守田です(20200920 17:30)

玄海原発・・・のみならず加圧水型原子炉をもつ原発の危険性についての続報です。


2017年12月にコープ自然派脱原発ネットワークの皆さんと伊方原発を取材。現地で定期的な座り込み活動を続けているみなさんと合流しました。背景に伊方原発が見えています。 守田撮影ほか

● 伊方原発3号機も再稼働直前でトラブル

この間、玄海原発の危険性を解き明かすなかで、加圧水型原子炉を使っている原発の危険性について論じてきましたが、同じ炉を使っている伊方原発3号機でも構造化されたトラブルが起きました。
同原発は2016年7月26日に再稼働しようとしていましたが、直前の17日に一次冷却水の循環ポンプから水漏れを起こし、再稼働スケジュールが延期されました。(8月12日に再稼働) この点に関する説明図を示します。


一次冷却水ポンプの図示 共同通信の報道より 


再稼働を前にした故障事故を報じるFNN

問題のポンプは一次冷却水の流れを強めるためのもので、図の中では蒸気発生器の下部あたりに書かれています。
ここから水漏れが起きたのですが、原因はこのポンプを稼働させているモーターの軸の、シール部分の不具合とされました。モーターの軸は冷却水の流れに垂直に差し込まれています。その先にプロペラがあってまわされて、流れを強めているのです。
しかし流れている冷却水は150気圧もあるので、軸受け部分の隙間から冷却水の一部が上がってきてしまいます。しかし隙間がないと回転できないので、3重のシールドをほどこし、純水をいれて封印しているのですが、それが漏れてしまったのです。

ただしこの故障事故が起こった時、四国電力の説明を何度、読んでもなぜここが壊れたのか、合理的に理解できませんでした。そもそも再稼働を前に、この部品は新品と変えられており、経年劣化などもありえないはずでした。
それで少し角度を変え、「そもそも構造的欠陥があるのでは?」と考えました。僕が理解できないのではなく、そもそも書いている側が理解してないのではないか?分かっているふりをしているのではないかと思えたのです。
それで、他の原発で同様の故障事故が起きてないかどうかを調べてみたら、たくさん出てきました。

● 一次冷却水ポンプは構造的な欠陥を有している

まず見つけたのは2005年に美浜原発1号機で、この一次冷却水ポンプの同じ個所から水漏れが起こり、原子炉が手動停止されたことでした。その際、添付された図も示します。
美浜発電所1号機 A-1次冷却材ポンプシール水漏えいの原因と対策について 2005年10月19日 関西電力
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2005/1019-1j.html
http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2005/__icsFiles/afieldfile/2005/10/19/1019_1j_1.pdf

関西電力による美浜での故障事故の説明図

これはもっとある!と調べると、伊方原発3号機そのものでも、2003年にこのポンプからの水漏れが起こっていたことが分かりました。
水漏れはポンプの中の少し違う場所で起きましたが、これまた150気圧で流れる一次冷却水の中にプロペラを差し込んでいるがゆえに、冷却水が上がってきてしまうことを防ぎきれずに起こったものでした。
伊方発電所3号機一次冷却材ポンプのモータ用冷却水(純水)の漏えいについて 2003年10月31日 四国電力
http://www.yonden.co.jp/press/re0310/j0ypr010.htm

四国電力によるポンプ漏えい箇所の説明 ただし推定箇所となっている

さらに同じ年、2003年に今度は大飯原発1号機でも同じことが起こりました。これまたポンプのモータの軸受け部分に設置された、3重のシールド部分からでした。
大飯発電所1号機の点検結果について(D-1次冷却材ポンプNo.3シールからの漏えいに伴う原子炉手動停止の原因と対策)
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2003/1212-1j.html

関西電力による大飯での故障事故の説明図

2016年の伊方3号機の故障事故のあとにも、玄海原発4号機で2018年5月3日に同様の故障事故が起きました。定期点検中で、このときは3重のシールの2つ目から水漏れしました。
玄海原子力発電所4号機1次冷却材ポンプシール部の流量増加原因と対策についてお知らせします 2018年5月15日
http://www.kyuden.co.jp/press_180515-1.html

九州電力による玄海での故障事故の説明図

2003年伊方3号機、大飯1号機、2005年美浜1号機、2016年伊方3号機、2018年玄海4号機と、何度も同じ部品に故障事故が発生しています。
要するに構造的な欠陥箇所なのです。技術的に克服できていない。シールドに失敗し続けているのです。

伊方3号機はその後、本年1月17日に広島高裁による運転差止を命じる仮処分が出されて、法的に動かさせない状態が続いていますが、他の稼働中の玄海、高浜、大飯も止めなければ。
こんな欠陥炉に合格を与えている新規制基準の見直しも必要です。

なお次回も一次冷却水ポンプの問題を書きます。

#伊方原発 #一次冷却水ポンプ #加圧水型 #故障事故多発

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