動かせ」というエゴイスティックな価値観も良く表れています。

2、電磁波公害を発生すること。
車体を磁力によって持ち上げるのが「超電導リニア推進の原理」になりますが、このために強い磁界が発生します。電磁波は人体にとって危険です。
JR東海は国際的ガイドライン(ICNIRP)で示された基準値以下にするので問題はないと主張していますが、しかしこの基準値は「これ以下にせよ」と述べたもので安全を保障するものではありません。
電磁波にはこれ以下は安全という閾値はなく微弱でも安全と断言できないのです。無用な電磁波被ばくは避けることが肝心で、無用な放射線被ばくを避けるべきであるのと同じもとです。

リニア新幹線では磁気シールドが設置されることになっていますが、それだけ強い磁場が発生するということです。しかしシールドで避けられても、磁場の発生そのものは抑えられないのです。
また磁気シールドを強化すると車体重量が重くなるというジレンマもあります。シールドは高速走行の足かせになることから、きちんと施されるか大いに疑問な点です。
同時にリニアのシールドは原発の核燃料に対する五重の壁に比べてたった一つの壁です。完全に密封することはできないので、隙間から漏れる可能性もあります。しかしこれら電磁波による健康や周辺環境への影響についてはほとんど未調査です。

3、日本だけが開発している点に実行困難性があわれていること。
磁気浮上方式リニア鉄道の研究は1960年代に開始されましたが、ほとんどの国は関心を示さず、旧西ドイツと日本だけが独自に技術開発に踏み出しました。
しかしその後、ドイツも撤退し、日本だけが開発を続けてきました。リニア方式に展望がないから他国は取り組んでいないのです。コストパフォーマンスが悪く実現可能性が低いのです。
それなのに海外売り込みが目指されてもいます。この点も高速増殖炉に日本が固執していることや、福島原発事故が収束していないのに原発輸出に走っていることなど、困難性を認めず、自らに都合のいいことしか考えられない日本の体質が現れています。

4、危険な走行ルートが予定されていること。
リニア中央新幹線の86%は地下・山岳トンネルを通ることになっています(東京・名古屋間)
リニアは直線高速走行でスピードを出すように設計されており、カーブは苦手なのです。駅を直線で結ぶ必要があり、地上は土地買収の問題や環境への配慮の問題から不可能であるため地下が狙い、環境などおかまいなしにまっすぐに掘り進めようとしています。
しかしルートは南アルプスを貫通しており、世界最大級の活断層である「中央構造線」と「糸魚川―静岡構造線」の交差する土地を通過するとされています。日本有数の大地震地帯に巨大なトンネルを掘るというのです。
南アルプスは活発な地殻活動によって誕生した山塊です。もともと隆起が激しい山脈で現在でも隆起が続いています。そこにトンネルを掘って時速500キロで通過中に地震に遭遇すれば大惨事になります。

5、運転士がいないリスクがあること。
リニアには運転士がおらず中央制御室から遠隔操作でコントロールする設計になっています。
このため一度事故があった時に、現場での対応ができません。反対に中央制御室で事故が起こったら、リニア側からは何もできないことにもなります。。
このため地下トンネルにたくさんの乗客が閉じ込められて、俄かに救出できなくなる可能性もあります。

6、膨大な環境破壊が必至であること。
長距離トンネル建設は世界的に前例のない大規模土木工事であり、必然的に世界最大級の環境破壊を生み出す可能性があります。
JR東海の発表でも工事に伴い大井川上流部の流量が毎秒2トン減少すると予測されています。これらの水は水道や産業に使われているため、たちまち地域の生活や生産活動に影響が出ます。毎秒2トンは63万人の利用量に匹敵します。
毎秒2トンという数字も単なる予測であり、トンネルが水脈に当たればさらに減少してしまいます。事実、山梨実験線建設でも地下水の枯渇が発生しています。

生態系に与える影響も甚大です。南アルプスにはライチョウ、クマタカなど貴重種が生息しています。絶滅危惧種の鳥類、保護対象となっている動物も多数で、トンネル工事はこれらに破壊的な影響を与えます。
トンネルを掘れば大量の残土も発生し、その残土を置いた場所でも環境破壊となります。またこの大量の残土を運び出すために一千数百万台のトラックが必要であり、その排気ガスや騒音も環境破壊因子になります。
こうした環境負荷の極めて高い工事が10年以上も続くのです。工期が遅れればさらに長くダメージが続きます。
さらにルートに含まれている東濃地方にはウラン鉱床があり、そこでトンネルを掘るとウラン残土が発生してさらなる環境破壊因子となります。

7、工事が困難であるがゆえに安全性や環境保全を無視して推し進められかねないこと。
これだけの問題がありながら一企業が行おうとしており、政府も協力的ですが、工事そのものもあまりに多くの困難性を抱えています。
これに対してJR東海は環境評価準備書の中で次のように述べています。
「地形・地質等の制約条件。活断層は、回避する。もしくは、やむを得ず通過する場合は通過する延長を出きる限り短くします。」
「環境要素等による制約条件。生活環境(大気環境など)、自然環境(動植物、生態系など)、水環境、土壌環境、文化財等に対する影響をできる限り小さくします。」
しかし「できる限り」という記述では、事実上はなんでも「努力した」ことにされてしまい、実際にはOKになってしまいます。

そもそもリニアは真っ直ぐに掘り進められるため、途中に活断層や環境破壊があっても、大きく迂回することは不可能なものです。
10年以上の大工事を行う9兆円超のプルジェクトですから、途中で問題にぶつかっても大きな変更などできません。収支計画が成り立たなくなるからです。
そうなるとJR東海からすれば、安全性、環境保全に問題があっても「影響は小さいと考えます」と答えて、無理やり掘り進めるしか道がないことになります。

8、作っても採算が合わないこと。経済的つけが国民、住民に回されること。
山田佳臣JR東海社長は、2013年9月18日に記者会見で「リニアについては絶対にペイしない」と発言しています。社長までもがそういうのですから、ペイできる可能性などないことは明らかです。
またJR東海はリニア新幹線の必要性について東海道新幹線の輸送能力が限界に近いと主張していますが、年間座席利用率は平成20年度で61.5%、25年度で63.5%と余裕があり、大した伸びも示していません。人口減少局面におい今後も大幅に増える要因もありません。
むしろ東海道新幹線とリニア中央新幹線は限られた需要を食い合う関係に入ります。そうなると初期投資の回収も不可能になる可能性があり、失敗したつけはJAL再建のように国民、住民に回されるようになります。
スピードだけを考えるなら航空機もあり、格安航空会社の参入で運賃も安くなっており、それらを考えても採算が合わずに破産する可能性が高いです。

9、利便性も悪いこと
リニアは既存の鉄道と全く企画が違うので拡張性がありません。そのため東京―名古屋間が完成しても、名古屋より先に行く人にはメリットがありません。初めから新幹線に乗った方が便利だからです。
中間駅も不便極まりないところに設置されています。各県の要望によって無理やり作られようとしているものですが、停車は1時間に1本程度です。しかも交通インフラもまったく整備されていません。
中間駅まで行ってもその先が整備されなければ利便性は全くありませんが、かといって新たに整備を行うことは、地元に財政負担と環境破壊を強いることになります。
完成したら一度は乗ってみたいと言う人はいるでしょうが、一回きりのこと。間違いなくリニアは失敗し、国民、住民に財政負担を強いることになります。だからこそ日本以外の国々は撤退してしまったのです。

10、それでも輸出(無償提供)しようとする点に矛盾が現れていること。
日本のリニア技術のアメリカへの無償提供の話が出ています。しかしもし素晴らしい技術なら正当なライセンス料をとれば良いのです。なぜ無料なのか。無料の価値しかない技術だからです。

以上からリニア新幹線は着工前にやめさせなければならないとんでもない計画であることは明らかです。

リニア新幹線がやってくる 嫌っ!嫌っ!嫌っ!

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