守田です。(20140128 20:00)(20140129 20:00一部修正)
東京都知事選が進行しています。僕は宇都宮さんを支持しますが、しかしこの都知事選で、福島原発の今があまりにも危険であること、東京でオリンピックをやる余裕など私たちの国にはまったくないということが焦点化されていないのが残念です。
そのため敢えて今、福島3号機の現状を記事にしましたが、今回は続いて福島4号機燃料プールのことを論じたいと思います。現在もものすごく危険な作業が進行中だからです。
燃料棒、正確には燃料集合体の取り出しが始まったのは昨年(2013年)11月18日のことです。
1回あたり22体の燃料集合体が4号機のプールから取り出され、地上の共用プールに移されていますが、東京電力によれば今年の1月27日までに10回の移送作業が行われたそうです。
移送された燃料集合体は、使用済みのものが全体で1331体のうち198体。まだ使われていなかった新燃料が202体のうちの22体。合計で1533体のうち220体の移送が終わったと報告されています。このため現在、燃料プールの中に残っている燃料集合体は1313体であることになります。
この情報は毎週月曜日に更新されるそうです。情報元を記しておきます。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/removal4u/index-j.html
ちなみに燃料棒とは、正確には直径1センチ、長さ4メートルに、ウランのペレットを積み上げたものです。ジルコニウムという金属で覆われています。
使用済み燃料棒とはウランの核分裂反応が進み、核分裂生成物=放射性物質がたくさん生まれている状態で、それ以上、発電には使われなくなった燃料棒のことです。使用済みといってもまだ核分裂性のウランは残っています。
この燃料棒を8列かける8列に並べたものが燃料集合体ですが、この集合体のことを「燃料棒」と呼んでいることもあります。これが1533体ないし本あったというわけです。
ちなみに京大原子炉実験所の小出裕章さんの計算では、4号機プールの燃料棒に封印されているセシウム137の量は、広島原爆が撒き散らしたものの1万4千倍だそうです!
さてここでこの燃料集合体の移送はなぜ行われているのか、同時にどのような危険性があるのか、もう一度振り返っておきたいと思います。
2011年3月11日に大地震と津波が福島第一原発を襲ったとき、4号機は不幸中の幸いというべきか、定期点検中で運転しておらず、1号機から3号機のようなメルトダウンを免れました。
その代りに炉心の中の燃料はすべて燃料プールに移されていました。このため大量の使用済み燃料がプールの中にひしめいてる状態で事故に直面し、しかも運転中ではなかったにもかかわらず爆発を起こしました。
3号機が原子炉の上にあるオペレーションフロアで爆発が起こったのに対し、その下の階での爆発でした。
東電は3号機から発生した水素が、ベントの際に4号機の建屋の中に入り込み、爆発にいたったと発表していますが、爆発の原因は今もって不明です。
さらにこのとき4号機の水が抜け出してしまいました。使用済み燃料は空気中に出てしまうと、すぐに近くにいる作業員が即死してしまうほどの放射線を出し、大変危険な状態でした。
どれぐらいの量が抜けたのかも不明です。当時、アメリカなどで、4号機プールにはほとんど水が残ってないのではないかという憶測が繰り返し出されていました。
この点でも真相は分かりませんが、最終的にはまったくの偶然の産物で最悪の事態は免れました。
当時、4号機はプールに隣接している原子炉上部(原子炉ウェル)にまで水がはってあり、その水が燃料プールとの仕切り板を破ってプールに流れ込んだため、水が完全に干上がって燃料が溶け出し、抜け落ちてしまう悪夢の階梯が途中で止まったのです。
なぜかというと、4号機は原子炉圧力容器内に炉心を覆う形に配置されている「シュラウド」という部品の点検・交換が予定されていたのでした。このシュラウドも繰り返し損傷が発見されてきた問題部品なのですが、そのため原子炉の中に水がはってあり、上部の原子炉ウェルも水で満たされていました。
シュラウドも大量の放射線を発するため、水の中で切断・分解して取り出すためでしたが、この作業の終了予定が3月3日とされていて、順調にいけば7日には水が抜かれる予定になっていたのです。
ところが道具の不具合などがあって作業が遅延し、水抜き作業が遅れたまま4号機は事故に直面しました。このことによって原子炉ウェルに水が大量に残っており、結果的に燃料プールに流れ込むことで、悪夢が途中で止まったのです。東電が止めたのではなく、偶然に止まったのでした。
もし作業が予定通りに進んで水が抜かれていたらと思うとぞっとします。1500体以上もある燃料集合体が高熱を発しながら、抜け落ちていくことになっただろうからです。
この点については以下の記事が参考になります。
震災4日前の水抜き予定が遅れて燃料救う 福島第一原発4号機燃料プール隣の原子炉ウェル 奥山 俊宏(おくやま・としひろ)
法と経済ジャーナル2012/03/08
http://judiciary.asahi.com/articles/2012030800001.html
燃料溶解が止まらなかったら実際にはどうなっていたのか。たちまち高線量の放射線が発生して現場は撤退が余儀なくされ、1号機から4号機までがすべて手当できなくなってしまいます。当然にも次々と原子炉が崩壊し、膨大な放射能が発生します。
2011年3月25日に当時の近藤原子力委員長が政府に提出した「近藤シナリオ」によれば、半径170キロ圏が強制避難、東京を含む250キロ圏が、希望者を含んだ避難地域になるところでした。3000万人が避難対象でした。東日本壊滅が予想されましたが、これとて甘い被害想定ではなかったか僕には思えます。
この点について詳報した過去記事を紹介しておきます。
明日に向けて(389)4号機が倒壊したら、半径250キロまで避難の必要が・・・ 20120125
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/b0af865e4de2a836139cfc49cd5583e6
明日に向けて(765)福島原発事故の最悪シナリオは半径170キロ圏内強制移住!250キロ圏内避難地域! 20131119
http://toshikyoto.com/press/1088
爆発によって吹き飛んだのは燃料プールが埋め込まれているフロアでした。このため燃料プールを支えている床が崩壊してしまいました。プールは宙吊り状態になってしまったのです。
このため事故の破局的進行が途中で止まった段階で、東電は補強工事をはじめました。プールの下から鋼鉄製の柱を立ててコンクリートで固めたのです。しかし作業はあまりの高線量の中でのもの。どれほどの強度が出ているか分かりません。
しかも床が壊れているので、プール全体をきちんとしたから支えられているわけでもありません。そのためプールは今なお非常に不安定な状態にあるのです。
それが4号機のプールの燃料集合体の、より安全性の高いところへの移送が急がれている理由ですが、この作業を途中で失敗すれば、それ自身が事故の拡大に直結する可能性があります。もの凄く危険な作業ですが、それでもやらざるを得ない。今、私たちの命は、まさに綱渡りの上にあるのです。
続く
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