守田です。(20140719 06:00)

イスラエルの地上侵攻で多くの人が胸を痛めています。僕自身、今日は午後7時から、亡くなった方の追悼とイスラエルへの抗議の意志を表すために京都・三条大橋でピーススタンディングビジルに参加します。
しかしそうこうしているうちにも原発問題でも大変なことが次々に起こっています。とくに川内原発の再稼働に向けた動きが重要ですが、数日前に、昨年、福島原発から大量の放射能が空中に飛散していたというとんでもない情報が流れました。
そのことに関する記事を書きかけたまま、パレスチナの事態に対応していたのですが、このことも極めて重要なので、再度、リライトして出すことにしました。

この問題をスクープしているのは朝日新聞です。青木美希さんという記者さんが、頑張って連投してくれています。
それによるとなんと昨年8月、福島第一原発で行った「がれき撤去」作業時に膨大な放射性粉じんが発生し、避難区域を越えて、50キロ付近にまで拡散していた可能性が高いというのです。大変なことです。新たな放射能被曝事故の発生と捉えるべきです。
朝日新聞は16日付けの紙面で一面トップで扱いましたが、確かにこれは責任者が厳しく処罰されるべき大事故です。にもかかわらずこの重大事件が国と東電によって1年近くも隠されていました。多くの人々が被ばくさせられたに違いないのにです。

このことを考えると昨年、安倍首相がブエノスアイレスで行ったオリンピック招致発言の犯罪性がよりクローズアップされてきます。
「原発は完全にコントロールされている」云々というものですが、発言が行われたのは9月7日でした。これに対して問題の放射性物質の大量飛散が行ったのは8月19日。つまりオリンピック候補地が最終決定する直前にこの事故は起こっていたのです。
これほどの大事件を政府が知らなかったはずはありません。しかしオリンピック獲得のために隠された可能性が非常に高いです。そのことで東京電力は再び三度、明確な傷害行為を免罪され、政府にかばわれてしまったのです。

深刻なのは事故が隠蔽されたために、ただちに被曝対策や調査がなされなかったことです。毎日新聞の7月14日の報道によれば、東電の発表でも最大で4兆ベクレルの放射能が飛散したと伝えられており、住民の緊急被曝対策が絶対に必要でした。
妊婦さんや子どもたちを避難させる必要があったし、外出を控えること、雨に当たらないこと、うがい、手洗いを徹底化するなどなど、少しでも大量飛散した放射能を避ける必要があったのです。
さらにどれだけの被害が出たのかの調査もする必要がありました。ホールボディカウンターでの調査、尿検査など、この時期に集中して行えば、被曝実態の一端が明らかになったはずです。

もちろんそれを行えば、東京オリンピックは絶対に獲得できなかったでしょう。つまりオリンピック=開発利権のため、またも福島の人々、放射能の流れた地域の人々が犠牲にされたのです。人権侵害そのものです。傷害行為そのものです。
この重大事故の一年にわたる隠蔽は、安倍政権が福島の人々の安全や幸せなど一顧だにしていないことを再び明白にするものです。これほどひどい放射能漏れが起こっていながら、この方はどうしてあれほどの嘘をつけるのでしょうか。嘘をつくことへの倫理的歯止めがまったくないのでしょう。
私たちは再び三度、こんな大嘘つきな首相と、それをかついでいる自民公明政権が存在していることそのものが、私たちの明白な危機であることを自覚する必要があります。膨大な放射能が漏れようともこの政権は住民に伝えようとはしないのです。こんな政権を少しでも信用していたらもっととんでもない目にあいます。

もう少し詳しく見ていきます。放射能漏れの隠蔽を最初に気が付いたのは農水省穀物課でした。原発から20キロ圏外の福島県南相馬市の14か所の水田で作られ、昨秋に収穫されたコメから、政府の基準、1キログラムあたり100ベクレルを越えるセシウムの汚染が発見されました。
農水省は保管していた稲穂を調べ、汚染が均一ではなく、8月中旬から出始めた穂に集中していることに着目。この時期に放射性物質の飛来があったと判断して1月に原子力規制庁に相談。3月に気象庁気象研究所に問い合わせて「20キロ程度は飛散し得る」との回答を得ていたといいます。
では何があったのかというと、8月19日に福島原発3号機の大型がれきをクレーン車で撤去する際、その下敷きになっていた大量の放射性物質を含む粉じんが舞い上がってしまったのだそうです。それだけで4兆ベクレルもの放射性物質が飛散してしまったのでした。

農水省は今年3月に東電に再発防止を要請したものの、情報を明らかにせず、被曝の隠蔽に手を貸してしまったのですが、大変、恐ろしいのはこうして飛散した放射性物質が、福島3号機の直近にあったものだということです。
端的に言ってセシウムだけでなく、プルトニウムをはじめとしたさまざまな危険な核種、しかもきわめて測定のしにくい核種が大量に舞った可能性が高いです。
しかも京大による調査によって、このとき飛散した放射性粉じんが、50キロ付近にまで飛んでいた可能性が高いことも明らかになりました。原発から北西48キロの相馬市で集めた大気中の粉じんからもそれを示す値が検出されたのです。

さらに重要なこととしてあるのは、この事態を東電がまたしても居直っていること、政府がかばって隠蔽しているため、何の反省もしておらず、そのため今後同じこと、いやそれ以上の粉じんの飛散を繰り返す可能性が高いことです。
具体的には、放射性粉じんの飛散を抑えるために福島原発一号機を覆っていたカバーを、作業の進捗にあわせて、近いうちにはずすことが計画されているのです。もともと粉じんを抑えるために設置したカバーですから、その中にある放射性物質が飛び出してきてしまうことは確実です。
しかし住民を手酷く被曝させたことが一度も咎められず、しかもどう考えても飛散させたことが分かっていたことは確実ながらそれを黙っていたことも咎められないこの会社が、丁寧な飛散対策をするはずがありません。事実、昨年8月の飛散の調査も反省もされままカバー外しが行われようとしているのです。

このことが意味するのは原発から少なくとも50キロ圏内に住まう方々に、非常に大きな危険が迫ってきているということです。可能な方は避難することを強くお勧めしますが、それができない方がたくさんおられるのも現実です。
ではどうしたら良いのか。あらゆる市民的検査機器をフル稼働して飛散に備え、放射線値の急な上昇があったときは、いつもにもまして徹底的な被曝防護を行うことです。それだけで大丈夫とはまったく言えないのですが、せめてもそれを行って欲しいです。
同時にやはりその周りにいる私たちが、この問題で東電と政府を批判し、責任者を処罰させ、福島原発収束作業の過程での放射能漏れ対策をもっと手厚くさせることを求めることが重要です。

朝日新聞のスクープは少しでも歯止めになるのではないかと思われ、感謝したいですが、さらに民衆的な行動が必要です。
しかしこう書きながら、正直、ため息が出る思いもあります。私たちの住まう世界で、今、イスラエル軍が地上作戦を展開し、子どもたちを含むパレスチナの人々が酷く殺されてしまっている。何としても助けなくてはいけない。
一方で政府は集団的自衛権の行使に走っており、同時にこれと連動しながら秘密保護法の強行にも向かっています。それらとも対決しなくてはならない。原発再稼働も許してはならないし、原発輸出も止めなくてはいけない。やらねばならないことが目白押しです。

パレスチナでの人権蹂躙、命の簒奪はあまりにひどいですが、しかし私たちの国の中でも、繰り返し人権蹂躙の放射能被曝の強制が起こっており、福島の人々がさんざんに痛めつけられているのです。構造的虐待です。なんとしても止めたい。
しかしやるべきことは本当に多く、幾つ身体があっても足りない。・・・でも僕は思うのです。だからこそよりたくさんの人が覚醒するべきときが来たのだと。圧倒的に手が足りないからこそ、多くの人々が立ち上がるべき日々が今なのだと。
そのためにはため息を飲み込み、各地の頑張りを互いにのぞいて、励ましあい、何度も心を温めあって歩むことが必要なのだと思います。世界中の人々とそういうエールを交換しあいたいです。

共に、支えあって、前に進みましょう!
以下、非常に重要なので、朝日新聞の一連の記事と、毎日新聞の記事を貼り付けておきます。記録としても残しておくためです。長くなりますがご容赦下さい。
(メルマガ配信の方には通信を短くするために以下は割愛します。ブログに掲載しますのでぜひそちらでご覧下さい)

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原発がれき撤去、50キロ先の住宅地にも粉じん セシウム6倍 昨夏、京大調査
朝日新聞 2014年7月16日05時00分
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11245423.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11245423

東京電力が昨年8月に福島第一原発で実施したがれき撤去作業で放射性の粉じんが20キロ以上離れた避難区域外の水田に飛散した可能性が指摘されている問題で、この時の放射性の粉じんがさらに50キロ付近まで飛んでいた可能性が高いことが京大研究グループの調査で分かった。
今後も実施していく撤去作業による汚染が広範囲に及ぶ恐れを示すものだ。

調査したのは、京大大学院医学研究科の小泉昭夫教授(環境衛生)ら5人。住民の被曝(ひばく)量を予測するために2012年9月以降、福島県内の住宅地の3地点に空気捕集装置を置いて大気中の粉じんを集め、1週間ごとに放射性セシウム濃度を測定してきた。
このうち原発から北西48キロの相馬市で集めた昨年8月15~22日分から、他の時期の6倍を超す1立方メートルあたり1・28ミリベクレルの放射能を検出。北北西27キロの南相馬市では20~30倍だった。西南西22キロの川内村では変化がほぼなかった。
小泉教授らは(1)原発の北西や北北西で放射能濃度が上がり、西南西で変化がほぼないことは当時の風速や風向きによる放射性物質の拡散予測に一致する
(2)大気中から集めた粉じんの粒子は比較的大きく、第一原発のような放射性物質が密集する所に長くあるうちに大きくなったと推測される――などから第一原発でこの時期に行ったがれき撤去で飛散してきたとみている。

さらに南相馬市の地点では昨年5、6月にも1度ずつ粉じんのセシウム濃度が急上昇した期間があり、この間にも撤去作業で飛んだ可能性があると分析。小泉教授らは今年3月、「第一原発のがれきが汚染源とも考えられる」とする報告書を環境省に提出していた。
東電は昨年8月19日に第一原発3号機で大規模ながれき撤去を実施。20キロ以上離れた南相馬市の水田で収穫されたコメから基準超のセシウムが検出され、農林水産省から飛散防止を要請されていたことが14日の朝日新聞報道で発覚した。
東電は記者会見で撤去作業との関係は不明としつつ、「ご迷惑をかけた」と謝罪。当時の放出量はふだんの1万倍以上にのぼり、4時間で最大4兆ベクレル(試算)だったと発表した。
東電は今月下旬に1号機を覆うカバーを解体し、大規模ながれき撤去に入る方針だ。飛散防止剤を多くまくとしているが効果は不透明で、詳細な作業日程や放射線量の公表を求める声が出ている。(青木美希)

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がれき撤去で20キロ飛散の恐れ、説明せず 国や東電
朝日新聞 2014年7月14日09時30分
http://digital.asahi.com/articles/ASG7F51M7G7FUUPI009.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG7F51M7G7FUUPI009

福島第一原発事故から2年以上たった昨年8月のがれき撤去作業で、住民が暮らす20キロ以上離れた地域まで放射性物質が飛散した可能性を知りながら、国や東京電力は公表してこなかった。
今後も新たに飛散する恐れがあるのに、東電は詳細な作業日程の公開など十分な対策をとらないまま作業を進める構えだ。

福島県南相馬市で昨秋に収穫されたコメから基準超のセシウムが検出されたことを受け、農林水産省は今年2月、地元の農業関係者の会合で「現時点で原因は不明」と説明していた。
3月に東電に対してがれき撤去で飛散した可能性を指摘し、防止策を要請した後も地元には説明していない。

農水省穀物課は当初からがれき撤去で飛散した可能性があるとみて、1月に原子力規制庁に相談。3月に気象庁気象研究所に問い合わせ、「20キロ程度は飛散し得る」と回答を得ていた。
がれき撤去による飛散の可能性を地元に説明していない理由について、同省の担当者は「原因がはっきりした後で説明するつもりだった」と取材に語った。

国は南相馬市の作付け制限を今春に緩めてほぼ全域でできるようにしたが、地元には「基準超のセシウムが検出された原因が不明のままなのに時期尚早」との疑問もあり、作付け農家は昨年の約160戸から半減。
ある農家は「自分で原因を調べてきたが分からなかった。3年前の事故ではなく、がれきの撤去で新たに飛んできた可能性があるとは信じがたい。情報がほしい」と取材に語った。
市農政課は「農水省ががれき処理が原因とみて東電に要請したこと自体、知らなかった」としている。

■東電、抜本対策なく再開方針

東電は抜本対策をとらないまま撤去を再開する方針だ。近く予定するのが1号機建屋カバーの解体。1号機は放射性物質の飛散を抑えるため2011年10月にカバーで覆った。
がれきを撤去するにはカバーの解体が必要で、その際、3号機よりも多くの放射性物質が飛散する恐れがある。
東電は昨年8月19日の3号機のがれき撤去で放射性物質が飛散したことを受け、より危険性の高い1号機での作業を半年以上凍結して飛散防止策を練ってきた。
カバーごとコンテナで覆って撤去作業をする抜本対策も検討したが、見送った。工期の遅れやコスト増を避けたとみられる。飛散防止剤をより多くまくなど応急対策をまとめたが、効果は不透明だ。

国は今年4月に田村市で20キロ圏内の避難区域を解除し、次に川内村で解除を目指す。今年から帰還困難区域以外での作付けを認めたため、避難区域内の水田に通い始めた農家もある。
第一原発で働く40代作業員は「避難区域解除で住民が戻り始めたので、東電は飛散問題を起こさないようにピリピリしている」と明かす。
さらに「作業日程や線量の変化を細かく公表すべきだ。コンテナを設置してカバーごと覆えば安全だが、数百億円かかる。国が費用を出し、第三者が安全対策を管理することも必要だ」と指摘する。(青木美希)

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がれき撤去で飛散、コメ汚染 福島第一の20キロ先
朝日新聞 2014年7月14日07時22分
http://www.asahi.com/articles/ASG7F4JF9G7FUUPI005.html?ref=reca

東京電力福島第一原発で昨夏に実施した大規模ながれき撤去作業で放射性物質が飛散して、20キロ以上離れた福島県南相馬市の水田を汚染した可能性を農林水産省が指摘し、東電に防止策を要請していたことが分かった。
福島県は「他の要因は考えられず、がれき撤去の可能性が限りなく高い」としている。東電は要請を受けて撤去作業を凍結してきたが、広範囲に飛散した可能性を公表しないまま近く再開しようとしている。

原発から20キロ以上離れた南相馬市の避難区域外の水田14カ所と、20キロ圏の避難区域内の5カ所で昨秋に収穫されたコメから基準値(1キロあたり100ベクレル)超のセシウムが検出された。
農水省が調べたところ、放射性物質は8月中旬に出始めた穂などに局所的に付着。事故当時に飛散した放射性物質を土壌から吸い上げたのなら均一的に検出されるため、穂が収穫された9月末までの間に新たに飛んできたものと分析した。
この間の8月19日、東電が第一原発3号機の大型がれきをクレーン車で撤去する際、がれきの下敷きになっていた放射性の粉じんが飛散し、別の場所にいた作業員2人が被曝(ひばく)して頭部から最大1平方センチあたり13ベクレルが検出された。
この時、風下の北北西方面の5カ所の測定点(原発から2・8~8・3キロ)でも空間線量が上昇し、福島県はがれき撤去による飛散が原因と推定していた。

農水省は①コメからセシウムが検出された南相馬市はさらに風下にあたり、8月19日のSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の計算では3時間で達する②基準超が複数検出されたのは同市だけ
③前年度は同地域のコメから基準超は検出されていない――などの理由から、8月19日のがれき撤去で飛散した可能性があると判断。
今年3月に東電に再発防止を要請した。東電は「どこまで飛散したか把握していないが、防止対策に取り組みながら近く作業を再開する」としている。
東電は3号機のがれき撤去を終えたが、高線量のがれきが残る1号機は手つかずで、建屋を覆ったカバーを近く解体する方針だ。
「最も早く作業が進む方法だが、放出量は増える」とし、飛散防止剤の散布を増やして対応するという。それでも天候や風向き次第でどこまで飛散するかは不透明だ。
村山武彦東工大教授(リスク管理論)は「飛散の可能性を情報提供するのが大前提だ」と指摘する。(青木美希)

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福島第1:放出量は最大4兆ベクレル がれき撤去で東電
毎日新聞 2014年07月14日 22時38分(最終更新 07月14日 23時51分)
http://mainichi.jp/select/news/20140715k0000m040129000c.html

東京電力福島第1原発で昨年8月のがれき撤去時に放射性物質が飛散し、20キロ以上離れた福島県南相馬市の水田を汚染した可能性がある問題で、東電は14日、同原発からの放射性セシウムの総放出量を最大4兆ベクレルと試算していたことを明らかにした。しかし「かなり大づかみな計算」として公表せず、市にも伝えていなかった。
東電によると、敷地内や同県双葉、浪江町のモニタリングポストで実測した空間放射線量の上昇度合い、気象データを基に放出量を試算。がれき撤去で放出されたのは1時間当たり1000億?1兆ベクレルで、放出時間は計4時間と推定した。4兆ベクレルは、事故後の福島第1原発から1日に放出される放射性セシウムの1万倍以上に上る。
南相馬市には、セシウムが最大で1平方センチ当たり0・04ベクレルが沈着したと見積もった。東電は「極めて微量な放射性物質が南相馬まで到達した可能性は否定できない」と説明しつつも、同市のコメから基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えるセシウムが検出されたこととの因果関係については「事故直後の放射性物質によるものかもしれず、断定できない」としている。
東電は農水省の要請で、この試算を実施。4月に農水省に結果を伝え、6月には県にも情報提供したという。【岡田英】