守田です。(20120828 23:30)

5月に福島を訪れた時に矢ヶ﨑さんと僕の講演会に参加していただいた武藤類子さんが、福島原発告訴団のことについて発言してくださいました。原発事故の責任者、被害を拡大した責任者への告訴の動きです。このことはもう少し前から知っていて注目していましたが、武藤さんの発言に何とも感動し、みなさんに支援を呼びかけました。そのときの記事を示しておきます。

明日に向けて(478)怒りの声を上げる福島県民に連帯しよう!(福島原発告訴団のお話を受けて)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/1b7dc53e218c2ff2236505fc4447dc9c

明日に向けて(481)すごい!原発事故・被害拡大責任者を、福島県民1301人が告訴!!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9d97dbb6848287a2e7903a519c6fe387

(481)時点では告訴人は福島県民1301人でしたが、その後にさらに増えて最終的には1324人が参加。そしてこの告訴が8月4日にしっかりと受理されました!これを受けて告訴団は、第二弾として、福島県以外の全国の人々に告訴への参加を呼びかけ始めました!みなさんにぜひぜひ、これにご参加されることを訴えます。日本の憲政史上、最大最強の告訴団を登場させましょう!全国各地の集約先が示します。まだ九州・四国が明示されていませんが、現在、設置のための努力が着々と進行しているようです。ぜひ、ご自分の身近なところで参加表明を行ってください。

全国告訴受付先
http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.jp/2012/08/blog-post_8.html

告訴の内容を示すために、告訴団のHPに掲載されている「告訴宣言」を末尾に貼り付けます。この文章は全体として格調高く、素晴らしいものですが、僕はとくに末尾のこの点にグッときたので、先に引用しておきます。

***

私たちは、自分たちのためだけにこの闘いに踏み出すのではありません。日本政府は、あらゆる戦争、あらゆる公害、あらゆる事故や企業犯罪で、ことごとく加害者・企業の側に立ち、最も苦しめられている被害者を切り捨てるための役割を果たしてきました。私たちの目標は、政府が弱者を守らず切り捨てていくあり方そのものを根源から問うこと、住民を守らない政府や自治体は高い代償を支払わなければならないという前例を作り出すことにあります。そのために私たちは、政府や企業の犯罪に苦しんでいるすべての人たちと連帯し、ともに闘っていきたいと思います。

この国に生きるひとりひとりが尊重され、大切にされる新しい価値観を若い人々や子どもたちに残せるように、手を取り合い、立ち向かっていきましょう。

***

これは本当に重要な点です。

これまでも度々、触れてきましたが、日本政府はこれまで、広島・長崎原爆投下を正当化し、その非人道性を暴かれまいとして内部被曝を隠してきたアメリカに全面協力し、被爆者の要求、願い、切実な思いを踏みにじり続けてきました。とくに被爆者が放射線によって病になったとことが証明された際にえられる「原爆症認定」をほとんど行わず、がんをはじめ、あらゆる病気で苦しむ被曝者に、「あなたは放射線を浴びていません。その病はあなたの生活習慣のせいです」といいなしてきました。まさに加害者・アメリカの立場にたって、被爆者を苦しめ続けてきたのです。

これをただすために2003年から被爆者たちがはじめた「原爆症認定訴訟」は、集団訴訟19連勝、個別訴訟をいれると28回も被爆者の側が勝訴し、認定者の幅が少しだけ広がりましたが、国はいまだに内部被曝を認めようとせす、裁判で28回も負けた内容を保持し続けています。そしてそのことが、今、私たちの国の極めて甘い放射線防護基準を生み出しており、いや、その基準すら破られているのに、何ら正当な措置が取られず、多くの地域で、飲み食いや寝ること、18歳未満のものを連れ込むことが禁止されている「放射線管理区域」に、普通に人が住まわされ続けている現状が生みだされているのです。

さらに言えば、アメリカが行った戦闘員と住民を区別することなく全国の都市へも無差別空襲を繰り返したことにも日本政府は何らの抗議も行ってきませんでした。明らかな戦争犯罪が長きにわたって不問に付されてきたのです。なぜでしょうか。日本政府自身がアジア侵略戦争のさまざまな罪を繰り返し告発される側にいたからです。それから逃げるために、日本はアメリカに擦り寄り、アメリカの罪を一切告発しませんでした。これに靖国神社を美化する右翼が同調してきたのが日本の歴史でした。政府や右翼の言う「英霊」がもっとも戦ったのはアメリカであったにもかかわらず、ただの一度も、原爆投下に見られるアメリカの戦争の非人道性は告発されなかったのです。

それゆえに、アメリカはその後に朝鮮戦争をおこして空襲を繰り返しました。このとき日本は「朝鮮特需」によって経済復興しました。さらにアメリカはベトナム侵略戦争を起こし、北ベトナムに大量のB52を沖縄の基地から送り込んで空襲を繰り返しました。このベトナム戦争特需によっても日本は経済発展しました。この過程でアメリカは日本に原子力発電を持ち込み、中曽根康弘氏や読売新聞の暗躍のもと、原爆の被害を受けた日本に核エネルギーを根付かせることに成功しました。このとき持ち込まれたのが、原発の中でもとくに欠陥が多いと指摘されているマークⅠ型原子炉でした。今回、事故をおこした福島原発で使われてきたものです。

こうしてアメリカの核戦略に全面協力をしながら、日本はアジア侵略の責任を回避し続けました。とくに日本軍が組織的に関与していたことが明白な性奴隷性問題(いわゆる従軍慰安婦問題)などの否認を続け、勇気をもって犯罪の告発を行ったたくさんの女性たちの心を踏みにじり続けてきました。ちなみにこの戦中の「従軍慰安婦」制度の設立・運営にも大きな位置を持っていたのが海軍の将校だった中曽根康弘氏でした。大臣クラスでは岸伸介氏なども関わっていました。そうした人物が、私たちの国では戦後に首相についたのです。

このように日本政府が過去の罪を認めないことは、国民・住民を侵略戦争に動員し、途端の苦しみを舐めさせたことも、「鬼畜米英打倒」と叫んで、国民・住民をまったく勝算のない戦いに狩り出し、挙句の果てにさんざんな空襲に合わせたことにも何ら責任をとらず、反省も、補償もしてこなかったこととはセットの関係にありました。

アジア侵略の罪を認めないことは、日本国民・住民に対する政府の責任を認めないことと一体となっていたのであり、さらにはアメリカによる日本国民・住民への虐殺行為を何ら告発せず認めてしまうこととも連なっていたのでした。だから日本の国民・住民は、これまで原爆の被害も、空襲の被害も、何ら償われずに来たのです。そのことにもう本当に私たちは大きな規模できづくべきです。だからこそ、今、泣き寝入りしていてはいけない。犯罪者を裁かなくてはいけない。それこそが私たちの人権を守り、発展させ、未来世代の幸せを大きくするからです。

その意味で、この問題は本当に私たち全体の問題です。ここでこの罪を不問に付してしまえば、この先も同じようなことが起こるでしょう。そのとき、犠牲になりながら、救済されず、それどころかかえって踏みつけられ、苦しみ、涙する可能性があるのは、あなたであり、私なのです。そして私たちの子ども達なのです。そんなことはもう本当にあってはいけない。この第二次世界大戦前から続いている日本という国の無責任体制をまさに今ここでたち切らなければならない。だからこそ、私たちは日本憲政史上、最大の告訴団を登場させる必要があります。

みなさま。どうかご参加ください!同時に、周りの方を一人でも多くお誘いください!「無責任大国ニッポン」を変えるために、立ち上がりましょう!

****************

福島原発事故の責任をただす!告訴宣言

福島原発事故から1年を過ぎた今なお、事故は全く収束せず被害は拡大の一途をたどっています。美しい自然と豊かな生命をたたえたふるさと、何ものにも代え難い共同体を失った私たちは、地域社会の分断という重荷を背負い、いつ終わるともしれない苦難の中にいます。

福島原発事故は、すでに日本の歴史上最大の企業犯罪となり、福島をはじめとする人々の生命・健康・財産に重大な被害を及ぼしました。原発に近い浜通りでは、原発事故のため救出活動ができないまま津波で亡くなった人、病院や福祉施設から避難する途中で亡くなった人、農業が壊滅し、悲観してみずから命を絶った農民がいます。

このような事態を招いた責任は、「政・官・財・学・報」によって構成された腐敗と無責任の構造の中にあります。とりわけ、原発の危険を訴える市民の声を黙殺し、安全対策を全くしないまま、未曾有の事故が起きてなお「想定外の津波」のせいにして責任を逃れようとする東京電力、形だけのおざなりな「安全」審査で電力会社の無責任体制に加担してきた政府、そして住民の苦悩にまともに向き合わずに健康被害を過小評価し、被害者の自己責任に転嫁しようと動いている学者たちの責任は重大です。それにもかかわらず、政府も東京電力も、根拠なく「安全」を吹聴した学者たちも誰一人処罰されるどころか捜査すら始まる気配がありません。日本が本当に法治国家かどうか、多くの人々が疑いを抱いています。

生命や財産、日常生活、そして「健康で文化的な最低限度の生活」さえ奪われた今、すべての人々がそれを奪った者への怒りを込めて、彼らの責任を追及し、その罪を認めさせなければなりません。そのために、最も深刻な被害を受けている福島でまず私たちが立ち上がり、行動しなければなりません。告訴団を結成した理由もここにあります。

私たちは、彼らに対する告訴を福島地検で行うことを決めました。自分たちも放射能汚染の中で被曝を強要されながら存在しなければならない矛盾、逃れられない厳しい現実を背負う福島の検察官こそ、被害者のひとりとして、子どもを持つ親として、この事故に真摯に向き合うべきだと考えるからです。

私たちは、自分たちのためだけにこの闘いに踏み出すのではありません。日本政府は、あらゆる戦争、あらゆる公害、あらゆる事故や企業犯罪で、ことごとく加害者・企業の側に立ち、最も苦しめられている被害者を切り捨てるための役割を果たしてきました。私たちの目標は、政府が弱者を守らず切り捨てていくあり方そのものを根源から問うこと、住民を守らない政府や自治体は高い代償を支払わなければならないという前例を作り出すことにあります。そのために私たちは、政府や企業の犯罪に苦しんでいるすべての人たちと連帯し、ともに闘っていきたいと思います。

この国に生きるひとりひとりが尊重され、大切にされる新しい価値観を若い人々や子どもたちに残せるように、手を取り合い、立ち向かっていきましょう。

2012.3.16
福島原発告訴団結成集会参加者一同