守田です。(20140424 08:30)
3月30日に奈良市民放射能測定所の開設1周年記念企画でお話した内容の起こしの8回目です。 今回からベラルーシ、ドイツ、トルコを訪れた旅を振り返ります。 僕がこれらの国を訪ねたのは、ちょうどロシア軍がウクライナのクリミア半島に向かっているときでした。そのウクライナの北のベラルーシと南のトルコを、ドイツを経由して訪れたことになります。 ご存知のようにウクライナでは深刻な対立が続いています。国民・住民の中に親EU派と親ロシア派が生まれてしまい、一部の人々が武装していること、また背後に大国が動いていることなどによって、極めて高い緊張が続いています。
ウクライナはチェルノブイリ原発事故で激しく被曝した国。国家予算の4分の1ほども被曝対策に使い続けてきたと言います。その国で起こっている内戦に発展しかねないこの事態。胸が痛むばかりです。 今回の旅はウクライナに赴いたのではないため、ウクライナ情勢に関して観てこれたものがあるわけではありませんが、それでもこの国、そしてまたチェルノブイリ事故被災国をつつむ大きな背景を観てこれたように思います。 これらについての振り返りを、奈良測定所講演の後半にお話しましたので、何回かに分けて掲載させていただきます。お読みください!
なおこの講演録は、奈良市民放射能測定所のブログにも掲載されています。前半後半10回ずつ分割し、読みやすく工夫して一括掲載してくださっています。 作業をしてくださった方の適切で温かいコメント載っています。ぜひこちらもご覧下さい。
守田敏也さん帰国後初講演録(奈良市民放射能測定所ブログより) http://naracrms.wordpress.com/2014/04/08/%e3%81%8a%e5%be%85%e3%81%9f%e3%81%9b%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f%ef%bc%81%e5%ae%88%e7%94%b0%e6%95%8f%e4%b9%9f%e3%81%95%e3%82%93%e5%b8%b0%e5%9b%bd%e5%be%8c%e5%88%9d%e8%ac%9b%e6%bc%94%e3%81%ae/
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「原発事故から3年 広がる放射能被害と市民測定所の役割 チェルノブイリとフクシマをむすんで」 (奈良市民放射能測定所講演録 2014年3月30日―その8)
Ⅲ ベラルーシ・ドイツ・トルコを訪れて(1)
【ベラルーシの地理的位置関係】 続いて、ベラルーシ、ドイツ、トルコ訪問の旅の報告をさせていただきたいと思います。
今回の旅の前半は、ドイツで行われた「国際医師協議会」を中心としたイベントへの参加が目的でした。 どういうものなのかというと、ドイツと日本とベラルーシの医師たちが集まり、チェルノブイリやフクシマにおいて放射線障害はどのように発生しているのか、またそれに対してどのような治療が有効なのかということをメインテーマとした協議会を行うという企画でした。 そのため、まずはドイツや日本の医師がベラルーシを訪問し、首都のミンスクとチェルノブイリのすぐ北にあるゴメリという町に行ってきました。
みなさん、だいたいの位置関係はわかりますかね? ヨーロッパの東側にロシアがありますね。その西側にポーランドや東欧の国々があります。さらに西にドイツがあります。ドイツの側から東に進んで、ポーランドを経てロシアに向かう間にあるのがベラルーシです。 そのベラルーシを南に下ると国境線を経てすぐのところにチェルノブイリ原発があり、ウクライナになります。この国の一番南はクリミア半島。今ロシアに占領されていて、ホットなところですよね。そして黒海があり、対岸にトルコがあります。
僕は今回、日本が輸出しようとしている原発の建設予定地とされているトルコのシノップという町に行ったのですが、そこはちょうど黒海を隔ててクリミア半島の反対側に位置しています。 僕はベラルーシとトルコに行ってきたので、ウクライナ周辺を旅してきたとも言えます。僕が向こうにいる間に、ロシア軍がクリミア半島への介入をはじめ、ウクライナ軍と戦闘が始まるのではないかという緊張が続いていました。 トルコは黒海の南側にありますが、さらにずっと南に下ると今度は地中海が出てきます。西側にはエーゲ海があり、ギリシャを経て、イスタンブールに入ってくる付近がヨーロッパとアジアの境とされているわけです。
トルコは東側はシリアやイラク、イランなどとも面している。そのシリアではこのところ政府軍と反政府軍が戦闘を行っていますが、僕が帰ってきた翌日に、トルコ軍機がシリア軍機を撃ち落とすという事態が発生しました。 トルコのF16戦闘機が、シリア政府軍機を撃ち落としたわけです。トルコは反政府側を支援していて、シリア軍機が領空侵犯をしたので撃墜したと説明していますが、シリア政府側は、シリア領内に入り込んだトルコ軍機に落とされたと主張している。 ともあれこの地域に軍事的緊張関係が入り乱れていることが分かります。そのようなさまざまな緊張関係がある中で、僕らはベラルーシに行ってきました。
【ベラルーシの街の姿から】 (会場におられる関西医療問題研究会の入江紀夫医師に)ちなみに入江先生。ベラルーシにご一緒しましたが、この国の印象をどんなふうに考えておられますか?ベラルーシという国とは一体何だったのでしょうか。
[入江先生]一番印象があったのは、地下鉄に乗った瞬間に鉄粉の臭いがしたことですね。僕はアレルギーだから、いっぺんに目と鼻とすごいことになってしまって。 それと向こうの病院が、ものすごく立派なのですけれども、どこか福島医大を想像するようなものすごいのが荒野の中にどーんと建っているわけですね。そこの医者たちは公務員だと思うのですけれど、非常に口が固かったのが印象的でした。
[守田]あの地下鉄ですね。けっこう電車が古かったからですかね、鉄粉の臭いがしたのは。
[入江先生]強烈でした。
[守田]本当に強烈でしたね。地下鉄には近くに食事をするために乗ったり、病院見学のための移動で乗りました。今回の企画の中心を担った核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部の方たちが一緒でした。 次に街の写真をお見せします。みなさんどう思いますか?とてもきれいなのですよ。とにかくやたらきれいなのですが、なんとも言えないのは、あまりにも統制されている感じがすることです。どこの町にでもあるような雑然としたものがぜんぜんない。美観が統一されている街でした。
翌日のミンスクで行われたIBB※という組織のホテルで集まった会議の風景をお見せします。 ※ドイツ語の頭文字だが日本語に的確に対応する言葉がない。英語ではAssociation for International Education and Exchange=「国際的な協力と教育の場」となる。 ヨーロッパ・アクション・ウィークの企画母団体。「核のない世の中、平和な世の中を求めて、1970年代に学生たち6人が集まって立ち上げ、大きくなってきた組織」
日本人の参加は、高松先生、入江先生、山本先生、山本さんのお連れ合いの由子さん、東京から来たおしどりマコさんケンさん。『週刊MDS』の記者の豊田さん。そして僕でした。 ここでいろいろ話されたことはまだよく消化できていないのですが、入江先生がさっき言われていたようにベラルーシの医師たちの口は確かにすごく固かったですね。基本的な見解はICRPの医師たちが言ってることと同じでした。 小児甲状腺がんだけは原発事故の被害として特定されているけれども、事故の収束作業にあたったいわゆる「リクビダートル」の人たちも、一般の人々と比べて健康上にそれほどの差はないと言うのです。 小児白血病は明らかに多くて、病棟に対する手当などはすごくきちんとされている印象を受けるのだけども、放射能との因果関係は明確になっていないという答えばかりが返ってくるのです。
続く
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