守田です(20240826 21:30)
尊敬する元福井地裁裁判長の映画上映と講演会があります。ぜひ近くの方にご参加頂きたいので紹介します。
● 岡山県赤磐市中央図書館ホールにて開催
まずこの企画のチラシをご紹介します。
https://toshikyoto.com/?p=9014&preview=true
映画の公式ホームページも示しておきます。
https://saibancho-movie.com/
サイトにはこのよう説明されています。
「2014年。関西電力大飯原発の運転停止命令を下した樋口英明・福井地裁元裁判長は、日本の全原発に共通する危険性を社会に広める活動をはじめた。原発が頻発する地震に耐えられないことを指摘する“樋口理論”の啓発である。
一方、福島では放射能汚染によって廃業した農業者・近藤恵が農地上で太陽光発電をするソーラーシェアリングに復活の道を見出す。・・・原発をとめるために!」
● 樋口理論が見事に描かれている
僕がこの企画をお勧めするのは、映画で「樋口理論」が分かりやすく描かれており、なおかつその後にご本人の講演も聴くことができるからです。贅沢です(笑)
映画のパンフレットから樋口さんの言葉を引用します。
「『原発事故は被害が大きいので原発は強い地震に備えているはずだ』『原発訴訟は専門的で難しいに違いない』とほとんどの人が思い込んでいます。これらの思い込みを解くために講演活動を始めました。」
ここに樋口さんが展開する原発批判の大きな要点があります。一つに原発が事故を起こしたら被害が大きいのは常識。だから原発の耐震性は強くされているだろうと思いがちですが、実はそうではない。原発はハウスメーカーが作る家よりもはるかに地震に弱いのです。
二つ目に原発裁判には難しい技術論争は必要ないということ。実は裁判で、原発が強い地震に耐えられるか否かを電力会社は争点にしてないのです。理由は耐震性が弱いので「壊れない」と言えないから。それで「この敷地に限ってそういう地震が来ない」と言ってるだけ。
この点をシンプルに批判れば良い。樋口さんはこのことを分かりやすく説いて下さっていて、映画でもそれが見事に表されています。
● 樋口講演をぜひ直にご視聴下さい
続いて樋口さんの講演を直接お聞きすることを強くお勧めします!
ちなみに樋口さんは、今春行われた京都市長選にも駆けつけてきて下さり、候補だった福山和人弁護士との講演・対談に応じて下さいました。僕もコーディネータを担いました。
この時の動画を紹介します。以下のバナーをクリックすると飛べますのでご覧下さい。
樋口理論そのものは、この京都市での講演でも存分にお話して下さっています。赤磐まで行けない方はぜひこの動画を御覧になって欲しいですが、行ける方はぜひ直に樋口さんとの場を共有して、その人となりも触れて頂きたいのです。
樋口さんは、お話の中で私たちが陥っている常識を見事にひっくり返して下さるのですが、その話口が軽快で見事。目の前で聴いていると愉快にすらなります。「これを伝えれば原発は止められる!」という明るい確信も得られます。だから聴きに行って欲しい。
実はこの認識は樋口さん自身が経てきたこと。かつてこうおっしゃいました。「私は色々と技術的な裁判にも関わって来たんですが、日本の技術はなかなか優秀なんですよ。それでその優秀な技術が、当然、原発にも適用されていると思っていたのです、ところが裁判をはじめてみたらそうではなかった。びっくりした。原発だけ別だったんです。それで私は恐くなって原発を止めさせる判決を書いたのです」「それを勇気ある判決と言われるんですが違います。私にはあんな危険なものを動かし続ける蛮勇など無かったのです」。
樋口さんはこれらをひょうひょうと語られます。ぜひ現場に行って、樋口節をご堪能下さい。
● 被曝地での営農はやはり危険
ただ一方でこの映画の「そして原発をとめる農家たち」の部分には、複雑な感想を持ちました。福島県二本松市での営農の様子が描かれているからです。現場で奮闘している方には申し訳ないですが、僕はここでの営農は、今なおとても危険だと思います。
映画では、「作物によっては土から放射能をそれほど吸い上げないものもあり、安全な生産が可能」ということも示唆されていましたが、それはその分、土に放射能がたくさん残存していることを示してもいます。だからとくに営農者にとって危険です。
そもそも広島・長崎での原爆による大虐殺以降、放射能の危険性は極端に小さく扱われ、新たな被曝が繰り返し強制されてきました。福島原発事故の後でもそうだし、むしろその傾向が強まっています。だから僕は、この点への警戒を心から訴えたいです。
さらに映画に登場する二本松営農ソーラー代表の近藤恵さんは、岩手県の基督教独立学園高校の出身者であり、二本松市で笹屋営農型発電農場の農場長となっている塚田晴さんは、三重県の愛農高校の出身者です。
これらの学校はキリスト教(愛)精神に基づいたユニークな教育を行っていて、実は僕もここに縁のある方たちをたくさん知っています。この方たちは原発や環境破壊と真剣に向き合う実践をさまざまに重ねておられ、尊敬する気持ちが強いです。
なおかつお二人は原発被災者でもあり、苦難を越えて二本松での営農に着手されていて、その点でもとても心が揺さぶられました。しかしそれでもなお、いやむしろだからこそ、僕は二本松での、とくにあの場での営農の危険性を指摘したいのです。
実際に映画の中でも、畑の周りの藪の中を測ってみたら、放射線値がかなり高いことも示されていました。その放射能は風が吹けば飛んできます。作物への移行が少なくても、人体は確実に被曝します。
さらに農の営みは土いじりが軸ですからなおさらなのです。書いていて悲しいですが、さまざまに内部被曝が発生してしまうので、働く人の身体が危ない。だから僕はそこでの営農をやめられ、他の地で試みられることを心から進言します。原発被災者だからこそ、これ以上、東電と国に害されないで頂きたいです。
● ソーラーシェアリングにはデメリットも指摘されている
またもう一つ、映画では太陽光パネルの欠点を克服した、ソーラーシェアリングというシステムを使った営農の様子が描かれています。それが「原発をとめる農民たち」というタイトルの由縁になっています。
太陽光パネルは土地の上に設置すると影になる部分の土地をダメにしてしまう欠点があるのですが、それを農地の上に櫛状にパネルを配置することで克服しようとの、なかなかのアイデアに基づいたものです。
でもある農の営みをしている親しい友人から「問題点も多いんですよ」とも指摘されました。それで調べてみて確かにソーラーシェアリングについて、メリットともに多数のデメリットも論じられていることが分かりました。そのサイトの一つをご紹介します。
太陽光発電 ソーラーシェアリングとは|業者が言わない11の問題点と成功の秘訣
https://sorasapo.com/solar-sharing-is-not-so-easy
ざっくりこれらを見て、農家さんの多くが高齢化している中で、その農家さんが行うにはこのシステムはあまりに煩雑なのではとはないかと思いました。資金援助を引き出すのも難しいと指摘されています。
また20年継続が必須とされていたり、相続も難しいなど、他にも数々の難点が上げられています。でもそんな中で政府が補助金を出しているので、営利目的の業者が「困難を引き受けます」と仲介に入り込みやすいのではないか。そこで問題が生じないかという点でも懸念が生じました。
ただしこれらをきちんと読み解くには、営農上の知恵と経験が必要で、正直なところ、僕には、よく分からないことが多いです。
だから少なくともこの映画を観た方に、これだけでソーラーシェアリングを礼賛してしまうのではなく、数々のデメリットがあることも知って頂いた方が良いだろうと思い、これらについて論じている情報を提供しました。
● あかいわエコメッセにお越しを
最後に主催者のあかいわエコメッセについて一言。これまで何度も呼んで下さっている場です。
中心になっているのは赤磐市会議員の原田そよさん。赤磐だけでなく岡山市でも講演会を主催して頂くなどして、その度に心を通わせてきました。
ぜひこの場にいって、あかいわエコメッセの方たちとも結びついて頂きたいです。
また映画について、僕は「原発をとめる農民たち」の部分には、映画の主張と違った意見を持ちましたが、それに対する判断自身も、ご自分でご覧になってして頂きたいなと思います。
一部とは言え、僕の批判的な意見を読んで、「じゃあ観るのはやめておこうかな」とは思わずに、むしろこの問題をみんなで前向きに検討していくためにも、観て頂けたら嬉しいです。
僕自身は残念ながらこの日、他の企画に参加するのでうかがえませんが、どうか可能な方は9月1日に赤磐市にお越し下さい。
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