守田です。(20110411 17:30)

事故評価の「レベル7」への引き上げに関する続報です。
今日の午前中に保安院などによる記者会見が行われ、レベル7への
引き上げについての説明が行われました。

朝日新聞と読売新聞の報道記事を貼り付けておきますが、これによると、
3月11日から4月12日までの間に、保安院の推計で37万テラベクレル、
内閣府・原子力安全委員会の推計で63万テラベクレルの放射能が
放出されたとされています。チェルノブイリで放出された放射能は580万
テラベクレルとされており、その1割近くがフクシマから放出されたと言う
発表です。

まずここで指摘しておきたいのは、このような推計は、事故当初から、
多くの国際機関が行っていたことであり、けして真新しい報告ではないと
いうことです。むしろ世界で報道されたことを1カ月近くも経って、日本の
側で承認したに過ぎず、大変、不誠実な態度だと思います。

しかも保安院の発表は、原子力安全委員会の見積もりの半分近くと
なっています。ここでもまた事故を小さく見せようと言う動機が働いている
のではないかと思えます。これまでそのようなことを繰り返して
きたからです。これは原子力安全委員会についても言えることです。
両者ともに一月も沈黙していたからであり、この期に及んで、
放射能汚染は「チェルノブイリより少ない」と、少ないことばかりを
強調しています。

しかしこの発表には非常に重大な内容が欠けています。放出された
放射能(推定)の内訳が明らかにされていないことです。
国際社会を含めて、誰もが知りたいこと、知る必要性があることは、
一体、どれだけの量が、海洋を汚染したのか、また日本の大地を
汚染したのか、また風のって、はるかかなたへと「拡散」したのか
ではないでしょうか。

また放出が事故当初に集中したとされていることから、放出の中に、
今、タービン建屋からタンクに移されようとしている超「高濃度」汚染水が
含まれていいないのではないかということも疑われます。
この水は、海に流れ込みはしてないものの、原子炉格納容器の外に
こぼれて、すでに環境中に出てしまっているものです。これはきちんと
計上されているのでしょうか。

9日の朝日新聞では、海に流れ込んだ汚染水を4万テラベクレルと
推計していましたが、これらの把握は、今後の海の状態をウォッチしていく
上で、極めて重要な情報です。またこれを把握しないままに、海産物の安全を
宣言することのは、あまりに非科学的で、不誠実な態度です。

これらを含めて、放出された放射性物質が、一体どのような汚染を
もたらしているのか、その概算が明らかにされていないことに、この発表の
重大な問題があります。とても誠実な報告とは言えず、ただ、各国の
研究機関の発表の一部を追認しただけにすぎません。

さらに重要なことは、朝日新聞の記事の中に次のような記述があることです。
「東京電力原子力・立地本部の松本純一本部長代理は会見で「放出は
現在も完全に止まっておらず、放出量がチェルノブイリに迫ったり超えたりする
懸念もあると考えている」と話した。

数十万ベクレルの放射能をまき散らしておきながら、チェルノブイリより少ない
ことを強調する保安院と原子力安全委員会に対して、東電の松本氏は、
おそらく茫然とした思いの中ででしょうが、「放出量がチェルノブイリに迫ったり
超えたりする懸念がある」と、ある意味で、率直に語っています。

これは重大な内容で、もっと話を聞き出さなければいけないポイントです。
追求と言うより、話を丁寧に聞いて、なぜ、どのようにそう思うのかを
聞き取ってあげないといけない。

保安院等の数値が事実をかなり下回っているであろうことを考えても、
現段階では、まだチェルノブイリに達してないのかもしれない。だとしたら
なぜ「迫ったり、超えたりする懸念」を感じるのか。迫りくる危機をいかに
認識しているのか、そこにこそ、私たちにとって、今、最も重要な情報が
あるからです。

これに対して、記事は
「4月10日に非公開で開かれた安全委の臨時会で保安院の黒木慎一
審議官は「最悪の事態は今は脱した」と報告している」
とも紹介しています。

この記事の中には、東電と保安院の現状認識の大きな違いが表れている。
いったい、どちらが正しいのか。いや、多くの事実が分からない状態の中に
あることを考えるならば、それぞれがなぜそのように考えいるのかこそが
聞き出されなければならない。しかしこの重大な点がまたしても取材されて
いません。

東電と保安院と、原子力安全委員会の、それぞれに矛盾し、合い違った
データの発表を、そのまま広報しているのが、朝日新聞・読売新聞の
現状です。残念なことです。ここにも私たちの社会の危機の一端があります。

まとめます。
今回のレベル7への格上げ発表には、何ら新しい内容が含まれていません。
むしろこうした最も重要な事実を1か月も経ち、内容分析すら施さずに
発表しているのが、この国の原子力行政当局の姿勢であることが
分かります。

一方で、東電からは、「放出は現在も完全に止まっておらず、放出量が
チェルノブイリに迫ったり超えたりする懸念もあると考えている」という
非常に率直な見解も出されてきています。

ここから今、必要なのは、レベル論議よりも、迫りくる新たな放射能放出に
身構えることであることが分かります。もちろん、外に出されてしまった
数十万テラベクトルの放射能に身構えることも必要です。

僕は3月24日に、各国の研究所が、フクシマからすでにチェルノブイリの
数割に匹敵する放射能が漏れているという指摘をしていることを受けて、今の
私たちの現状を「ゆっくりとしたチェルノブイリの中を生きる」と表現しました。
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/d022696453752f699c0c2a544cab95c6
しかしもはや事態はそれとは全く違う様相の中に入りつつあります。
何より、非常に危険性の高い放射能漏れが断続的に続いている。しかも
依然、炉心の爆発などの破局的危機の可能性も続いている。さらに
人類初の大規模な海洋の放射能汚染も続いています。

私たちは今、「フクシマ・・・ゆっくりと、長く、大量に続く、放射能漏れ事故」の
中を生きています。
この中で、私たちには、能動的な生のいかなる可能性が残されているのか。
いかにすれば、私たちは、幸せを目指した生産的な歩みを進められるのか。
・・・情報とともに、そのことの考察を、僕は繰り返し発信していきたいと思います。
みなさまもどうか意見をお寄せ下さい。

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福島原発事故、最悪「レベル7」 チェルノブイリ級に
2011年4月12日12時39分 朝日新聞
 福島第一原発の事故について、経済産業省原子力安全・保安院と原子力
安全委員会は、これまでに放出された放射性物質が大量かつ広範にわたる
として、国際的な事故評価尺度(INES)で「深刻な事故」とされるレベル7に
引き上げた。原子力史上最悪の1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故に
匹敵する。放射性物質の外部への放出量は1けた小さいという。12日午前に
発表した。

 保安院は3月11日の事故直後、暫定評価でレベル4としていた。放射性
物質が原子力施設外に放出されるような事故はレベル4になり、それ以上は、
外部に放出された放射性物質の量でレベルが決まってくる。

 18日に79年の米スリーマイル島原発事故に匹敵するレベル5に引き上げた。
レベル5は放射性ヨウ素に換算して数百~数千テラベクレル(テラは1兆倍)の
放出が基準だ。その後、放出された放射性物質の総量を推定したところ、
放射性ヨウ素換算で37万~63万テラベクレルになった。INESの評価の
レベル7にあたる数万テラベクレル以上に相当した。福島第一原発では今でも
外部への放出は続いている。

 チェルノブイリ事故では爆発と火災が長引き、放射性物質が広範囲に広がり
世界的な汚染につながった。実際の放出量は520万テラベクレルとされている。
福島第一原発の事故での放出量はその1割程度だが重大な外部放出と
評価した。評価結果は国際原子力機関(IAEA)に報告した。

 福島第一原発では、原子炉格納容器の圧力を逃がすため放射性物質を含む
水蒸気を大気中に放出した。さらに地震後に冷却水が失われ核燃料が露出して
生じたとみられる水素によって、1、3号機では原子炉建屋が爆発して壊れた。

 2号機の格納容器につながる圧力抑制室付近でも爆発が起こったほか、
4号機の使用済み燃料貯蔵プールでの火災などが原因で放射性物質が大量に
放出されたと見られている。内閣府の広瀬研吉参与(原子力安全委担当)は
「3月15~16日に2号機の爆発で相当量の放出があった。現段階は少なく
なっていると思う」と話した。

 東京電力原子力・立地本部の松本純一本部長代理は会見で「放出は現在も
完全に止まっておらず、放出量がチェルノブイリに迫ったり超えたりする懸念も
あると考えている」と話した。

 ただ、原発周辺や敷地の放射線量の測定結果は3月15~21日に非常に
高い値を示していたものの、その後低下している。4月10日に非公開で
開かれた安全委の臨時会で保安院の黒木慎一審議官は「最悪の事態は
今は脱した」と報告している。(香取啓介、竹石涼子、小堀龍之)
http://www.asahi.com/national/update/0412/TKY201104120085.html
福島原発事故、最悪の「レベル7」に引き上げ
 経済産業省原子力安全・保安院は12日、東京電力福島第一原子力発電所
の事故について、原発事故の深刻度を示す「国際原子力事象評価尺度
(INES)」の暫定評価を、「レベル5」から最悪の「7」に引き上げると発表した。

 これまでに放出された放射性物質の量を、推定される原子炉の状態から
計算した結果、「7」の基準である「数万テラ・ベクレル以上(テラは1兆倍)」
に達した。「7」は0~7の8段階で上限の「深刻な事故」で、過去では
1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故が唯一の例だ。

 保安院の発表によると、3月11日から4月12日午前11時までに大気中に
放出された放射性のヨウ素131とセシウム137の総量を、原子炉の状態から
推計したところ、ヨウ素の量に換算して37万テラ・ベクレルに達した。
内閣府原子力安全委員会も12日、周辺で測定された放射線量をもとに
推計したヨウ素とセシウムの大気への放出総量は、3月11日から4月5日まで
で63万テラ・ベクレル(ヨウ素換算)になると発表した。

 保安院の西山英彦審議官は「現時点までの放射性物質の放出量は、
チェルノブイリ事故に比べて
1割前後で、(被ばく量も少ない」と違いを強調した。安全委員会によると、
現在の放出量は、ピーク時の約1万分の1に落ちている。
(2011年4月12日12時20分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110412-OYT1T00367.htm