守田です(20210822 21:30)

● 黒い雨訴訟について学びたい!というご要望にお応えして

8月28日(土)午前10時から12時までのスケジュールで大阪府茨木市にてお話します。
茨木市福祉文化会館203号室にてです。主催は、放射能から子どもを守る会・茨木。
連絡先は以下のお2人です。山本よし子 080-3113-2304 垣内玲子 070-5668-2126

ポイントは黒い雨訴訟が明らかにしたもの。明らかにされたことの意義をしっかり知りたいとのこと。
僕にとってもタイムリーな企画ですので喜んでお受けしました。
しっかりコロナ対応をして集うとのこと。ぜひご参加ください。

● 黒い雨訴訟の勝利はどこが画期的位置性ー黒い雨降雨地域を大幅に拡大して認定させたこと

まず一審判決の画期的な位置性について明らかにします。ポイントは黒い雨降雨地域が、これまでの認定よりも大幅に拡大されたことにあります。
判決まで国は、黒い雨による被害を、国によって大雨が振ったことが確認された地域に限るとしてきました。
その周りに広がる「小雨地域」を被害地域から排除し、さらにそのまた周りでも「黒い雨に打たれた」という証言がたくさんあるのに無視してきたのです。


中国新聞松本記者が載せた黒い雨のもともとの認定地域(赤いところ)と小雨地域、その後に広島市が推定した降雨地域の図に原告の住まいを点で示した地図を原告の本毛稔さんがうちわに加工したもの。守田撮影。

大雨地域と小雨地域の分け方も恣意的でした。例えばある地域では川を境に二つの地域を分けています。
しかし川は谷の中で左右に大きく蛇行しながら流れている。それに沿って雲が蛇行して雨もまた蛇行して降らなければこの線引きは正しくなりませんが、もちろんそんなことありえるはずがない。
原告のみなさんは一審判決にいたる裁判の中で、こうした国の調査のおかしさ、不十分さをどんどん立証し、ついに降雨地域の大幅拡大をかちとったのです。


被爆者健康手帳を手にした原告の本毛稔さんを囲んで。地図は本毛さんが黒い雨の問題を説明するために丁寧に作成したもの。判決確定まで、この川を境に上側が大雨地域、下側が小雨地域と分断され、小雨地域の被害が認められていなかった。「黒い雨を降らせた雲が蛇行なんかしたはずがない」と本毛さん。守田のスマホで小山美砂記者撮影。

● 黒い雨の影響を受けた地域にいれば保障されねばならないことを明確化させたこと

続いて二審判決の画期的な位置性について明らかにします。ポイントは被害の認定のあり方が、より真っ当になったことです。
というのは一審判決は、大雨降雨地域が国のそれまでの認定よりもずっと広がったことを認定させましたが、その場にいて健康管理手当の条件である11疾病にかかった場合に手帳を受け取る権利が得られるとなっていました。
高裁判決は、一審判決の中でこの部分は間違っているとし、何らかの疾病にかかったか否かではなく、黒い雨の影響を受けたのなら保障が与えられ、手帳が交付されるべきだとしたのです。

これは放射線被曝被害を考える上での大きなポイントです。国は二審になって被害が確かに生じている「科学的証明」を求めてきたのですが、高裁はそれを退け、被害を受ける可能性があったらもう手帳を交付すべきとしたのです。
高裁が踏襲したのは被爆者援護法に盛り込まれた考え方です。そもそもさまざまな疾病と放射線被曝との因果関係を頑として認めないのが核戦略を進めてきた米国の立場であり、国もそれを踏襲して、被曝被害を認めないのが実情です。
これに対して被爆者は、連綿たる闘いの中で「被害を生じうる立場に置かれたのなら保障すべきだ」という観点を勝ち取ったのですが、黒い雨訴訟高裁判決で、このことが正しく反映されたのです。


広島高裁で全面勝訴 喜ぶ原告団事務局長の高東征二さん 20210714 守田撮影

● より多くの被害者救済の道を切り開いたこと

三つ目に高裁判決が、政府が上告を断念したことによって確定したことで、より多くの被害者救済の道が切り開かれたことです。
実はこの点は判決直後の7月20日、田村憲久厚生労働相が、あけすけにこう言い放ちました。「(放射線に関する)他のいろいろな事象に影響する内容とすれば、われわれとしては容認しづらい面がある」。
そうなのです。この確定判決は他の放射線被曝被害のすべての局面で適用可能なのです。ポイントは被害の「科学的立証」など必要ないという点です。被曝して健康を害しうる可能性にあれば保障がなされるべきなのです。

これは被曝によって、「どんな病にかかるかもわからない」というマイナスの可能性と、そのことへの大きな不安を背負わされたあらゆるヒバクシャへの、当然の保障のあり方ですし、この考え方は被曝被害以外にも適用可能です。
というのは多くの場合、被害者の側も「被害の科学的証明ができないと被害を訴えられない」と思いこまされがちです。しかし専門的な調査機関などは、みな国や大資本の手の内にあるので、科学的立証が困難な場合が多い。
だから泣き寝入りしてしまう例がたくさんありましたが、そうではないのです。被害を受けうる関係性のもとに置かれていたことの証明がなされれば、それでもう保障しなければならない。これをあらゆる核被害に適用させなくては。


この判決は被曝を巡る「他のいろいろな事象に影響する」と田村厚労相があけすけに告白 20210720 東京新聞

● 学習会へのご参加を

以上、8月28日の学習会では、ポイントだけあげたこれらの点をより具体的に、分かりやすくお話します。
この内容は、長崎での被害にも適用されうるし、核実験での被害にも、原発事故での被害にも適用できます。そしてそれをさせることが、次の核被害を防ぐことに大きく貢献することになります。
だからあなたとあなたの愛しい方たちの命を守るためにも、黒い雨訴訟が切り拓いたものをつかんでください!ご参加を訴えます。

#黒い雨訴訟 #広島高裁勝訴 #上告断念 #放射線被曝 #被爆者援護法 #高東征二 #本毛稔 #水戸喜代子 #小山美砂

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