守田です(20211010 23:30)

● 今回は原潜と原発のこと、核燃料再処理の意味するものついて語り合いました

森川さんと守田のもりもり対談2回目「原爆と原発の関係について」の続きをお届けします。

ここで話されたことを2回にわたって書きだしています。
前回は「ウランの核分裂と原爆製造」と「プルトニウム原爆の製造」について説明しました。
今回は「原子力潜水艦から始まった核発電」と「核燃料再処理の意味するもの」についてです。

「もりもり対談」1回目もご紹介しておきます。

被爆問題とどう向き合っていくのか。コアな内容を語り合いました。紹介記事のアドレスも記しておきます。
明日に向けて(2057)被爆、被曝、被ばく、ヒバクについて考える(森川聖詩と守田敏也の「もりもり対談」を始めます!)
https://toshikyoto.com/press/6436.html

● 原子力潜水艦から始まった核発電

今回は、ウランの核分裂の発見から原爆が誕生したことに継ぐ話で、この過程で核発電=原発も生まれたことを解説しています。その際、原発はあくまで副産物だった点が大きなポイントです。
どういうことかというと、原子炉で核分裂連鎖反応を行うと大量のエネルギー=熱が発生するのです。これを冷ますにどうしたら良いか。あれこれ試される中で水が使用されました。
しかも水は「減速材」の役目も果たしました。原子炉の中の中性子が水の分子と当たることで速度を落とし、より次のウランに当たりやすくなるのです。その点でより効率的でしたが、しかし熱によって大量の蒸気が発生してしまう。

これを何かに使えないかということでタービンをかませ、発電することが考え出されたのですが、それも初めは核軍事体系の一部でした。潜水艦の動力として開発されたのだからです。
核戦争の当事者にとっては、相手がどこから核攻撃をしてくるのかをつかむのが重要です。先にそこを叩けば核攻撃を防げるからです。反対にどう隠された場から核攻撃を行うのかが重要になる。
ヒロシマ・ナガサキではアメリカ軍はB29から原爆を投下しましたが、しかし航空機は撃墜される可能性があるし、基地を叩かれる可能性があります。それでミサイル開発が進みましたが、ミサイルも発射基地を特定されたら叩かれてしまう。

それで注目されたのが潜水艦ですが、そうすると今度はできるだけ長く潜っていた方がいいことになる。燃料補給などのために浮上してきた時が見つかりやすいからです。燃料基地も攻撃を受けやすい。
長く潜っているためには、少量の燃料で長く航行できると良いし、しかも酸素を使わずに発電できれば酸素の補給もいらないので、より浮上をしなくてすむ。それで「原子力エンジン」が開発され、原潜が生まれたわけです。
民生用の原発は、そののちに核戦略への批判が高まる中で、「平和」という隠れ蓑のもとに登場してきたものにすぎないのです。


最初の原子力潜水艦ノーチラス号 1954年1月21日進水 1954年12月30日 搭載原子炉が初臨界 アメリカ国立公文書記録管理局の写真より

● 核燃料再処理の意味するもの

さてこのように核開発の歴史を観てくると、核兵器を持つためには、原子炉やウラン濃縮技術を持つとともに、再処理技術を持つことがとても重要であることが分かります。それがないとプルトニウムを得られないからです。
このため核保有五大国は、その他の国に原発は認めても再処理技術を持つことを認めていません。実は唯一の例外として、この技術を持っているのが日本なのです。
その五大国や日本が、原発を輸出するときには、売却する相手国と「原子力協定」を結ばなければなりませんが、そこには「原発の技術を供与するけれどもこれを核開発に使ってはならない」という約束が書き込まれます。


再処理の工程 原子力・エネルギー図面集より

それでも実は各国は、原発を持つことが核兵器を持つことの初めの一歩になるので、持ちたがる傾向にあるのです。軍事的緊張関係の中で強国たらんとしている国ほどそうです。
この点で特徴的だったのは日本とトルコの間の原子力協定でした。トルコのエルドアン首相が、再処理技術の供与を強く欲したからです。核技術体系として原発を求めたのです。
しかしそれでは原子力協定違反になります。それで協定には「両国が合意した場合は、再処理技術を供与する」と「玉虫色」の文言が書き込まれました。


トルコ・エルドアン首相と安倍総理大臣で原子力協定調印を合意 2013年5月3日 AFP通信

エルドアン首相は、それでトルコを、再処理技術を持ちうる国=核武装を可能にしつつある国と周辺国に見せることを可能にしようとしたのでしょう。
一方で、日本側は「両国が合意したらと書いてある。日本は合意しないので再処理技術を供与したことにならない」とうそぶき、ビジネスを進めたのですが、この一件は、原発が核兵器体系の一環であることを強く印象付けるものでした。
もっとも、結局、日本からは原発そのものが輸出できませんでした。トルコと日本の民衆の連携で、原発建設を食い止めてしまったからです。僕も食い止めに少し寄与することができて嬉しかったです。

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