守田です(20191119 12:00)

関電原発マネー問題、台風19号被害と大きなことが続いていますが、そんな中で22日に野洲市で「平成30年9月」に文科省が発行した『放射線副読本』の読み解きを行います!
野洲市は議会で全国で唯一『放射線副読本』の配布を止め、回収を決めた自治体でもあります。その野洲市にある近江平安教会で午後2時からお話します。ぜひご参加下さい。

● 『放射線副読本』がめざしていること

「放射線副読本」は小学生向けと中学・高校生向けが作られています。 めざしていることは何なのか。「はじめに」という文章の中に目的が明示されているので引用します。


『放射線副読本』 小学生向け

「放射線は、私たちの身の回りにいつでも存在していて、放射線を受ける量をゼロにすることはできません。空気や食物ものなどにも常に放射線を出だすもの(放射性物質)が存在していますし、病院では放射線が検査や治療に利用されています。
そのほか、放射線は生活を豊かにするためにも利用されています。 このため、まずは放射線がどういうものなのか、その性質についてしっかりと理解することが重要です。
その上で、放射線がどんなことに使われていて、どんな影響があるのかを知ることで、私たち一人一人が、今後、放射線とどのように向き合っていくべきかを考えていくことが大切です。」

「平成23年3月11日には、地震と津波によって、東京電力の福島第一原子力発電所で事故が起こりました。この事故による放射線の影響を避けるため、その周辺に住む人たちは自分の家から避難しなければならなくなりました。
避難している人たちは、慣れない環境の中で生活をしなければならなくなりました。それにもかかわらず、避難した子供たちの中には、いわれのないいじめを受けるといった問題も起きてしまいました。
復興に向けた取組は着実に進んでいますが、私たちみんなで二度とこのようないじめが起こらないようにしていくことが大たい切せつです。」

読んだら分かるように前段では「放射線を受ける量をゼロにすることができないこと」「放射線は生活を豊かにするためにも利用されていること」などの「理解」が強調されています。
後段では「避難した子供たちの中には、いわれのないいじめを受けるといった問題がおきた」「このようないわれのないいじめが起こらないようにしていくこと」が強調されています。

● 『放射線副読本』に書かれていないこと

このページは『放射線副読本』の性質をよく表しています。その大きな特徴は「書かないこと」で大事なポイントをたくさんスル―していることです。
冒頭の一文では何よりも放射線の人体や生物に対する危険性がまったく書かれていません。これが大きな特徴です。
確かに放射線は生活を豊かにするためにも利用されているけれども、一方で戦争に利用されて原子爆弾が作られ、広島・長崎に投下されました。その後、たくさんの核実験が行われて地球上のすべての生命が被曝しました。このことが書かれていない。


原水爆が無視されている 守田講演用スライドより

後段では一番の問題は福島第一原子力発電所で事故が起こり、避難しなければならなくなったのは、恐ろしい放射線被曝を避けるためであったこと。そのような大変な状況に人々を強いたのは国や東京電力であったことが抜け落ちています。
二度と原発事故を起こさないこと、起こさせないこと、だからまた避難などしなくても良いようにすることが大事なのに、そこがスル―されて「二度とこのようないじめが起こらないようにしていくこと」に話がずらされてしまっています。
しかも「いじめ」は子どもたちの間で起こったことですから、一部の子どもたちがいじめをした「悪い子ども」として登場させられています。しかし一番悪いのは事故を起こした国と東電なのです。その責任が子どもに転じられています。

このように『副読本』は大事な事実を幾つもスル―することで「放射線被曝は思ったより怖くない」と、子どもたちと親をコントロールすることを目的としています。
実はこれ、アメリカの核のプロパガンダの模倣です。ニューメキシコの「核の博物館」での被爆した広島・長崎の展示を観てきて良く分かりました。
何がスル―されているのかというとなんと被爆者の姿なのです。原爆投下後の「広島・長崎」の写真に被爆者が一人もいないのです。被爆を示すものは唯一、焼け焦げた三輪車でした。これを見た被爆者の方がとてもショックを受けたそうです。


守田講演用スライドより

● 『放射線副読本』のテクニックの一例

もう少し具体的に書きましょう。はじめにに続く「放射線について知ろう」というページに「偶然から発見された放射線」という「コラム」があり、レントゲン博士の写真が載っています。
横には彼のお連れ合いの手のレントゲン写真が載っている。手の骸骨が指輪を嵌めている写真で、『副読本』だけでなく「放射線の歴史」などで良く使われるものです。
1895年にX線を発見した彼は1901年に第1回ノーベル物理学賞を受賞していますが、しかしこの写真を撮るとき、お連れ合いはかなりの高い値のX線を浴びているわけですね。身体に影響がないはずがない。

実はこのころは放射線の危険性がよく把握されていなかったのでした。そのため初期の放射線発見者たちは悲惨な末路を迎えています。
例えばX線装置を作って売りだして大儲けしようと飛びついたのが発明王エジソンでした。彼は1896年よりX線による「透視用暗箱(Flouroscope)」や「X線照明装置」の開発に取り組みました。
しかし本人自身が被曝により目を傷めるとともに、助手のクリアランス・ダリが実験のモデルなどで過剰にX線を浴びつつけたため火傷や潰瘍を発症。その後、潰瘍からガンを発症し両腕を切断したものの1904年39才で死亡しています。

さらに1896年にベクレルがウランから放射線が出ていることを発見。これに目をつけたマリー&ピエール・キューリー夫妻がポロニウムとラジウムという新たな放射性元素を発見しました。
3人は合同して研究を続け1903年に第2回ノーベル物理学賞を受賞しましたが、これらの実験過程で大量被曝。ベクレルは受賞の5年後に55歳で心疾患により死亡しています。
ピエール・キューリーは恐らくは放射線による脳障害のため1906年に馬車にひかれて死亡。マリーは生き残って1911年にノーベル化学賞も受賞しましたがうつ病、腎炎、骨折、白内障で失明に近い状態になり1934年に再生不良性貧血で66歳で死亡しています。
そのダリとマリーが放射線障害から指を切断した写真をご紹介します。被曝の危険性を強く物語るものですが、副読本はこうした点には一切触れていません。


守田講演用スライドより

● 『放射線副読本』の読み解きを進めよう!

さてこの先は22日に近江平安教会でお話しますのでぜひご参加下さい!
ともあれこの本には幾つもの大事なことがスル―されており、反対に丁寧にそこを読み解くことで放射性物質とな何のか、被曝とな何なのか、どうやって身を守ったら良いのかの知恵を得ることもできます。
このことを目的に、僕は近江八幡市と宇治市と日野市の副読本を受け取った子どもたちのお母さんたちと読み解き会を重ねて来ました。数日前にようやく最後のページまで来たので、もうすぐみなさんの前に成果物をお出しすることができます。

私たちの読み解きでは、放射線のことをまったく知らない人や、政府の言うことを素直に信じている人などが、どう問題に気が付いていくのかの過程を大事にしました。
というかその点を僕は3人の方たちから大きく学びました。僕だけでやるとどうしても批判が先行してどう間違っているかの「結論」だけが前に出てしまいがちなのですが、そうすると「知っている人」以外には読みにくいものにもなってしまう。
その点で私たちの読み時は、いろんな問題意識の人が入っていける読み物に仕上げることができたと自負しています。

しかし22日はこれを使わずに「とにかく何がどうおかしいのか要点をしっかりと知りたい!」という方のニーズを優先します!だからどんどん「結論」を言います!
「放射線副読本」を1ページずつ参照していきますので、ガッツリと勉強したい方にお勧めの会です。
その上で、私たちの出す読み解き本を、ぜひ地域のお母さん、お父さんたちとのお話会で使っていただけたらと思っています。まずは22日にぜひお越しください!

なおどれぐらいの方が私たちの読み解き本にご興味があるか知りたいとも思っています。ご興味がある方は以下からご連絡ください。
https://00m.in/d3Y0s

● 22日(火)野洲市近江平安教会にてお話します!

以下、集会案内を貼り付けます。

場所 日本基督教団近江平安教会(滋賀県野洲市小篠原) 講師 守田敏也(フリーライター) 演題 「放射線副読本なんかいらない」

主催 日本基督教団京都教区滋賀地区社会委員会 問合 とりい(09096288188)

野洲市でお会いしましょう!